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第五章 レトロ喫茶の運命は如何に
41.新しいお客さんは何者?
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暫くは店の営業時間も再開発の話で持ち切りだった。
休みの日に駅前は見に行ってみたけど、最近有名になった企業っぽいってことしか分からなかった。
企業名を調べたら、やり手の若社長が再開発を進めてるってことでテレビにも出たことあるらしい。
「結局よく分からないってオチなんだよな」
「大規模だって言うなら、商店街の人たちを集めて説明会とかありそうだけど……」
とっきーがお客さんたちから情報収集を進めているけど、駅前がキレイになるから嬉しいっていう話くらいで商店街のことは誰も知らないらしい。
自治会長さんもあれから話を聞いてないっていうから、誰にも言わないようにとでも企業側から言われてるのかもしれないな。
「今日は若い子たちが多いから、余計に情報収集は難しそうだな」
「どうみても学生ばっかりだし、後はこの店に話がきてみないと分からなさそうだ」
カウンターでとっきーと短い会話を交わしていると、入り口の扉のベルが鳴り響く。
入ってきたのは身長が高い男の人だ。
上品なスーツを着こなしてるし、エリートの役付きサラリーマンなのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
史弥君がお客さんを案内しようとすると、男の人がカウンターを希望したのか俺の前までやってきた。
近くで見ても整った顔をしていて、モテそうな雰囲気だ。
「君がマスターか。なるほど」
「はい、そうですが……何か?」
「いや、気にしないでくれ。そうだな……この店おススメのコーヒーを頼む」
「かしこまりました」
新規のお客さんだし、また来てもらうために張り切って作らないとな。
ここはプラコレブレンドで楽しんでもらおう。
俺がコーヒーを淹れている間、視線は俺へ向いているのが分かる。
コーヒーを淹れていると手元を見られるのはよくあることなんだけど、この男性は俺の顔を見ている気がするんだよな。
「お待たせしました。プラムコレクトブレンドです」
「ありがとう。丁寧に淹れてもらえて嬉しいよ。淹れ方は勉強したのかな?」
「はい。自分で勉強もしましたけど、元々店をやっていた祖父に習ったんです。このブレンドも元々祖父が作ったものです」
「そうか。おじいさんは引退されたのかな?」
ここで全てを話すと人によっては重く聞こえるよな。
少しぼかして伝えてみるか。
「まあ、そんなところです。この店も祖父から受け継いだものですから」
「確かに、この店はまさにレトロ喫茶という雰囲気で落ち着くな。これからもぜひ寄らせてもらおう」
「ありがとうございます。いつでもお待ちしてますね」
気に入ってもらえたみたいで良かった。
でも、この男の人は何者なんだろう? 俺の方が気になっちゃうな。
休みの日に駅前は見に行ってみたけど、最近有名になった企業っぽいってことしか分からなかった。
企業名を調べたら、やり手の若社長が再開発を進めてるってことでテレビにも出たことあるらしい。
「結局よく分からないってオチなんだよな」
「大規模だって言うなら、商店街の人たちを集めて説明会とかありそうだけど……」
とっきーがお客さんたちから情報収集を進めているけど、駅前がキレイになるから嬉しいっていう話くらいで商店街のことは誰も知らないらしい。
自治会長さんもあれから話を聞いてないっていうから、誰にも言わないようにとでも企業側から言われてるのかもしれないな。
「今日は若い子たちが多いから、余計に情報収集は難しそうだな」
「どうみても学生ばっかりだし、後はこの店に話がきてみないと分からなさそうだ」
カウンターでとっきーと短い会話を交わしていると、入り口の扉のベルが鳴り響く。
入ってきたのは身長が高い男の人だ。
上品なスーツを着こなしてるし、エリートの役付きサラリーマンなのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
史弥君がお客さんを案内しようとすると、男の人がカウンターを希望したのか俺の前までやってきた。
近くで見ても整った顔をしていて、モテそうな雰囲気だ。
「君がマスターか。なるほど」
「はい、そうですが……何か?」
「いや、気にしないでくれ。そうだな……この店おススメのコーヒーを頼む」
「かしこまりました」
新規のお客さんだし、また来てもらうために張り切って作らないとな。
ここはプラコレブレンドで楽しんでもらおう。
俺がコーヒーを淹れている間、視線は俺へ向いているのが分かる。
コーヒーを淹れていると手元を見られるのはよくあることなんだけど、この男性は俺の顔を見ている気がするんだよな。
「お待たせしました。プラムコレクトブレンドです」
「ありがとう。丁寧に淹れてもらえて嬉しいよ。淹れ方は勉強したのかな?」
「はい。自分で勉強もしましたけど、元々店をやっていた祖父に習ったんです。このブレンドも元々祖父が作ったものです」
「そうか。おじいさんは引退されたのかな?」
ここで全てを話すと人によっては重く聞こえるよな。
少しぼかして伝えてみるか。
「まあ、そんなところです。この店も祖父から受け継いだものですから」
「確かに、この店はまさにレトロ喫茶という雰囲気で落ち着くな。これからもぜひ寄らせてもらおう」
「ありがとうございます。いつでもお待ちしてますね」
気に入ってもらえたみたいで良かった。
でも、この男の人は何者なんだろう? 俺の方が気になっちゃうな。
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