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第七章 心を焦がすモノ
76.軽薄な言葉の裏には
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僕の腕の中で大人しくしているリューが不思議だ。
しかも、諦めの気持ちではなく自らの意思で僕を側に置いてくれている。
僕自身今まで気づいていなかったけれど、人に求められるというのはこんなにも心が温かくなるものなのか。
不思議な気持ちに戸惑っていると、リューの方が先に声をかけてくる。
「お前が黙り込むのは珍しいな。いつもくだらないことをペラペラと喋っている気がするが」
「僕のことを軽薄だと言いたいのか? 間違いないけれど、改めて言われると言い返したくなるな。僕だって何も感じていない訳じゃない」
「そうだろうな。軽薄と言えども考えたい事柄はあるに違いない。お前が疲れているだろうからベッドで休めと言ったまでだ。お前がどう捉えようと構わない」
リューにしては良く喋っている気がして、クスクスと笑ってしまった。
リューだって自身の変化に戸惑っているくせに、リューなりに僕へ言葉を伝えようとしているのだろう。
僕が笑うのを見てため息を吐き出すと、リューはそのまま目を瞑ってしまった。
「もう寝るのか。確かに眠ろうとしていたのは確かだけど、寝る前にリューの甘い話をしてくれるんじゃなかったのか?」
「軽薄な言葉で誤魔化すのはお前の悪い癖だ、アリィ。俺もお前のことを知ろうとも思わなかったが、今は少し興味が湧いた。それはお前から受けた影響の結果だ」
「それは嬉しいな。でも、快楽に溺れて生きてきただけ。知っての通りのろくでなしだ。リューのおかげで少しだけ一途な気持ちって言うのも分かる気になってるだけの愚か者だよ」
自嘲を吐き出しても、リューには通じない。
しかも今言うべきような話じゃないというのに、僕は何がしたいのだろうか?
向けられる真っ直ぐな感情に耐えられないから、自分の気持ちも蓋をして誤魔化そうとしている。
だけれど、閉じられていたはずの灰の瞳は真っ直ぐ僕を射貫いてくる。
あやふやにしたいと思っている僕を逃してくれない。
「それは俺が愚か者に心を許しているということか? ならば、俺はお前よりも更にろくでなしの愚か者だな。全て否定はしないが、お前の言葉は全て逃げに聞こえる」
「ハハ。痛いところを突いてくるのもリューらしい。リューは前を向いて歩き始めてるっていうのに、僕はずっと後ろ向きのままだ。それでもリューの隣にいたいだなんて、図々しいにも程があるよな」
そうだ。リューの変化に喜んでいる癖に、自分は何一つ変わろうともしない。
変わることを恐れている臆病な自分に反吐が出る。
だからこそ、快楽主義者を名乗ってこれまで散々自堕落な日々を送ってきた訳だけれど。
今までは空虚な気持ちも含めて、何も感じなかった。
(今は……自分の気持ちを全て認めるのを怖がっている。僕に気持ちを曝け出そうしているリューと違って、僕は――)
考えていても虚しくなってきたところを察してくれたのか、リューに無言で抱きしめられた。
人肌の温もりは興奮させるだけじゃなく、安堵をもたらすというのがよく分かる。
「俺に何ができるのか分からないが、恩は必ず返す。お前が窮地に陥った時、俺は全力でお前のことを助けると誓う」
「リューが言うと説得力があるな。バディとして、嬉しいよ」
敢えて『バディとして』と強調してしまったけれど、リューはそうかと一言だけ返すのみだ。
リューはどれくらい僕のことを知ろうとしてくれているのだろうか?
例えそれが僕の望む関係値でなかったとしても、リューの言葉は嬉しかった。
しかも、諦めの気持ちではなく自らの意思で僕を側に置いてくれている。
僕自身今まで気づいていなかったけれど、人に求められるというのはこんなにも心が温かくなるものなのか。
不思議な気持ちに戸惑っていると、リューの方が先に声をかけてくる。
「お前が黙り込むのは珍しいな。いつもくだらないことをペラペラと喋っている気がするが」
「僕のことを軽薄だと言いたいのか? 間違いないけれど、改めて言われると言い返したくなるな。僕だって何も感じていない訳じゃない」
「そうだろうな。軽薄と言えども考えたい事柄はあるに違いない。お前が疲れているだろうからベッドで休めと言ったまでだ。お前がどう捉えようと構わない」
リューにしては良く喋っている気がして、クスクスと笑ってしまった。
リューだって自身の変化に戸惑っているくせに、リューなりに僕へ言葉を伝えようとしているのだろう。
僕が笑うのを見てため息を吐き出すと、リューはそのまま目を瞑ってしまった。
「もう寝るのか。確かに眠ろうとしていたのは確かだけど、寝る前にリューの甘い話をしてくれるんじゃなかったのか?」
「軽薄な言葉で誤魔化すのはお前の悪い癖だ、アリィ。俺もお前のことを知ろうとも思わなかったが、今は少し興味が湧いた。それはお前から受けた影響の結果だ」
「それは嬉しいな。でも、快楽に溺れて生きてきただけ。知っての通りのろくでなしだ。リューのおかげで少しだけ一途な気持ちって言うのも分かる気になってるだけの愚か者だよ」
自嘲を吐き出しても、リューには通じない。
しかも今言うべきような話じゃないというのに、僕は何がしたいのだろうか?
向けられる真っ直ぐな感情に耐えられないから、自分の気持ちも蓋をして誤魔化そうとしている。
だけれど、閉じられていたはずの灰の瞳は真っ直ぐ僕を射貫いてくる。
あやふやにしたいと思っている僕を逃してくれない。
「それは俺が愚か者に心を許しているということか? ならば、俺はお前よりも更にろくでなしの愚か者だな。全て否定はしないが、お前の言葉は全て逃げに聞こえる」
「ハハ。痛いところを突いてくるのもリューらしい。リューは前を向いて歩き始めてるっていうのに、僕はずっと後ろ向きのままだ。それでもリューの隣にいたいだなんて、図々しいにも程があるよな」
そうだ。リューの変化に喜んでいる癖に、自分は何一つ変わろうともしない。
変わることを恐れている臆病な自分に反吐が出る。
だからこそ、快楽主義者を名乗ってこれまで散々自堕落な日々を送ってきた訳だけれど。
今までは空虚な気持ちも含めて、何も感じなかった。
(今は……自分の気持ちを全て認めるのを怖がっている。僕に気持ちを曝け出そうしているリューと違って、僕は――)
考えていても虚しくなってきたところを察してくれたのか、リューに無言で抱きしめられた。
人肌の温もりは興奮させるだけじゃなく、安堵をもたらすというのがよく分かる。
「俺に何ができるのか分からないが、恩は必ず返す。お前が窮地に陥った時、俺は全力でお前のことを助けると誓う」
「リューが言うと説得力があるな。バディとして、嬉しいよ」
敢えて『バディとして』と強調してしまったけれど、リューはそうかと一言だけ返すのみだ。
リューはどれくらい僕のことを知ろうとしてくれているのだろうか?
例えそれが僕の望む関係値でなかったとしても、リューの言葉は嬉しかった。
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