レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

文字の大きさ
上 下
23 / 64
第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

23.俺にされても困るんだけど

しおりを挟む
 服をぼんやり着替えていると、こっちをジッと見ている視線に気づく。
 俺より素早く着替えたとっきーが、穴のあくほど俺を見ているみたいだ。
 
 いや、そんなに見られても困るんだけど。
 しかも何故か睨まれてる気がする。

「何?」
蒼樹あおいはさ、一体何をしたいわけ?」
「何をしたいって、今はお客さんを増やしたいに決まってるだろ。あとはこの前言った通りイケメンマスターを目指してる」

 俺の言い分に、とっきーは分かりやすいぐらいのため息をついてきた。
 何が不満か知らないけど、俺は店が流行るための努力をしてるだけなのにな。

「別にイケメンマスターを目指さなくても何とかなるだろ。ただでさえ、女の子とずっと喋るポジなのに」
「はぁ? 話すのは仕事の一環だろ。カウンターに座ってるお客さんと会話もできないマスターなんてありえない」

 とっきーが何を言いたいのかさっぱり分からなくて、少しイラっとする。
 俺が女の子と喋ると、昔から不機嫌になるんだよな。
 どうせとっきーの方がモテてる訳だし、とっきーが店の宣伝としてイケメンがいるって煽ったんだから実践すべきだと思っただけだ。

「とっきーだって、笑顔で接客してるんだから当たり前のことをしてるだけだ。なのに、勝手に不機嫌になられても意味が分からない」
「……っ」

 普段なら俺がここまで言えば引き下がるはずなのに、今日は分かりやすくイライラしたままだ。
 とっきーが怒りっぽいのは別に慣れてるんだけど、少し様子がおかしい気がする。

「昔っから、危なっかしいから邪魔な奴らは排除してたってのに。店のためとなるとこうなるのかよ……」
「え? 排除って言った? とっきーこそさっきから、何をイライラしてるんだよ。俺は別に間違ったことは……」

 言いかけたところで、俺の顔の横をとっきーの手が通り過ぎる。
 壁にバンっと手のひらを突いてから、キッと俺を睨んできた。
 何、この状況。
 これは……壁ドンってヤツか?

「何して……」
「蒼樹は鈍感すぎるんだよ! 俺と玄暉げんきがどんな思いでお前を……」
「いや、だから言ってる意味が分からないって。どうしてここでげんちゃんが出てくる訳? っていうか、俺に壁ドンする意味も分かんないし」
「あぁぁー! クッソ。俺だけもやもやするのも、そろそろ限界だって! なんで玄暉は平気な顔して耐えられるんだ?」

 言いながら、とっきーは俺の肩の上にぽすっと顔を乗せてきた。
 腕はぷるぷると震えてるし、そんなに堪えることって何かあったか?
 
「とっきー、良く分かんないけど俺でよければ話聞くよ?」
「……言えるかよ。言いたいけど、言えない。しかも、こんな情けない感じで言いたくない」

 とっきーは俺の肩に顔をくっつけたまま、力ない声で訴えてくる。
 俺が鈍感っていうのも理解できてないけど、もしかして接客だけじゃなくて女の子とゆっくり話せるカウンターに入りたいってことなのか?

「仕事に関して不満があるなら、遠慮なく言って欲しい。俺が責任者だから、問題点があるなら改善するようにする」
「……じゃあ、普通にしてろよ。無理しなくても蒼樹はちゃんとカッコイイからさ。可愛いだけじゃないから」
「カッコイイって……それは、ありがとう? とっきー、悩みごとは俺じゃなくてもげんちゃんでもいいからちゃんと吐き出してスッキリした方がいいと思う」
「ん。蒼樹には言えないから、代わりに蒼樹は俺のこと撫でてハグしてくれよ」

 とっきーのリクエストは子どもみたいで少し笑っちゃったけど、本人がそれで落ち着くって言うならお安い御用だ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

華麗に素敵な俺様最高!

モカ
BL
俺は天才だ。 これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない! そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。 ……けれど、 「好きだよ、史彦」 何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...