レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

24.暴走とっきーと宥める俺

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 とっきーの心が鎮まるかは分からないけど、リクエスト通りにとっきーの頭をポンポンと撫でる。
 とっきーの顔が少しずつ上がってきたから、笑いながら俺から少し近づいて両腕を伸ばす。

「ハグって……体育会系じゃあるまいし。こんな感じ?」

 とっきーの方が少しだけ身長が高いけど、ほとんど変わらないから健闘を称え合ってるみたいな感じになる。
 これで気が晴れるのかはよく分からないけど、俺もとっきーと仲違いしたい訳じゃないからな。

蒼樹あおい……っ!」
「わっ!」

 俺がやんわりハグをしてたのに、とっきーは壁から手をはがすとガバっと勢いよく俺をハグしてくる。
 ぎゅうぎゅうしてくるので、苦しいくらいだ。

「ちょっ、くるし……っ」
「これくらいはいいよな」

 とっきーは俺を放す気はないのか、首筋に鼻を擦りつけてきた。
 動きが擽ったくて、ぞわぞわする。

「擽ったいって! やってること意味分かんないからっ」
「あーマズイ。これ以上するとマジで我慢できなくなりそう」

 とっきーはスンっと鼻を鳴らしてから、漸く俺を開放してくれた。
 一体、何がしたかったんだ。
 機嫌は良くなったみたいだから良かったけど、あまりの怪しさに一歩離れた。

「母親に甘える子どもでも、鼻は擦りつけてこないだろ」
「それはアレだ。蒼樹の匂いを堪能……じゃなくて、俺もたまには甘えてみたっていいだろ?」
「はぁ? いやまあ、甘えるのは構わないけど……」

 変に気恥ずかしくなって、手のひらで首筋を庇う。
 いちゃついてるカップルじゃあるまいし、一体なんだったんだか。
 手のひらの下の首筋が少し熱を持っているみたいな気がして、落ち着かない。

「もしかして、蒼樹も興奮した?」
「俺もってなんだよ! するわけないだろ。擽ったかっただけだ」
「そんなに全力で否定しなくてもいいのにな。はぁ……前途多難ってこういう時に使うって思い知らされるわ」

 今日のとっきーは特に情緒不安定でついていけない。
 こういう時にげんちゃんがいてくれたらとっきーを止めてくれたんだろうけど、用事があるからって帰っちゃったからな。
 変な方向に暴走するとっきーを止めるのは、俺一人だと力不足だ。

「今日はこれくらいで勘弁してやるか。よし、帰るぞ」
「俺は疲れたよ……これでやっと帰れる」

 ニシシと笑いかけてくるとっきーを今度は俺が睨みつけながら、ボディバッグを手に取って背負う。
 とっきーも財布と携帯をパンツのポケットに突っ込むと、俺の肩を叩いてきた。

「明日は普通に働いてくれるよな? また不機嫌になったりするなよ」
「蒼樹が必要以上に微笑んだりしなければなー」
「だから、それは仕事上のことだからな? 分かってて言ってるだろ、もう」
「暫くはさっきの驚いた蒼樹の顔を思い出して、俺も我慢することにするわ」

 ニヤニヤしてるとっきーをぶん殴りたくなる。
 不機嫌になったりご機嫌になったり、どれだけ忙しすぎるんだよ全く。
 まあ、イライラされるよりかはマシだから今回は俺が我慢すればいいか。
 責任者は従業員に働きやすい環境を用意して、スムーズに働いてもらわないといけないからな。
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