上 下
25 / 64
第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

25.新メンバーを迎え入れよう

しおりを挟む
 とっきーのストレス解消に付き合わされてからは、これといって特に大きな問題もなかった。
 更に客足も伸びてきたし、休日は三人でお店を回すのがキツくなってきたくらいだ。
 アルバイトをそろそろ雇ってもいいかもと話し合いをして、とっきーの知り合いの男の子を紹介してもらった。
 とっきーに元々働いてたコンビニが潰れた話をした途端に、一緒に働かないかと誘われたらしい。

「ええと、鈴木さんは鷺羽ときは……一路いちろの紹介で来ていただきましたし、彼と同じホール担当で構わないでしょうか? ご実家で調理をなさっていた経験があるなら調理でも助かりますが」
「実家は確かにラーメン屋ですけど、俺はラーメンを作ったことないんで調理っていっても作業補助くらいしかできないっすね。飲食は初めてですけど、高校の時から接客系のバイトはしてます」
「分かりました。調理については玄暉げんき……担当の向坂さきさかに一任してますので、補助的な調理はお願いすることもあると思います」
「分かりました。簡単な料理はできるんで、教えていただければお手伝いします」

 元々雇うつもりだったから、彼が契約内容に問題がなければという確認をして即採用した。
 げんちゃんも俺の決めたことならって納得してくれたし、とっきーがコイツなら大丈夫だって推薦してきた子だから問題はなさそうだ。

「では、一週間後からシフトに入っていただくということで」
「了解です。……っていうか、俺に対しては気楽に接してもらって大丈夫ですよ。一路先輩のご友人って聞いてますし。それで、先輩のことは何て呼べばいいですか?」
「じゃあ、俺も普段通りに喋らせてもらおうかな。呼び方は特に決めてないから、常識の範囲内で呼んでくれれば大丈夫。知ってるかもしれないけど、俺は永瀬 蒼樹ながせ あおいです。これからよろしくね」
「じゃあ蒼樹さ……って、呼ぶと一路先輩が煩そうなんで。店ではレトロ喫茶の経営者だし、マスターって呼びますね。こちらこそ、よろしくお願いします」

 聞いていた話だともう少し大人しい子なのかと思ってたけど、ハキハキしてるし安心して仕事を任せられそうだ。
 バイトはかけもちだって言ってたけど、給料に関しても俺から店を始めたきっかけを教えてもらえるなら最低賃金でも……って神様みたいなことを言ってくれた。
 
 お店の経営に興味があるみたいで、自分も経営の道に進むかもしれないから高い賃金の代わりに話が聞きたいらしい。
 俺も勢いでやってるし、教えられるようなことがあるかは分からないけど彼のために役立てるなら嬉しい。

 新しくプラコレの一員になってくれた鈴木史弥ふみや君は、見た目も言動通りでこざっぱりしてる雰囲気な焦げ茶のショートに焦げ茶の目をした少しクールな印象だけど普通の大学生って感じだ。
 とっきー曰く世渡り上手タイプらしいけど、ニコニコしてる感じじゃないのに嫌な雰囲気もしないし話しやすい気がする。

「あ、そうだ。俺のことも気軽に呼んでください。一路先輩なんてふーみんとか言ってますからね。史弥で構わないっすよ」
「ふーみんって……。分かった。じゃあ、史弥君。気を付けて帰ってね」
「ありがとうございます。失礼します」

 史弥くんは椅子から立ち上がると、一礼して部屋から出て行った。
 人員も確保できたから、お客さんがたくさん来ても安心してお店を回せそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

告白ゲーム

茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった 他サイトにも公開しています

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

嫌われものと爽やか君

黒猫鈴
BL
みんなに好かれた転校生をいじめたら、自分が嫌われていた。 よくある王道学園の親衛隊長のお話です。 別サイトから移動してきてます。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

始まりの、バレンタイン

茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて…… 他サイトにも公開しています

処理中です...