レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第六章 三人の新しい関係

55.懐かしい公園で

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 北條さんとの夕食は微妙な空気のままだったけど、とっきーとげんちゃんも言うことを言ったせいか落ち着いたみたいだ。
 げんちゃんも怒らせると怖いタイプだから、何とか無事に終わって良かったかもしれない。

「またコーヒーを飲みに行ってもいいだろうか? やはり迷惑かな」
「迷惑だなんて、そんなことありません。北條さんは大切なお客様ですから」

 当たり前のことを言ったつもりなのに、とっきーはまた不満そうな表情になる。
 
「誰にでも甘いことを言うんだよなー蒼樹あおいは」
鷺羽ときは、器の小さい男は嫌われるぞ」
「はあっ? 誰が器が小さいって?」
「はぁ……いちいち反応するのが子どもっぽいんだよなぁ、とっきーは」

 北條さんには微笑ましそうな表情で見られてるし、俺まで恥ずかしい。
 とっきーが爆発する前に、お暇した方が良さそうだ。

「騒がしくしてしまい、すみませんでした。夕食、ごちそうさまです」
「気にしないでくれ。せめてものお詫びになればいいのだが」

 北條さんが申し訳なさそうにとっきーとげんちゃんの方へ顔を向けると、二人も軽く頭を下げた。
 
「美味しい食事に罪はないので。ありがたくご馳走になります」
「……右に同じ。俺だけ悪者にされるのも癪なんで。ごちそうさまでした」

 北條さんは柔和な笑みを浮かべながら、それならば良かったと言ってくれた。
 色々なことが重なって落ち着かなかったけど、何とか無事に終わって良かった。

 +++

 北條さんの泊まるホテルを後にして、三人でのんびり歩く。
 誰が話す訳でもなく黙って歩き続けていると、住宅街の中にある小さな公園へ辿り着いた。

「この公園、懐かしいな。鷺羽、覚えてるか?」
「良く三人で遊んでた公園だろ? 流石に覚えてる」
「とっきーはいっつもブランコに乗ってたよね。子どもの頃はこの公園で良く遊んでたなー。久しぶりに来たかも」

 懐かしくて自然と笑顔になる。
 二人の返事を待ってたつもりなのに、何だか妙な空気になった気がする。
 しかも二人ともじっと俺の方を見てるし。
 俺の顔に何か付いてるとか?

「急に黙るなよ。俺、なんか変なこと言った? それとも顔に何か付いてる?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……俺、もう蒼樹に言ってもいいか?」
「鷺羽が言うなら、俺も言うぞ」

 とっきーとげんちゃんは何の話をしてるんだろう?
 また俺に分からないことを言ってるみたいだけど……心当たりが全くない。

「今日みたいなことがまたあったら、今度こそ抑えられなさそうだし。俺から言ってもいい?」
「ああ。今なら出し抜けにはならないからな。鷺羽からで構わない」
「分かった。じゃあ、俺からいかせてもらう。もう面倒だし、玄暉げんきも聞いてていいよ」

 とっきーはそういうと、改めて俺へと向き直る。
 妙に真剣な顔をしてるし、前から俺には言えなかったことを言うつもりみたいだから俺も真面目に聞かないとな。

 とっきーに顔を向けて聞く姿勢を取ると、とっきーはふぅっと息を吐き出して話し始めた。
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