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45.伝説のおはなし

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 王様は僕たちを見てから、横にいるスタンさんへ何か話しかけたみたい。
 すると、スタンさんが一枚の絵を持ってきて僕たちに見せてくれた。

「この絵は……」
「代々王家に伝えられている伝説でな。この中心に描かれているのが賢者様だ」

 見せてくれた絵の真ん中には空色の髪の長い男の人がいて、動物や魔物とかいろんな生き物たちが男の人の周りを囲んでる。
 男の人と仲良しな感じの絵なのかな?

「賢者様は種族関係なく意思疎通いしそつうできたと言われている。つまり、今のフィロと一緒だな」

 王様はそう言って僕を見る。
 僕は困ってしまって、ラグお姉さんとルナちゃんとオルお兄さんを順番に見る。
 三人とも僕を見て、確かにと言ってうなずいた。

「ここにいる私たちは全員種族が違うな。ドラゴンとキツネと熊だ。だが、全員フィロのことは好いている。我々だけじゃない。エルフも魔物も、フィロは皆の言葉が理解できると言っていたな」
「俺も人間は信用できないと思っていたが、フィロなら信用してもいいと思った」
「そうね。なんか放っておけないというか。不思議よねー」

 三人とも僕を見るから、恥ずかしくなってどこを見ていいのか分からなくなる。
 みんな僕を安心させるように、笑って見守ってくれているみたいだ。

「ええと……それって僕がその賢者様と一緒だっていうことですか?」
「そうですね。賢者様の血を受け継いでいらっしゃる可能性が高いです。フィロさんの生まれはお聞きした限り不明のようですが」

 スタンさんが言うように、僕のお父さんとお母さんが誰かも覚えていない。
 僕は生まれた時にグラム村の前で拾われているし、僕が大きくなるまで誰も村にも来なかった。
 捨てられていたって言われていたけど、本当は理由があって置き去りにされてしまったのかもしれないし。
 僕自身のことは、僕も分からない。

「フィロの両親に何があったのかは分からないが、フィロの能力は普通の人間が持ち得る能力ではないはずだからな。言葉が通じるだけではなく、フィロには魅力がある」
「そうね。異種族が自然と集まっちゃう魔法でもかかってるんじゃないかって思うくらいね」
「それには同意する。フィロの側にいたいと願う気持ちだ。しかもフィロから特別に声をかけてきたわけでもないはずだ」

 僕のことを好きでいてもらえるなら、僕もすごく嬉しい。
 だから、みんなが集まってきてくれるなら僕も今まで通りみんなと一緒に冒険したいな。

「だからフィロ、君の力を借りたいことがある。聞いてくれるだろうか」

 今度は王様からも頼みごとがあるみたい。
 僕にもお手伝いできることだったらいいんだけど……。
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