57 / 94
第六章 二人の距離感
55.静かな室内
しおりを挟む
「午前の鍛錬は終わった。午後は少し休む」
「うん? それはいいと思うが……」
僕は頭痛薬を飲み終えてリューを見上げる。
リューはソファーで読むのかと思っていたが、違うらしい。
「飲み終わったのなら、行くぞ」
「行くって……」
「休むのだろう? 一緒に行く」
「え? あぁ……」
どうやらベッドルームで、しかも一緒に寝ている方で読むということらしい。
それって、心配してくれているからなのだろうか。
(急にどうしたんだ? いつもなら別々に過ごしていると思うのだけれど、そんなに体調悪そうに見えるのか?)
僕としてはリューが側にいてくれるのはありがたいことだけれど。
顔に出ていたのか、リューが僕に視線を投げる。
「この辺りで粗相されても困る。側にいれば少しは察することができる」
「粗相って……そこまで具合は悪くないが。僕としては一緒にいてくれたら嬉しいけれど」
僕が言うとリューの動きが一瞬止まり、何かを考え込んでいる。
そして、改めて僕と目線を合わせてくる。
「嬉しいのか?」
「うん? そりゃあ、リューを見ているのは飽きないし。好きだからね」
「……そうか」
僕を観察するように見てから呟くと、リューは僕を立ち上がらせて補助するように側にいてくれる。
ありがたく甘えてベッドルームへと戻ることにする。
+++
僕がベッドへと横になると、リューもベッドサイドに本を置く。
隣に腰掛けてベッドの背に寄りかかると僕の顔を覗き込んできた。
「リュー……? 本当にどうしたの?」
「風呂にも入ったし、休憩しているだけだ」
「そうか。じゃあ僕は少し休ませてもらう。お腹も空きそうだが、少し億劫だし」
「あぁ」
僕にだけ毛布をかけると、自分はタオルをベッドサイドテーブルへと置く代わりに本を一冊手に取った。
武器の本のようだが、種類か使用方法か何かの本だろう。
「リュー……それは?」
「お前が興味がなさそうな本だ」
「バッサリ言うね……まぁいいか」
僕は目を閉じた。
静寂が部屋を包む頃に、意識は静かに沈んでいく。
+++
どれくらい時間が経ったのか分からないが、眠ったおかげで頭痛もだいぶ治まった。
隣を見るとリューはまだ隣にいて本を読んでいた。
僕の気配に気づいて視線を向けてくる。
「ずっといたのか」
「まだ本を読み終えていない」
「そうか……」
そうは言ったが、リューが持っているのは先程と変わらない題の本だ。
きっと全ての本を読んだとしてもこんなに時間がかかることはないはずだ。
(ならどうして? 眠る訳でもなく、ここにいるのだろう?)
僕にはよくわからなかったが、リューは本を置くと僕の額に手を当ててきた。
「熱は上がっていない」
「ただの二日酔いだろうし。気怠いくらいだ。頭痛も治まったから大丈夫だ」
「それならいい」
リューは額から手を離し、僕の隣に寝転んだ。
今度こそ眠るつもりなのだろうか?
「一日くらい何も食べなくても死にはしないだろうが、腹が空いているなら何か探してくる」
言っていることと、この体勢が合わないのでおかしくなってしまった。
起き上がるくらいは何でもないのだろうが、寝転んでから聞くことではない気がして声に出して笑う。
「ハハ……作ると言わないところがリューらしい。構わないから、このまま隣にいて欲しい。いてくれるだけでいいから」
甘えるように言ってみる。
どうせ嫌そうな顔をされるかと思ったが、リューは表情を変えずに俺を見ている。
「……嫌がらないのか?」
「別に……構わない」
普段よりキレがないのは気のせいだろうか? 心なしか視線が戸惑っている気がする。
(何? 僕がそんなに心配なのか? 熱もないと確認したのに……)
僕が不思議そうな顔をしていると、リューは観察するように僕をじっと見つめてきた。
「うん? それはいいと思うが……」
僕は頭痛薬を飲み終えてリューを見上げる。
リューはソファーで読むのかと思っていたが、違うらしい。
「飲み終わったのなら、行くぞ」
「行くって……」
「休むのだろう? 一緒に行く」
「え? あぁ……」
どうやらベッドルームで、しかも一緒に寝ている方で読むということらしい。
それって、心配してくれているからなのだろうか。
(急にどうしたんだ? いつもなら別々に過ごしていると思うのだけれど、そんなに体調悪そうに見えるのか?)
