レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

文字の大きさ
上 下
56 / 64
第六章 三人の新しい関係

56.真剣な表情のとっきー

しおりを挟む
 げんちゃんは俺たちから一歩離れて、見守るように両腕を組んでブランコの支柱に身体を預けた。
 まるで、見届人みたいな感じだ。
 
 対してとっきーは真剣な表情のままだ。
 こういう時は俺に対して怒ってることが多いんだけど、今回は何だか緊張してるみたいだな。

蒼樹あおいは一生気付かなさそうだから、いつ言おうか迷ってたんだよな。だけど、今回みたいに誰かにとられそうになるくらいならこの関係性が崩れるとしても言うわ」
「崩れるって……今更だろ。それに最近俺に対して過保護みたいだけど、とっきーのことを放ってどこかに行ったりしないって」
「……それは分かってる。だけど、俺はそれだけじゃもう、我慢できない」

 とっきーがじっと俺を見つめてくる。
 不機嫌な目線じゃないし、むしろ熱がこもっている感じだ。
 とっきーが熱くなる時は、心の底から真剣に何かを伝えようとしているときなんだけど俺に何を言おうとしているんだろう?

「別に我慢なんてしなくても……」
「蒼樹、俺はずっと蒼樹のことが好きだった。もちろん今もだ」
「え……うん、ありがとう?」

 とっきーに嫌われてないことは知ってるけど、何かがおかしい。
 俺の気の抜けたような返事を聞いて、とっきーはぐいっと俺の腕を引いて俺のことをぎゅうっと抱きしめてきた。

「とっきー?」
「この反応は予想してた。だから、本当はもっと実力行使に出たいくらいだ。でも、玄暉げんきの前でするのはルール違反だよな」
「だから、何を言って……」

 とっきーは俺を一旦開放すると、今度は俺の頬を両手で包んで額を突き合わせてきた。

「だから、蒼樹のことが好きなんだよ。今すぐキスしたい」
「は……? え、今なんて?」

 とっきーはフッと笑んで、俺の額にちゅっと唇を触れさせた。
 スキンシップにしても過剰な気がするんだけど、とっきーが俺を見つめる視線は熱がこもったままだ。

「なんでキス……」
「あのさあ、ここまで言っても分かんない? 本当は唇にキスしたいんだけどな。それはまた今度。さすがに返事も聞いてないのにするのは反則だろうし」
「だって、俺は男だし。なのに俺にキスしたいっていうのは……」

 俺が軽くパニックになってると、見守っていたげんちゃんが俺たちの方へ近づいてきた。
 今度はとっきーが一歩離れると、げんちゃんが俺の側に来て優しく微笑んだ。

「蒼樹が困惑するのも無理はない。だけど、鷺羽ときはが言っていることは事実だ。そして、俺も同じ気持ちだ」

 げんちゃんが笑ってくれるのは俺の前が多いよなとは思ってたけど、それは俺に心を許してくれるからであって幼なじみだからだと信じて疑わなかった。
 だけど、二人とも同じ気持ちってどういうことだ?
 とっきーが言っていることを聞いてから、心臓のバクバクが止まらない。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

憧れていた天然色

きりか
BL
母という名ばかりの女と、継父に虐げられていた、オメガの僕。ある日、新しい女のもとに継父が出ていき、火災で母を亡くしたところ、憧れの色を纏っていたアルファの同情心を煽り…。 オメガバースですが、活かしきれていなくて申し訳ないです。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

愛おしいほど狂う愛

ゆうな
BL
ある二人が愛し合うお話。

処理中です...