レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

文字の大きさ
上 下
19 / 64
第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

19.イケメンに会えるレトロ喫茶?

しおりを挟む
 初日以降、常連さんだけじゃなく新規のお客さんも少しずつ増えてきた。
 どうやら宣伝効果が出てきたらしい。

 しかも、流行り出した訳がイケメンに会えるレトロ喫茶……って。
 とっきーとげんちゃんは分かるけど、俺は別にイケメンじゃないんだけどな。
 普通だし、特に特徴もないのになあ。
 とっきーは、多少大げさな方がいいしそういうことにしておけって言うんだけどなんだか気が引ける。

「どうしたんだよ、蒼樹あおい。またぼーっとして」
「え? ああ、ごめん。考え事してた」
「考え事って割にはアホっぽい顔してたけど」
「失礼だな。確かにそこまで真剣に悩んでた訳じゃないけど」

 お客さんが少し途切れた時間帯、裏にあるバックヤードへ引っ込んで軽食を食べながら休憩してるところだった。
 お店を閉めた訳じゃないけど、今日は天気も悪いせいか客足が伸びていない。
 だから、順番に休憩を取ってしまうことにした。

 普段も合間に少し休憩を入れたりするけど、その時はお互いに仕事をカバーしながら少しずつ休憩を取っていた。

「いや、なんかイケメンって括りにされたのが気になって」
「それまだ気にしてたのか? 不細工って言われるよりイケメンって言われた方がいいだろ」
「んー……お店的にはアリかもしれないけどさ。とっきーやげんちゃんは分かるけど、俺は違うし」

 サンドイッチをかじりながら息を吐いてから顔を上げると、俺の顔を覗いていたらしいげんちゃんの顔が目の前にあって驚く。

「うわっ!」
「驚かせたか? 悪い」

 バランスを崩して椅子から落ちそうになったけど、げんちゃんが支えてくれたから何とか堪えて体勢を戻す。

「いや、大丈夫。今、とっきーと話してたんだよ。俺は別にイケメンじゃないって」
「なあ、寡黙なイケメンって評判のげんちゃんも言ってやれって。蒼樹もカッコイイってさ」

 とっきーがげんちゃんを軽くこぶしで小突くと、げんちゃんは小さく頷く。

「そうだな。蒼樹はカッコイイし可愛いぞ」
「はあ? いや、男に可愛いって何?」
「あー……それ言っちゃう? 俺はあえて言わないようにしてたのに」

 とっきーが額に手を当ててため息を吐いた。
 どういうこと? とっきーも俺のこと可愛いとか思ってたって訳?

「励ますつもりがうまくできなかったか。でも、蒼樹は蒼樹だ」
「なーんか納得いくようないかないような……そりゃ、俺は体つきも貧弱だし取柄もないからな」
「ネガティブになるなって。玄暉げんきの言い方は下手だったけど、誉め言葉のつもりだったんだよ。多分」

 誉め言葉なのか?
 俺って頼りないってことだよな。
 いっつも助けられてばっかりだし、俺もたまには男らしくしないとダメか。

「分かった。じゃあ、俺もイケメンだってところを見せる」
「え? どういうこと?」
「俺もやればできるってこと。見てろよ、二人とも」

 げんちゃんは不安そうな顔をしてるし、とっきーは意味が分からないって顔してるけど……俺は決めた。
 次に来た新規の女性のお客さんに、俺のできるサービスを詰め込んで店の常連さんになってもらおう。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

処理中です...