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第五章 レトロ喫茶の運命は如何に

46.コーヒーゼリーのお味は?

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 コーヒーゼリーはシンプルなものだけど、ゼリー自体はゼリー用にブレンドしたコーヒーだから少しほろ苦くなっている。
 げんちゃんが仕上げと最終チェックをしてから、俺の前にゼリーを出してくれた。

「ありがとう。じゃあ、持っていくね」
「よろしく頼む。蒼樹あおい、あまりあの北條という紳士に深入りするなよ」
「げんちゃんがそんなことを言うのは珍しいな。別にただ普通に話してるだけだから」
「それならいいが。蒼樹がずいぶん彼のことを気にしていたからな。鷺羽ときはほど言うつもりはないが、蒼樹は誰からも好かれるからな」
「げんちゃんにまで心配されちゃうだなんて、俺は普通に話してるだけなんだけど。というか、お客さんに好かれるならいいことなんじゃない?」

 げんちゃんは何か言いたそうな顔をしていたけど、結局何も言わなかった。
 とっきーだったら、確実に何か言ってきそうだよな。

「げんちゃんを困らせるようなことはしないから大丈夫」
「ああ。分かってる」
 
 それだけ言うと、げんちゃんは作業に戻ってしまった。
 俺もコーヒーゼリーをトレーに載せてカウンターへ戻る。
 
 北條さんは、優雅にカップを傾けてコーヒーを楽しんでいるみたいだ。
 こういう仕草ってどういう生活を送ったら身に着くんだろう?

「お待たせ致しました。コーヒーゼリーです」
「ありがとう。シンプルで美味しそうだ」

 カップを置くと、スプーンへ持ち替えてゼリーを掬って口へ運んでいく。
 味わって食べてくれている姿を見るのは、マスターとしても嬉しい気持ちになる。

「ふむ。ほろ苦いコーヒーに生クリームの甘さとバニラのアイスがちょうどいいな。私はこの二つだけでも甘く頂けてしまうな」
「ありがとうございます。どなたでも美味しく食べていただけるように工夫していますので、そう言っていただけると励みになります」

 コーヒーだけじゃなくて食べ物も気に入ってもらえて良かった。
 さすがげんちゃんだ。

「今日は色々味わうことができて得した気分だ」
「そんな、こちらこそ。デザートもお口にあったみたいで本当に良かったです」

 穏やかな午後の日は、やっぱりコーヒーと甘いものなんだよな。
 俺が個人的に好きな組み合わせっていうのもあるけど、やっぱり甘いモノとほろ苦いコーヒーは文句なしにピッタリだと思ってる。

 ゆっくり食べているように見えたのに、コーヒーゼリーが乗っていた皿は空になっていた。
 いつの間に食べ終わったのか、全く気付かなかった。
 北條さんは微笑んだあと、ごちそうさまって言いながら俺の顔を見上げてくる。
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