僕としてはリューが側にいてくれるのはありがたいことだけれど。
顔に出ていたのか、リューが僕に視線を投げる。
「この辺りで粗相されても困る。側にいれば少しは察することができる」
「粗相って……そこまで具合は悪くないが。僕としては一緒にいてくれたら嬉しいけれど」
僕が言うとリューの動きが一瞬止まり、何かを考え込んでいる。
そして、改めて僕と目線を合わせてくる。
「嬉しいのか?」
「うん? そりゃあ、リューを見ているのは飽きないし。好きだからね」
「……そうか」
僕を観察するように見てから呟くと、リューは僕を立ち上がらせて補助するように側にいてくれる。
ありがたく甘えてベッドルームへと戻ることにする。
+++
僕がベッドへと横になると、リューもベッドサイドに本を置く。
隣に腰掛けてベッドの背に寄りかかると僕の顔を覗き込んできた。
「リュー……? 本当にどうしたの?」
「風呂にも入ったし、休憩しているだけだ」
「そうか。じゃあ僕は少し休ませてもらう。お腹も空きそうだが、少し億劫だし」
「あぁ」
僕にだけ毛布をかけると、自分はタオルをベッドサイドテーブルへと置く代わりに本を一冊手に取った。
武器の本のようだが、種類か使用方法か何かの本だろう。
「リュー……それは?」
「お前が興味がなさそうな本だ」
「バッサリ言うね……まぁいいか」
僕は目を閉じた。
静寂が部屋を包む頃に、意識は静かに沈んでいく。
+++
どれくらい時間が経ったのか分からないが、眠ったおかげで頭痛もだいぶ治まった。
隣を見るとリューはまだ隣にいて本を読んでいた。
僕の気配に気づいて視線を向けてくる。
「ずっといたのか」
「まだ本を読み終えていない」
「そうか……」
そうは言ったが、リューが持っているのは先程と変わらない題の本だ。
きっと全ての本を読んだとしてもこんなに時間がかかることはないはずだ。
(ならどうして? 眠る訳でもなく、ここにいるのだろう?)
僕にはよくわからなかったが、リューは本を置くと僕の額に手を当ててきた。
「熱は上がっていない」
「ただの二日酔いだろうし。気怠いくらいだ。頭痛も治まったから大丈夫だ」
「それならいい」
リューは額から手を離し、僕の隣に寝転んだ。
今度こそ眠るつもりなのだろうか?
「一日くらい何も食べなくても死にはしないだろうが、腹が空いているなら何か探してくる」
言っていることと、この体勢が合わないのでおかしくなってしまった。
起き上がるくらいは何でもないのだろうが、寝転んでから聞くことではない気がして声に出して笑う。
「ハハ……作ると言わないところがリューらしい。構わないから、このまま隣にいて欲しい。いてくれるだけでいいから」
甘えるように言ってみる。
どうせ嫌そうな顔をされるかと思ったが、リューは表情を変えずに俺を見ている。
「……嫌がらないのか?」
「別に……構わない」
普段よりキレがないのは気のせいだろうか? 心なしか視線が戸惑っている気がする。
(何? 僕がそんなに心配なのか? 熱もないと確認したのに……)
僕が不思議そうな顔をしていると、リューは観察するように僕をじっと見つめてきた。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる