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第八章 僕の素顔は彼しか知らない
87.豪華な食事で腹ごしらえ
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リューが飛ばしたので、行きと同じ時間くらいで隠れ家へ到着した。
魔導車を止めて鍵をかけ、座席の下の荷物を分担して持って家へと入る。
「支度は僕がしておくけれど、リューは先にシャワーでも浴びる?」
「そうだな。装備の点検をし終えたら、入る。その後、料理を手伝うからアルヴァーノも先に済ませるといい」
「そう? ありがとう。買ったものは仕舞っておく」
リューもコートを脱ぎ、装備を外してテーブルへと並べていく。
訓練でも汗をかいてなかったようだけれど、硝煙の香りは残るだろうし寛ぐ前にスッキリした方がいいだろう。
リューの装備は多いけれど、今日はあまり使っていなかったから手入れするものも少ないだろう。
僕が片付けをしている間にあっという間に終わらせて、シャワーを浴びに行ってしまった。
+++
「リュー、できたから座って」
「ああ」
二人ともシャワーを済ませて、簡単だけれどちょっとしたごちそうをテーブルの上へと並べていく。
鶏肉を焼いて香ばしく皮を焦がしてからジューシーなソースをかけたものに、野菜をたっぷり入れたさっぱりとしたスープ。
ひき肉に味付けをして揉み込み、粉で作った白い皮でひき肉を包んで焼いたもの。
後は野菜を細長く切って食べやすい大きさにしてグラスへ差しておいた。
後は適当に切ったパンを並べておけば、立派な食事の完成だ。
「飲み物は葡萄酒で構わない? 爽やかな水も用意しておいたからどちらでも構わないが」
「最初は水でいい」
「了解」
リューにも下準備を手伝ってもらったおかげで、思っていたより早く仕上げることができた。
火を使わないと本格的なものは作れないから、ある程度の気合が必要になってくる。
嫌いではないけれど、リューのように食にこだわりのない人だと待ち時間も退屈になってしまうだろう。
「じゃあ、食べよう。いただきます」
「……いただきます」
挨拶をしてから、順番に手を伸ばしていく。
切ったままの野菜は、白いとろみのあるソースか豆を熟成して作ったと言われている茶色の調味料を付けて食べることを勧めてみた。
どちらもあまり出回っていないものだが、たまたま入荷していたので入手していた。
「これはまた食べたことのない味だ。酸っぱさもあるが野菜との相性がいいらしい」
「白い方も茶色の方も、この辺りでは出回っていない輸入調味料だ。前にリューが美味しいといっていたものと同じ土地で作られたものらしい」
「そうか。俺は普段保存食ばかりだからよく分からないが、濃すぎず丁度良い塩梅なのだな」
リューがポリポリと野菜をかじっている姿はどこか可愛らしくて見ているだけで楽しくなる。
僕はスープを飲みながら、自分で味付けをした肉を食べてみる。
カリっという歯ざわりと共に、じゅわりと肉汁が出て来て少し甘いソースとも相性が良い。
我ながらうまくできたようで安心する。
「この白いものは変な形だが……これがひき肉を包んで焼いたものか?」
「これはまた別の地方の料理。パリッとした皮って呼ばれてる白いものを、この黒いソースを付けて食べる」
リューは僕に言われたように食べると、何度か咀嚼したあとに旨いと呟いてくれた。
顔には出さないけれど、黙々と食べ進めてくれているからどうやら口にあったようだ。
「良かった。うまくできるか心配だったけれど、大丈夫みたいだ」
「料理というのは手間がかかるが、保存食を食べるだけでは感じない幸福感のようなものを感じる」
「やっぱり温かいものを食べられるのは、僕たちにとってもいいことなのだろうな。リューが幸福感まで感じてくれるだなんて最高の誉め言葉だ」
ニッコリと笑んで見せると、リューも頷いてまた手を伸ばして別の料理を食べ始めた。
魔導車を止めて鍵をかけ、座席の下の荷物を分担して持って家へと入る。
「支度は僕がしておくけれど、リューは先にシャワーでも浴びる?」
「そうだな。装備の点検をし終えたら、入る。その後、料理を手伝うからアルヴァーノも先に済ませるといい」
「そう? ありがとう。買ったものは仕舞っておく」
リューもコートを脱ぎ、装備を外してテーブルへと並べていく。
訓練でも汗をかいてなかったようだけれど、硝煙の香りは残るだろうし寛ぐ前にスッキリした方がいいだろう。
リューの装備は多いけれど、今日はあまり使っていなかったから手入れするものも少ないだろう。
僕が片付けをしている間にあっという間に終わらせて、シャワーを浴びに行ってしまった。
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「リュー、できたから座って」
「ああ」
二人ともシャワーを済ませて、簡単だけれどちょっとしたごちそうをテーブルの上へと並べていく。
鶏肉を焼いて香ばしく皮を焦がしてからジューシーなソースをかけたものに、野菜をたっぷり入れたさっぱりとしたスープ。
ひき肉に味付けをして揉み込み、粉で作った白い皮でひき肉を包んで焼いたもの。
後は野菜を細長く切って食べやすい大きさにしてグラスへ差しておいた。
後は適当に切ったパンを並べておけば、立派な食事の完成だ。
「飲み物は葡萄酒で構わない? 爽やかな水も用意しておいたからどちらでも構わないが」
「最初は水でいい」
「了解」
リューにも下準備を手伝ってもらったおかげで、思っていたより早く仕上げることができた。
火を使わないと本格的なものは作れないから、ある程度の気合が必要になってくる。
嫌いではないけれど、リューのように食にこだわりのない人だと待ち時間も退屈になってしまうだろう。
「じゃあ、食べよう。いただきます」
「……いただきます」
挨拶をしてから、順番に手を伸ばしていく。
切ったままの野菜は、白いとろみのあるソースか豆を熟成して作ったと言われている茶色の調味料を付けて食べることを勧めてみた。
どちらもあまり出回っていないものだが、たまたま入荷していたので入手していた。
「これはまた食べたことのない味だ。酸っぱさもあるが野菜との相性がいいらしい」
「白い方も茶色の方も、この辺りでは出回っていない輸入調味料だ。前にリューが美味しいといっていたものと同じ土地で作られたものらしい」
「そうか。俺は普段保存食ばかりだからよく分からないが、濃すぎず丁度良い塩梅なのだな」
リューがポリポリと野菜をかじっている姿はどこか可愛らしくて見ているだけで楽しくなる。
僕はスープを飲みながら、自分で味付けをした肉を食べてみる。
カリっという歯ざわりと共に、じゅわりと肉汁が出て来て少し甘いソースとも相性が良い。
我ながらうまくできたようで安心する。
「この白いものは変な形だが……これがひき肉を包んで焼いたものか?」
「これはまた別の地方の料理。パリッとした皮って呼ばれてる白いものを、この黒いソースを付けて食べる」
リューは僕に言われたように食べると、何度か咀嚼したあとに旨いと呟いてくれた。
顔には出さないけれど、黙々と食べ進めてくれているからどうやら口にあったようだ。
「良かった。うまくできるか心配だったけれど、大丈夫みたいだ」
「料理というのは手間がかかるが、保存食を食べるだけでは感じない幸福感のようなものを感じる」
「やっぱり温かいものを食べられるのは、僕たちにとってもいいことなのだろうな。リューが幸福感まで感じてくれるだなんて最高の誉め言葉だ」
ニッコリと笑んで見せると、リューも頷いてまた手を伸ばして別の料理を食べ始めた。
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