28 / 75
28.奥にいたのは黒くて大きい熊さん!
しおりを挟む
ポイが元気で本当に良かった!
なでなですると、ポイも嬉しそうに僕にすり寄ってくれる。
「待ってて。みんなのことも助けてあげるから」
「がう!」
「きゅうー」
他の生き物たちも、みんな大人しくていい子たちばっかりだ。
ラグお姉さんが大きめのカギを剣でこわして、ルナちゃんは開けるのが難しそうなカギを火の魔法で溶かして開けていく。
僕はナイフでたたいて、小さめのカギをこわす。
「全員出たらかたまっているのだぞ。私たちで奥の様子を見てくるからな」
「そうね。バラバラより一緒に出ちゃえばきっとうまくいくわね」
「うん! みんな、もう少し待っててね」
僕たちが話しかけると、出てきた生き物たちは部屋のすみっこに固まってくれる。
魔物たちも、森に帰りたいから今ここであばれたりしないって約束してくれたから大丈夫そうだ。
「さて、では右奥に行くとしよう」
「なんか嫌な感じがするのよね。さっきからしっぽがぶるぶるしてるもの」
建物の前で変身は解いていたから、ルナちゃんもフードの下に耳としっぽがある。
嫌なことがあるとしっぽで分かるのかな?
奥の方から聞こえる声は、すごく苦しそうで痛そうな声だ。
「人間がエサをやると言っていたな。エサやりが上手くいっていないのかもしれない。とにかく行ってみよう」
声がとぎれとぎれだから、何を言っているのかよく分からない。
右の奥へと進んでいくと、一番大きな檻の中に黒くて大きな熊さんがいた。
「おい! 暴れるなって!」
「仕方ない、これで大人しくさせよう」
黒い服の人は、手に持っている四角いものについているボタンのようなものを押す。
すると、バチバチっという音と一緒にカミナリみたいなものが光る。
「グォォォっ!」
「わあっ! おい、本当に大丈夫か?」
「そんなこと言ったって、言うこと聞かないコイツが悪いだろ。もう少し力を上げて……」
男の人がカチカチとボタンをひねると、バチバチが強くなる。
熊さんが痛がってもっと暴れはじめた。
「あれはカミナリの魔法か? 痛みで言うことをきかせるつもりか!」
「見てる場合じゃないわね! あの大きなのに暴れられたら、ここで生き埋めになっちゃうわ!」
ラグお姉さんとルナちゃんが、後ろから黒い服の人たちの首の辺りをたたく。
黒い服の人たちは、へにゃっと地面に倒れてしまった。
バチバチは見えなくなったけど、ガシャガシャと聞こえたあとにバァーンとすごい音がして檻がこわれる。
「遅かったか!」
「ちょっと! 落ち着いてくれないと困るんだけど!」
「ウゥゥゥっ!」
熊さんは苦しい苦しいって言いながら、腕をぶんぶん振り回す。
まわりにあった物が吹き飛んで、大きな音がする。
「建物が揺れれば、上の人間たちも騒ぎ始めるぞ」
「捕まってた子たちも逃がさなくっちゃいけないし、どうすんのよ?」
ラグお姉さんとルナちゃんも熊さんを止めようとするけど、熊さんがあばれるからうまく近づけないみたい。
怖いけど、僕が熊さんと少し話してみるしかない。
さっきのカミナリの前から苦しいって言ってたから、きっと伝えたいことがあるんだ。
「僕が熊さんとお話してみる」
「フィロ! 危ないぞ!」
「でも、ラグのことも止めたフィロならいけるかもしれないわ。危なくないように助けてあげるから、やってみなさい!」
ルナちゃんがつえを振ると、植物のつるが飛び出てくる。
熊さんの片方の腕を植物のつるでぐるぐる巻きにして、なんとか動きを止めてくれた。
ラグお姉さんも熊さんの足に飛びついて、グッと力をこめて足を止めてくれる。
「フィロ、今のうちに!」
「うん!」
僕は熊さんに近づいて、いっぱい息を吸った。
