レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第二章 レトロ喫茶、オープンします

15.一番ノリは自治会長さん

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 自治会長さんは嬉しそうな顔をしながら店の中へ入ってきた。
 オープン時間に店の前で待っててくれるなんてありがたいよな。

「お、早速お客様か……いらっしゃいませ」

 とっきーは俺の後ろから入ってきた自治会長さんにすぐに気づいて、カウンターへ案内してくれる。
 自治会長さんは大体カウンターに座ってたからな。
 一人で来たお客様はカウンターへ座ることも多いけど、自治会長さんは自分の指定席だと言わんばかりに俺の目の前の席へ座った。
 
「ふむふむ。懐かしいな。ついこの前までただっちゃんが店を開いてた気がするけど、もう一年近く開いてなかったもんなぁ」
「じいちゃんが入院してからは店を閉めてましたからね。また来てもらえて嬉しいです」
「そうか。しかし蒼樹あおい君が店を継いでくれるんなら、ただっちゃんも喜んでるだろうよ」
「それならいいんですけどね」

 話しながら、会長さんのためにコーヒーの準備を始める。
 会長さんはプラコレブレンドを飲みながら、じいちゃんとお喋りしてたからな。
 今はじいちゃんじゃなくて俺なんだけど、嬉しそうに話してくれてるのを見ると店を継いで良かったなって改めて思う。

 作業しながら自治会長さんと話していると、扉のベルがカランカランと鳴った。

「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「オープン待ってたのよ、ご飯食べに来ちゃった」
「そうでしたか。今の時間はモーニングもやってますよ。どうぞ、窓際の席へご案内します」
「ありがとう」

 入ってきたのは良く店に来てくれてた常連さんだ。
 五十代くらいの女性と、娘さんらしい三十代くらいの女性二人組だ。
 とっきーは水とおしぼりを運んで、スラスラとモーニングメニューの説明をしてる。

 接客業はコンビニでバイトしてたのは知ってたけど、飲食の仕事でも問題なくスムーズに接客してるよな。
 さすがとっきー。
 なんでもそつなくこなすよなぁ。

「お、そういや朝飯食べてなかったな。蒼樹君、私もこのトーストとサラダのセット頼むよ」
「かしこまりました。コーヒーはセットにしておきますね。と……一路いちろさん、モーニングのトーストセットこちらも追加で」
「了解、マスター」

 とっきーは俺の側を通りすぎながら、楽しそうに笑う。
 隣を通り過ぎる瞬間、小声でその呼び方慣れねぇなって言いながらげんちゃんに注文を伝えにいった。
 コーヒーを頼まれなかったから、窓際の常連さんは冷たい飲み物を頼んだのかもしれない。

「たくさんお客さんがくるといいな。でも、混みすぎちゃって私の居場所を取られちゃうのも困るか」
「それならありがたいんですけど、残念ながら座れなくなるほど混んだりしないと思いますよ」

 自治会長さんに笑いかけて、プラコレブレンドを出す。
 会長さんは香りを堪能してから、嬉しそうにカップへ口付けた。
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