レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

19.イケメンに会えるレトロ喫茶?

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 初日以降、常連さんだけじゃなく新規のお客さんも少しずつ増えてきた。
 どうやら宣伝効果が出てきたらしい。

 しかも、流行り出した訳がイケメンに会えるレトロ喫茶……って。
 とっきーとげんちゃんは分かるけど、俺は別にイケメンじゃないんだけどな。
 普通だし、特に特徴もないのになあ。
 とっきーは、多少大げさな方がいいしそういうことにしておけって言うんだけどなんだか気が引ける。

「どうしたんだよ、蒼樹あおい。またぼーっとして」
「え? ああ、ごめん。考え事してた」
「考え事って割にはアホっぽい顔してたけど」
「失礼だな。確かにそこまで真剣に悩んでた訳じゃないけど」

 お客さんが少し途切れた時間帯、裏にあるバックヤードへ引っ込んで軽食を食べながら休憩してるところだった。
 お店を閉めた訳じゃないけど、今日は天気も悪いせいか客足が伸びていない。
 だから、順番に休憩を取ってしまうことにした。

 普段も合間に少し休憩を入れたりするけど、その時はお互いに仕事をカバーしながら少しずつ休憩を取っていた。

「いや、なんかイケメンって括りにされたのが気になって」
「それまだ気にしてたのか? 不細工って言われるよりイケメンって言われた方がいいだろ」
「んー……お店的にはアリかもしれないけどさ。とっきーやげんちゃんは分かるけど、俺は違うし」

 サンドイッチをかじりながら息を吐いてから顔を上げると、俺の顔を覗いていたらしいげんちゃんの顔が目の前にあって驚く。

「うわっ!」
「驚かせたか? 悪い」

 バランスを崩して椅子から落ちそうになったけど、げんちゃんが支えてくれたから何とか堪えて体勢を戻す。

「いや、大丈夫。今、とっきーと話してたんだよ。俺は別にイケメンじゃないって」
「なあ、寡黙なイケメンって評判のげんちゃんも言ってやれって。蒼樹もカッコイイってさ」

 とっきーがげんちゃんを軽くこぶしで小突くと、げんちゃんは小さく頷く。

「そうだな。蒼樹はカッコイイし可愛いぞ」
「はあ? いや、男に可愛いって何?」
「あー……それ言っちゃう? 俺はあえて言わないようにしてたのに」

 とっきーが額に手を当ててため息を吐いた。
 どういうこと? とっきーも俺のこと可愛いとか思ってたって訳?

「励ますつもりがうまくできなかったか。でも、蒼樹は蒼樹だ」
「なーんか納得いくようないかないような……そりゃ、俺は体つきも貧弱だし取柄もないからな」
「ネガティブになるなって。玄暉げんきの言い方は下手だったけど、誉め言葉のつもりだったんだよ。多分」

 誉め言葉なのか?
 俺って頼りないってことだよな。
 いっつも助けられてばっかりだし、俺もたまには男らしくしないとダメか。

「分かった。じゃあ、俺もイケメンだってところを見せる」
「え? どういうこと?」
「俺もやればできるってこと。見てろよ、二人とも」

 げんちゃんは不安そうな顔をしてるし、とっきーは意味が分からないって顔してるけど……俺は決めた。
 次に来た新規の女性のお客さんに、俺のできるサービスを詰め込んで店の常連さんになってもらおう。
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