なでなですると、ポイも嬉しそうに僕にすり寄ってくれる。
「待ってて。みんなのことも助けてあげるから」
「がう!」
「きゅうー」
他の生き物たちも、みんな大人しくていい子たちばっかりだ。
ラグお姉さんが大きめのカギを剣でこわして、ルナちゃんは開けるのが難しそうなカギを火の魔法で溶かして開けていく。
僕はナイフでたたいて、小さめのカギをこわす。
「全員出たらかたまっているのだぞ。私たちで奥の様子を見てくるからな」
「そうね。バラバラより一緒に出ちゃえばきっとうまくいくわね」
「うん! みんな、もう少し待っててね」
僕たちが話しかけると、出てきた生き物たちは部屋のすみっこに固まってくれる。
魔物たちも、森に帰りたいから今ここであばれたりしないって約束してくれたから大丈夫そうだ。
「さて、では右奥に行くとしよう」
「なんか嫌な感じがするのよね。さっきからしっぽがぶるぶるしてるもの」
建物の前で変身は解いていたから、ルナちゃんもフードの下に耳としっぽがある。
嫌なことがあるとしっぽで分かるのかな?
奥の方から聞こえる声は、すごく苦しそうで痛そうな声だ。
「人間がエサをやると言っていたな。エサやりが上手くいっていないのかもしれない。とにかく行ってみよう」
声がとぎれとぎれだから、何を言っているのかよく分からない。
右の奥へと進んでいくと、一番大きな檻の中に黒くて大きな熊さんがいた。
「おい! 暴れるなって!」
「仕方ない、これで大人しくさせよう」
黒い服の人は、手に持っている四角いものについているボタンのようなものを押す。
すると、バチバチっという音と一緒にカミナリみたいなものが光る。
「グォォォっ!」
「わあっ! おい、本当に大丈夫か?」
「そんなこと言ったって、言うこと聞かないコイツが悪いだろ。もう少し力を上げて……」
男の人がカチカチとボタンをひねると、バチバチが強くなる。
熊さんが痛がってもっと暴れはじめた。
「あれはカミナリの魔法か? 痛みで言うことをきかせるつもりか!」
「見てる場合じゃないわね! あの大きなのに暴れられたら、ここで生き埋めになっちゃうわ!」
ラグお姉さんとルナちゃんが、後ろから黒い服の人たちの首の辺りをたたく。
黒い服の人たちは、へにゃっと地面に倒れてしまった。
バチバチは見えなくなったけど、ガシャガシャと聞こえたあとにバァーンとすごい音がして檻がこわれる。
「遅かったか!」
「ちょっと! 落ち着いてくれないと困るんだけど!」
「ウゥゥゥっ!」
熊さんは苦しい苦しいって言いながら、腕をぶんぶん振り回す。
まわりにあった物が吹き飛んで、大きな音がする。
「建物が揺れれば、上の人間たちも騒ぎ始めるぞ」
「捕まってた子たちも逃がさなくっちゃいけないし、どうすんのよ?」
ラグお姉さんとルナちゃんも熊さんを止めようとするけど、熊さんがあばれるからうまく近づけないみたい。
怖いけど、僕が熊さんと少し話してみるしかない。
さっきのカミナリの前から苦しいって言ってたから、きっと伝えたいことがあるんだ。
「僕が熊さんとお話してみる」
「フィロ! 危ないぞ!」
「でも、ラグのことも止めたフィロならいけるかもしれないわ。危なくないように助けてあげるから、やってみなさい!」
ルナちゃんがつえを振ると、植物のつるが飛び出てくる。
熊さんの片方の腕を植物のつるでぐるぐる巻きにして、なんとか動きを止めてくれた。
ラグお姉さんも熊さんの足に飛びついて、グッと力をこめて足を止めてくれる。
「フィロ、今のうちに!」
「うん!」
僕は熊さんに近づいて、いっぱい息を吸った。
27
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる