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第六章 三人の新しい関係

57.熱く秘めていたげんちゃん

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 げんちゃんは呆然としている俺の手を取ると、手の甲にキスを落とした。
 俺を見つめる目線は優しいけど、とっきーと同じで熱を感じるものだ。

蒼樹あおい、俺も蒼樹のことがずっと好きだった。優しくて明るい蒼樹の側にいると、心が癒されるし幸せな気持ちになる。だから、他の誰にも渡したくない。勿論、鷺羽ときはにも」
「げんちゃん……」
「だけど、鷺羽も俺と同じ想いだと知ってから二人で抜け駆けをするのはナシにしようと約束した。だから、蒼樹に想いを伝えるときは鷺羽にも伝えることにしていた」

 いつも多くを語らないげんちゃんが、ここまで俺のことを想っていてくれただなんて。
 とっきーが真剣に想っていてくれたことにも驚いたのに、二人とも俺のことを好きだって言ってくれてるんだよな。

 今、物凄く混乱してるんだけど……これって幼なじみ以上の関係を望まれているってこと、だよな。

「蒼樹、大丈夫か?」
「大丈夫。ただ、混乱してる。その……二人とも俺に対して友人以上の気持ちを持ってくれてるってことで、あってる?」

 俺がじっと見上げると二人とも静かに頷いた。
 じゃあ、好きっていう意味は……俺のことを恋人にしたいってことだよな。
 二人とも女の子が好きだって思ってたから、まさか俺なのって頭の中ぐるぐるしてるけど……。

「ごめんな。蒼樹にはゆっくりと時間をかけて話した方がいいって思ってたんだけどさ。あの北條って人も蒼樹のこと気に入ってたみたいだし、もう耐えられなかった」
「それは俺も同じだ。蒼樹を取られたくない気持ちは鷺羽と変わらない。蒼樹、困らせてごめん」

 二人とも申し訳なさそうな顔をして、俺の反応を待ってくれてる。
 だけど、俺はどうしたらいいんだろう?

「それは俺が鈍いせいだから二人は悪くないんだけど……ごめん。俺、今なんて言えばいいのか……言葉が出てこない」

 二人のことは俺だって好きだけど、それが二人と同じ気持ちなのかどうかは自信がない。
 というか、考えたこともなかった。
 
「……だよな。蒼樹は俺たちのことを幼なじみだと思って接してた訳だし。急に告白されても、だよなー」
「ああ。だから、今すぐ返事はしなくてもいい。俺は蒼樹の気持ちが一番だから、蒼樹の気持ちを尊重するつもりだ」
「とっきー……げんちゃん……」

 二人とも笑ってるけど、俺がなんていうか不安なんだろうな。
 いつ伝えようかって迷ってたはずだし、俺が二人の気持ちに全く気付いてなかったからずっとやきもきしてたんだろうし。

「二人とも、伝えてくれてありがとう。俺、ちゃんと考えるから。少しだけ待ってもらってもいいかな?」
「ああ。でも、こんなこと言われてとっきー無理ーってなったら……ショックだけどそれも覚悟してるから悔いはない!」
「それはそうだな。蒼樹が俺たちと一緒に居づらくなるのなら……言ってほしい。店のことは心配だが、代わりも探す」

 驚いてはいるけど、落ち着かないだけで嫌悪感は全くない。
 だって、俺にとって二人は大切な幼なじみだってことは変わらない事実だ。
 それが、幼なじみ以上になるかどうか……それをきちんと考えなくちゃいけないよな。

「二人のことを嫌いになんてなるはずないだろ。だからこそ、俺も真剣に答えないといけないって思ったんだから。本当はすぐに答えられればいいんだけど……」

 情けない気持ちを素直に伝えると、二人は俺の手を握って笑ってくれた。

「やっぱり蒼樹は可愛い! 好きだ!」
「同感だ。蒼樹は可愛い。俺も好きだ」
「はあ……やっぱり俺は可愛いと思われてる訳だ。二人とも俺を女の子みたいに可愛がりたいってこと?」

 世の中にはそういうジャンルもあることくらいは知ってるけど、男性同士の場合だって抱かれる側がいるわけだよな。
 で、確認のために聞いてみたんだけど……二人とも俺を抱きたいってことなんだよな。
 あぁ……思いっきり頷かれてる……。
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