レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第四章 レトロ喫茶は順風満帆?

36.悪いのは俺だけど

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 女性は何度も俺たちにお礼を言ってくれた。
 とっきーはちゃっかりプラコレを紹介してたから、いつかお店に来てくれるかもしれないな。
 そこまで大きな騒ぎにならなかったし、女性も大丈夫だって言ってたから特に警察へ届けたりはしなくていいってことになった。
 念のため友達との待ち合わせ場所まで送っていって、三人で無事を確認してから女性と別れた。

 +++

 げんちゃんの車のある駐車場まで戻ってきたけど、その間二人とも無言ですたすた俺の前を歩いていた。
 このパターンは……怒ってるときだ。
 しかも、二人同時っていうのは厄介だよな。
 まあ、俺がすぐに戻らなかったのが悪いんだけど。

 車の前で立ち止まると、仲良く二人同じタイミングで俺の方へ振り返った。

蒼樹あおい、何も起こってないみたいな顔してるけど。俺たちが言いたいこと、分かるよな?」
「アレだろ? アレ。うん、アレだよな」

 誤魔化す言葉も出てこないし、言いたいことって言われてもどのことだろう?
 思い当たることだらけで、言い訳もできない。
 真面目な顔で睨まれても、怒ってるってことくらいしか察することができなくてもどかしい。
 俺も一応は色々考えた結果で何とか事が収まったし、そろそろ落ち着いてもらいたいのに二人の視線が許してくれなさそうだ。

「蒼樹、女性を助けようとしてたことは立派だ。男らしいよ。でも下手したら蒼樹が殴られてたかもしれないだろ」
「それは……うん。二人が来なければ一発もらって通報できたらいいなと思ってた」

 何となく二人の顔を見ていられなくって、顔を逸らす。
 うやむやにしようとしたのに、とっきーがわざわざ俺の前まで回り込んできてじぃっと俺の顔を覗き込んでくる。

「あのなあ。飲み物買いに行くって言ったのになかなか戻ってこなかったから、心配したんだぞ」
「ですよね」

 笑ってごまかそうとしたんだけど、げんちゃんが更に真剣な顔をしてるから怖い。
 げんちゃんはずっと無言のままだし、どうしよう?

「その……なんていうか。助けてくれてありがとう。で、心配かけてごめん」

 笑ってごまかそうとすると、げんちゃんにぎゅっと抱き寄せられてしまった。
 力が強いから、簡単に引きはがせない。
 周りに誰もいない裏道だからいいけど、誰かが俺たちを見たらなにやってるのかと思われそうだ。

「げんちゃん、苦しいって! うぅ……」
「無茶するな。蒼樹はケンカ強くないだろう? 怪我でもしたら大変だ」
「わ、分かったから! 離してくれって」

 げんちゃんの締め付けから心配してくれる気持ちは伝わってくるんだけど、ガチで力が強いからそろそろ離してほしい。
 息苦しくて酸欠になりそうだ。

玄暉げんき、おっまえなぁ……そろそろ蒼樹が息苦しくてやばそうだから離せ」

 とっきーが腕を差し込んで俺とげんちゃんを引き剝がしてくれた。
 はぁ……苦しかった。

「……悪い」
「いや、悪いのは俺だから。心配かけたのは反省してるけどさ、俺も男だっていうこと忘れてない? 心配するならあの子であって俺じゃ……」

 俺が訴えると、とっきーは盛大にため息を吐き出しながらガクっと肩を落としてるし、げんちゃんも唸るように額に手を当ててぷるぷるしてるような?
 もしかして、またマズイこと言ったのかも。
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