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40.馬車で移動中

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 カステロッシ城は、ノイオゾの街から馬車で五時間くらいかかるらしい。
 街の出口に待ち構えていた馬車に乗って、のんびり景色を見ながらおしゃべりする。

「馬車に乗るのは初めて!」
「私の背に乗ってもらう方が数倍早いが……馬車というものを楽しむ余裕も必要だしな」
「ラグの背中もごつごつしてそうだけど、馬車もおしりが痛いわ。ガタガタするのよね」

 僕たちは暫くおしゃべりを楽しんでいたんだけど、オルお兄さんは目をつぶったまま動かない。
 もしかして、眠っちゃったのかな?

「もしかして、オル。乗り物苦手とか?」

 ルナちゃんがオルお兄さんの顔をのぞきこむと、オルお兄さんは少しだけ目を開けてくれた。

「ああ。乗り物というヤツは酔う」
「ほう? 意外と可愛らしい面もあるのだな」

 ルナちゃんとラグお姉さんは楽しそうに笑っているけど、オルお兄さんの顔色はあんまりよくなさそうだ。
 大丈夫なのかなあ?

「オルお兄さん、大丈夫? 気持ち悪くなったら言ってね」
「……ああ。しばらく静かにしている」

 オルお兄さんはそう言ってから、また目をつぶっちゃった。
 乗り物が本当に苦手みたいだ。

「オルは放っておいて。ヒマだからトランプでもして遊ぶ?」
「馬車の中でか? ルナも楽しそうで何よりだな。付き合おう」

 ルナちゃんがいつの間に用意していたのか分からないけど、洋服のポケットからトランプを取り出した。
 ババ抜きをするって言うから、眠っているオルお兄さん以外のみんなで遊ぶことにした。

 +++

「よし! あがりだよ」
「またフィロなのー? 絶対ポイが手札教えてるでしょ?」
「ピッ」

 ポイはぷいっと横を向いて、しらんぷりをする。
 ルナちゃんはなんでか分からないけど、ビリばっかりだ。
 
 ポイは僕にこっそりババのことを教えてくれてるんだけど、ルナちゃんよく気づいたなぁ。
 ちょっとズルしちゃってるんだけど、ラグお姉さんも僕に手札を教えてくれてるからババが分かっちゃうんだよね。

 みんな僕に優しすぎると思う。

「もー! なんであたしばっかり! つまんなーい」
「むくれるな。ルナがやると言い始めたのだろう?」
「だってー……こんなに大変だとは思ってなかったんだもん」

 ルナちゃんがほっぺを膨らませながら、トランプを片づけていく。
 たくさん遊んでいたけど、まだ着きそうもないし……僕も少し寝ちゃおうかな。

「フィロも少し寝ておくか? あと三時間はかかるだろうから十分に眠れるぞ」
「そうだね、それじゃあ少し眠るね」

 ラグお姉さんが、僕の身体を寄りかからせてくれた。
 すると、ルナちゃんも僕の隣にきて座る。

「ラグ、フィロを囲んで一緒に寝ましょ」
「時間になっても起きなければ、きっとオルが起こしてくれるでしょ」

 ルナちゃんがあくびをすると、僕にもあくびが移る。
 目をつぶると、僕もすぐに眠くなってきちゃったからこのまま寝ちゃうことにした。
 
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