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第二章 レトロ喫茶、オープンします

18.一日目の終わりに

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 閉店作業もほぼ終わった。
 売り上げをチェックしたけど、平日だったわりには客数も伸びたし順調だったと思う。

「二人ともありがとう。大繁盛とはいかなかったけど、お客さんが来てくれて良かった」
「俺としてはもっと若い人たちに来て欲しいもんだけどな。宣伝効果はまあまあだし、休日に期待するか」

 とっきーは賑わって欲しい派だったよな。
 俺は給料の最低ラインさえクリアすればいいと思ってるんだけど、それだと経営はギリギリになっちゃうか。

「忙しくなりすぎると、料理が間に合わなくなりそうだ」
「難しいこと以外は全員で分担すれば大丈夫じゃないかな。って、のんびりしすぎかな」
「それも含めて蒼樹だよな。別に大儲けしたい訳じゃないからいいけど」

 カウンター席へ座っているとっきーとげんちゃんの前にマスカットティーを出す。
 これはお気に入りの紅茶専門店で購入したものだ。
 砂糖を入れなくても甘いマスカットの香りと味わいが楽しめる。

蒼樹あおいはいつものんびりしてるよな。ホントに大丈夫か?」
「蒼樹の店だ。蒼樹の好きなようにするのが一番いい」
「ったく。玄暉げんきも少しは考えて欲しいもんだが……期待しても仕方ないか。でも、儲からなければ店を閉めないといけないんだぞ? リニューアル代だって多少かかってるし」

 とっきーはぶつぶつ言ってるけど、その通りだから何も言えない。
 今は特に妙案があるって訳じゃないから、とにかく店を開くしかないよな。

「俺も店が潰れるのは困るから、頑張って稼がないといけないな」
「蒼樹、無理するな。俺たちは大丈夫だから」
「そうやって、すーぐ蒼樹を甘やかすんだよなぁ」

 げんちゃんは優しく俺をサポートしてくれるし、とっきーはぼんやり考えている俺をきっちり支えてくれる。
 俺も二人に答えられるように頑張らないとな。

「常連さんは時々寄ってくれそうな感じだったし、新規のお客さんをどうやって取り込むかって感じだよな」
「玄暉の手作りデザートをサイトに載せて宣伝してるし、俺の知り合いにも拡散してもらってる。じわじわ効果が出るといいんだけどな」
「とっきーは元々フォロワーさんもたくさんいるって言ってたもんな。公式サイトも宣伝してもらってるし……ありがとな」

 笑いながら礼を言うと、とっきーはたいしたことねぇよって言いながらカップを傾けてる。
 もしかして、照れてるのか?

鷺羽ときはは、色々策を巡らせるのが得意だよな」
「玄暉……お前、それ褒めてないからな」

 とっきーはげんちゃんにツッコミを入れてる。
 遠慮せずにみんなでなんでも言い合える関係っていいよな。

「二人とも、今日は一日お疲れ様でした。また明日からもよろしくな」
「ああ。蒼樹もゆっくり休むんだぞ」
「そうだな。蒼樹と一緒に店を盛り上げていかないとな」
 
 三人で紅茶を飲みながら笑い合う。
 一日目を無事に乗り越えたし、この調子で頑張らないとな。
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