村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました～異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり～

60.僕は大丈夫

　みんなが僕の周りに集まってきてくれてるのが分かる。
　大丈夫だって言いたいのに、やっぱりうまく声が出せないみたい。

「回復薬で応急手当はできるが、治療できる場所までどれくらいかかる？」
「小屋が唯一の休める場所ですので、カステロッシまで戻るしかありません」

　ラグお姉さんがあわてているのはめずらしいかもしれない。
　ルイーツさんも困っているみたいだ。

「あたしの魔力がもう少し回復すれば、もっと治せるはずなのに！」
「ルナのせいじゃない」

　みんなを悲しませたくないのにな。
　オルお兄さんが荷物の中から回復薬を出して飲ませてくれる。
　回復薬のおかげで、少し身体が楽になった。

「ぁ……しゃべれる、かな」
「フィロ！　必ず助けてやるから心配するな」
「いいからあたしたちに任せなさい！　そこのフェニックス！　フィロに何かあったらあんたをズタボロにしてやるんだからっ」

　ルナちゃんは目がうるうるしてるし、泣きそうだ。
　泣かないで欲しいから、いっしょうけんめい笑ってみる。
　
「フェニックスさんをせっかく止めたのに、やっつけたらダメだよ？　僕は大丈夫、だから」
「大丈夫じゃないでしょ！　話すのもやっとなのに……」
「ピィ、ピィー！」

　ポイも僕のほっぺにすりすりしながら心配してくれてる。
　なでてあげたいけど、腕はうまくあがらない。
　
「フェニックスさんが、分かってくれて良かった。僕たちはみんな仲良しなんだ……」

　もっとお話したかったけど、身体が熱くってぼんやりしてきた。
　目を開けていられない。
　自然と閉じてきちゃって、しょぼしょぼする。
　みんなが僕の名前を何度も呼んでくれてるけど、すごく眠い。

「ピィ……ピィィィー！」

　目をつぶったあとにポイの声が聞こえた。
　死なないでって、言ってくれてる。
　大丈夫だよ、眠いだけだから――

　僕はこのまま寝ちゃいそうだったんだけど、ほっぺにポツンと冷たくて優しい水が落ちてきた。
　一粒だったはずなのに、僕は優しい水に身体を包まれる感じがする。

　ふわふわして、気持ちいい。
　冷たいんだけどあったかくて、優しく包み込まれてるみたいだ。
　さっきまで熱かったはずなのに、身体がゆっくりと冷えてきた。

「え……」
「これは……どういうことだ？」

　さっきまでは眠かったんだけど、今度は気分がスッキリしちゃった。
　僕が目を開けると、みんながビックリした顔をして僕を見ていた。

「ええと……おはよう？」
「おはよう、じゃないわよ！　身体がピカピカしたと思ったらヤケドがキレイさっぱり治っちゃうなんて！」

　ルナちゃんにゆさゆさと身体をゆさぶられた。
　僕も何が起こったのか分かってないんだけど、ルイーツさんがハッとした顔をして僕とポイを見る。

「この目で奇跡きせきが見られるとは……！　間違いない、フェニックスの涙ですよ！　フェニックスの涙はどんな傷でもたちまちに癒していやしてしまう効果があると言います」
「フェニックスの涙？　そういえばさっきポイが泣いていたような気がするが……」

　ラグお姉さんがポイを見るとポイもピィっと鳴いて、そうだよって言ってる。
　ポイは僕のために泣いてくれたんだ。