月下と陽光の魔法使い

めーぷる

文字の大きさ
上 下
5 / 9

道は照らされる

しおりを挟む
「僕はカッコイイと思いますけど……って。シルヴァさん、あの……また僕が失礼なことを?」

 サニーディアが慌てているので、どうしたのかと首を傾げた。
 すると、サニーディアがおずおずと俺の顔へと手を伸ばしてくる。
 指先で目元を拭われて、初めて気付く。
 情けないことに、俺は涙を流していたらしい。

「はは……悪いな。いい歳した男に急に泣かれても困るよな」
「そ、そんなことはないんですけどっ! どうしよう……ええと、僕はあっちを向いてますから。その……泣きたいときはたくさん泣いてください」
「そうか、じゃあ甘えさせてもらうか」

 サニーディアが本当に横を向きながら酒を飲む姿を見ながら、俺も飲みながら静かに泣いた。
 張り詰めた気持ちはゆっくりと溶かされていくようで、少し涙を流したおかげかだいぶ心が穏やかになった。
 
「もう大丈夫だ」
「え、もういいんですか?」
「さすがに酒場で声をあげて泣くわけにもいかないだろ。気が済んだからもういいんだ」
「そうですか……悲しい時は年齢なんて関係ありません。僕だって、母が亡くなった時は三日三晩泣き続けました」

 サニーディアが照れたように笑う顔が眩しくて、俺もつられたように久しぶりに笑った。
 この感覚は……二度と味わいたいと思いたくなかったというのに。
 俺はどうやら、サニーディアに惹かれているらしい。

『本当にシルヴァは……頭の回転が鈍い。だから、感情もついてこないんだ。もっと単純に、素直になればいい』
『そういうミューンは口ばかりだろう。いつも俺を動かしてばかりで……感情なんて二の次だ。いちいち感傷に浸っている場合じゃない。ああいうお嬢さんはお前が説得しろよ』
『説得するのと、人を動かすのはまた違う。俺がきっかけを作り、お前は行動する。それが一番いい。さすれば、感情も自ずとついてくる』
『それは表立って動きたくないだけだ。だが、俺は戦略を立てるより身体を動かす方が性に合っている。それも事実だ。分かったよ。俺が声をかけてくる』
 
 ミューンの言葉を自然と思い出す。
 声は穏やかでも、常に物事を見透かしているように口達者で腹が立ったものだが……ミューンは冷静でいつも正しかった。

『だからお前はうじうじと考えるな。迷わず動け。お前の道は必ず照らされるのだから』
『そうだな、相棒。俺は照らされた道を突き進む。それでいいよな。って、また適当なことを言って……全く仕方のないヤツだな』
 
 道は照らされる――
 ミューンから、迷わず生きろと言われているような……そんな気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編

日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

【BL】記憶のカケラ

樺純
BL
あらすじ とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。 そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。 キイチが忘れてしまった記憶とは? タカラの抱える過去の傷痕とは? 散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。 キイチ(男) 中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。 タカラ(男) 過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。 ノイル(男) キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。 ミズキ(男) 幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。 ユウリ(女) 幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。 ヒノハ(女) 幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。 リヒト(男) 幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。 謎の男性 街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

処理中です...