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第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です
27.真面目なげんちゃんの誓い
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げんちゃんが試作したケーキは程よい苦さと甘さで甘いものが苦手な人でも食べやすそうだ。
シンプルだけど、グレープフルーツってハズレない気がするんだよな。
「うん。俺の好みで言えば好き。甘すぎなくて食べやすいよ。女性だけじゃなくて男性も頼みやすそうだ」
「そうか。蒼樹が喜んでくれたなら作った甲斐がある」
げんちゃんは柔らかい表情で俺を見てくる。
普段あんまり表情が変わらないから、嬉しそうにしているげんちゃんを見てると俺も嬉しくなる。
「頭使ったから、もっといっぱい食べたいくらい旨いよ?」
笑いながら美味しいことをアピールするつもりで、がっついて食べて見せる。
本来は紅茶を飲みながら優雅に食べるものだろうけど、げんちゃんが喜ぶ顔をもっと見たくなった。
「蒼樹、クリーム付いてる」
「あ、さすがにがっつきすぎた……」
げんちゃんの指が俺の頬に伸びてクリームを拭っていく。
その指は、そのままげんちゃんの口の中へ……って。
気付くと言葉を発する前に、無言のまま視線で追っていた。
「げんちゃん……」
「ん、どうした?」
普通に拭き取ってくれればいいのに、まさか舐めると思わなかった。
しかも、自然な仕草なのに妙に色気があるというかなんというか。
俺の方が何故か恥ずかしくなる。
「蒼樹?」
「あ、なんでもない。げんちゃん、言ってくれれば自分で拭いたのに」
「届く範囲に拭くものが見当たらなくてな」
「いや、そこに紙ナプキンが置いてあるから。しょうがないな。俺が代わりにげんちゃんの指を拭いてあげよう」
客席用に置いてある銀の入れ物の中から、一枚紙ナプキンを取ってげんちゃんの手を取る。
人差し指を拭いていると、げんちゃんがじっと俺のことを見つめていることに気づいた。
「俺の顔にまだ生クリーム付いてる?」
「いや、ついてない」
げんちゃんはふわっと優しく笑うと、俺の手の甲に手のひらをそっと置く。
俺の手を潰さないように配慮してくれているのか、軽く握り込んできた。
もう指は拭き終わったからいいんだけど、なんで手を握られてるのか分からない。
「やっぱり蒼樹は優しいな。俺の作ったものを美味しそうに食べてくれる顔を見てるだけで嬉しくなる」
「そう? でもげんちゃんの作ってくれるものは美味しいし、じいちゃんの味も守ってくれてるから俺は感謝の気持ちしかないよ?」
「おじいさんの味を守ることは当然だ。蒼樹が大切にしているものを守ることは俺にとっても大事なことだ」
「げんちゃんはとっきーと違って真面目すぎるくらいだよ。いつもありがとう」
俺がお礼を言うと、げんちゃんは更に手を重ねて俺の両手を優しく包み込んでくる。
俺より大きい男らしい手だけど、指先は器用に動くし繊細なんだよな。
「俺はこれからも蒼樹の力になりたい。改めて誓わせて欲しい」
「誓うだなんて大げさな……」
俺は笑っているのに、げんちゃんは真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。
げんちゃんの真剣さに思わず息を飲みこんだ。
俺が黙ったまま固まっていると、今度はそっと額を握り込んだ手の上へと落としてきた。
「蒼樹の側で、これからも蒼樹のことを守れますように」
「げんちゃん……」
誓いにも似た呟きは、俺の心もやんわりと包んでくれる。
俺のことをこれからも助けてくれるっていう意味だっていうのは分かってるけど、擽ったいだけじゃない温かい気持ちになった。
シンプルだけど、グレープフルーツってハズレない気がするんだよな。
「うん。俺の好みで言えば好き。甘すぎなくて食べやすいよ。女性だけじゃなくて男性も頼みやすそうだ」
「そうか。蒼樹が喜んでくれたなら作った甲斐がある」
げんちゃんは柔らかい表情で俺を見てくる。
普段あんまり表情が変わらないから、嬉しそうにしているげんちゃんを見てると俺も嬉しくなる。
「頭使ったから、もっといっぱい食べたいくらい旨いよ?」
笑いながら美味しいことをアピールするつもりで、がっついて食べて見せる。
本来は紅茶を飲みながら優雅に食べるものだろうけど、げんちゃんが喜ぶ顔をもっと見たくなった。
「蒼樹、クリーム付いてる」
「あ、さすがにがっつきすぎた……」
げんちゃんの指が俺の頬に伸びてクリームを拭っていく。
その指は、そのままげんちゃんの口の中へ……って。
気付くと言葉を発する前に、無言のまま視線で追っていた。
「げんちゃん……」
「ん、どうした?」
普通に拭き取ってくれればいいのに、まさか舐めると思わなかった。
しかも、自然な仕草なのに妙に色気があるというかなんというか。
俺の方が何故か恥ずかしくなる。
「蒼樹?」
「あ、なんでもない。げんちゃん、言ってくれれば自分で拭いたのに」
「届く範囲に拭くものが見当たらなくてな」
「いや、そこに紙ナプキンが置いてあるから。しょうがないな。俺が代わりにげんちゃんの指を拭いてあげよう」
客席用に置いてある銀の入れ物の中から、一枚紙ナプキンを取ってげんちゃんの手を取る。
人差し指を拭いていると、げんちゃんがじっと俺のことを見つめていることに気づいた。
「俺の顔にまだ生クリーム付いてる?」
「いや、ついてない」
げんちゃんはふわっと優しく笑うと、俺の手の甲に手のひらをそっと置く。
俺の手を潰さないように配慮してくれているのか、軽く握り込んできた。
もう指は拭き終わったからいいんだけど、なんで手を握られてるのか分からない。
「やっぱり蒼樹は優しいな。俺の作ったものを美味しそうに食べてくれる顔を見てるだけで嬉しくなる」
「そう? でもげんちゃんの作ってくれるものは美味しいし、じいちゃんの味も守ってくれてるから俺は感謝の気持ちしかないよ?」
「おじいさんの味を守ることは当然だ。蒼樹が大切にしているものを守ることは俺にとっても大事なことだ」
「げんちゃんはとっきーと違って真面目すぎるくらいだよ。いつもありがとう」
俺がお礼を言うと、げんちゃんは更に手を重ねて俺の両手を優しく包み込んでくる。
俺より大きい男らしい手だけど、指先は器用に動くし繊細なんだよな。
「俺はこれからも蒼樹の力になりたい。改めて誓わせて欲しい」
「誓うだなんて大げさな……」
俺は笑っているのに、げんちゃんは真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。
げんちゃんの真剣さに思わず息を飲みこんだ。
俺が黙ったまま固まっていると、今度はそっと額を握り込んだ手の上へと落としてきた。
「蒼樹の側で、これからも蒼樹のことを守れますように」
「げんちゃん……」
誓いにも似た呟きは、俺の心もやんわりと包んでくれる。
俺のことをこれからも助けてくれるっていう意味だっていうのは分かってるけど、擽ったいだけじゃない温かい気持ちになった。
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