55 / 64
第六章 三人の新しい関係
55.懐かしい公園で
しおりを挟む
北條さんとの夕食は微妙な空気のままだったけど、とっきーとげんちゃんも言うことを言ったせいか落ち着いたみたいだ。
げんちゃんも怒らせると怖いタイプだから、何とか無事に終わって良かったかもしれない。
「またコーヒーを飲みに行ってもいいだろうか? やはり迷惑かな」
「迷惑だなんて、そんなことありません。北條さんは大切なお客様ですから」
当たり前のことを言ったつもりなのに、とっきーはまた不満そうな表情になる。
「誰にでも甘いことを言うんだよなー蒼樹は」
「鷺羽、器の小さい男は嫌われるぞ」
「はあっ? 誰が器が小さいって?」
「はぁ……いちいち反応するのが子どもっぽいんだよなぁ、とっきーは」
北條さんには微笑ましそうな表情で見られてるし、俺まで恥ずかしい。
とっきーが爆発する前に、お暇した方が良さそうだ。
「騒がしくしてしまい、すみませんでした。夕食、ごちそうさまです」
「気にしないでくれ。せめてものお詫びになればいいのだが」
北條さんが申し訳なさそうにとっきーとげんちゃんの方へ顔を向けると、二人も軽く頭を下げた。
「美味しい食事に罪はないので。ありがたくご馳走になります」
「……右に同じ。俺だけ悪者にされるのも癪なんで。ごちそうさまでした」
北條さんは柔和な笑みを浮かべながら、それならば良かったと言ってくれた。
色々なことが重なって落ち着かなかったけど、何とか無事に終わって良かった。
+++
北條さんの泊まるホテルを後にして、三人でのんびり歩く。
誰が話す訳でもなく黙って歩き続けていると、住宅街の中にある小さな公園へ辿り着いた。
「この公園、懐かしいな。鷺羽、覚えてるか?」
「良く三人で遊んでた公園だろ? 流石に覚えてる」
「とっきーはいっつもブランコに乗ってたよね。子どもの頃はこの公園で良く遊んでたなー。久しぶりに来たかも」
懐かしくて自然と笑顔になる。
二人の返事を待ってたつもりなのに、何だか妙な空気になった気がする。
しかも二人ともじっと俺の方を見てるし。
俺の顔に何か付いてるとか?
「急に黙るなよ。俺、なんか変なこと言った? それとも顔に何か付いてる?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……俺、もう蒼樹に言ってもいいか?」
「鷺羽が言うなら、俺も言うぞ」
とっきーとげんちゃんは何の話をしてるんだろう?
また俺に分からないことを言ってるみたいだけど……心当たりが全くない。
「今日みたいなことがまたあったら、今度こそ抑えられなさそうだし。俺から言ってもいい?」
「ああ。今なら出し抜けにはならないからな。鷺羽からで構わない」
「分かった。じゃあ、俺からいかせてもらう。もう面倒だし、玄暉も聞いてていいよ」
とっきーはそういうと、改めて俺へと向き直る。
妙に真剣な顔をしてるし、前から俺には言えなかったことを言うつもりみたいだから俺も真面目に聞かないとな。
とっきーに顔を向けて聞く姿勢を取ると、とっきーはふぅっと息を吐き出して話し始めた。
げんちゃんも怒らせると怖いタイプだから、何とか無事に終わって良かったかもしれない。
「またコーヒーを飲みに行ってもいいだろうか? やはり迷惑かな」
「迷惑だなんて、そんなことありません。北條さんは大切なお客様ですから」
当たり前のことを言ったつもりなのに、とっきーはまた不満そうな表情になる。
「誰にでも甘いことを言うんだよなー蒼樹は」
「鷺羽、器の小さい男は嫌われるぞ」
「はあっ? 誰が器が小さいって?」
「はぁ……いちいち反応するのが子どもっぽいんだよなぁ、とっきーは」
北條さんには微笑ましそうな表情で見られてるし、俺まで恥ずかしい。
とっきーが爆発する前に、お暇した方が良さそうだ。
「騒がしくしてしまい、すみませんでした。夕食、ごちそうさまです」
「気にしないでくれ。せめてものお詫びになればいいのだが」
北條さんが申し訳なさそうにとっきーとげんちゃんの方へ顔を向けると、二人も軽く頭を下げた。
「美味しい食事に罪はないので。ありがたくご馳走になります」
「……右に同じ。俺だけ悪者にされるのも癪なんで。ごちそうさまでした」
北條さんは柔和な笑みを浮かべながら、それならば良かったと言ってくれた。
色々なことが重なって落ち着かなかったけど、何とか無事に終わって良かった。
+++
北條さんの泊まるホテルを後にして、三人でのんびり歩く。
誰が話す訳でもなく黙って歩き続けていると、住宅街の中にある小さな公園へ辿り着いた。
「この公園、懐かしいな。鷺羽、覚えてるか?」
「良く三人で遊んでた公園だろ? 流石に覚えてる」
「とっきーはいっつもブランコに乗ってたよね。子どもの頃はこの公園で良く遊んでたなー。久しぶりに来たかも」
懐かしくて自然と笑顔になる。
二人の返事を待ってたつもりなのに、何だか妙な空気になった気がする。
しかも二人ともじっと俺の方を見てるし。
俺の顔に何か付いてるとか?
「急に黙るなよ。俺、なんか変なこと言った? それとも顔に何か付いてる?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……俺、もう蒼樹に言ってもいいか?」
「鷺羽が言うなら、俺も言うぞ」
とっきーとげんちゃんは何の話をしてるんだろう?
また俺に分からないことを言ってるみたいだけど……心当たりが全くない。
「今日みたいなことがまたあったら、今度こそ抑えられなさそうだし。俺から言ってもいい?」
「ああ。今なら出し抜けにはならないからな。鷺羽からで構わない」
「分かった。じゃあ、俺からいかせてもらう。もう面倒だし、玄暉も聞いてていいよ」
とっきーはそういうと、改めて俺へと向き直る。
妙に真剣な顔をしてるし、前から俺には言えなかったことを言うつもりみたいだから俺も真面目に聞かないとな。
とっきーに顔を向けて聞く姿勢を取ると、とっきーはふぅっと息を吐き出して話し始めた。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる