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第二章 レトロ喫茶、オープンします
14.ついにオープン!
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淹れたてのコーヒーの味を確かめるために、ブラックのまま口付ける。
コロンビアだから、誰でも比較的飲みやすい苦さだ。
でも、俺なら砂糖とミルクを入れて甘めにして飲む方が好きだ。
俺はブラックじゃないコーヒーを飲むなとか言わないし、むしろ好きなように飲んでもらいたいって思ってるから飲み方は人それぞれなんじゃないかと思う。
「さすが蒼樹、完璧だ」
「げんちゃん、それは褒め過ぎだって」
「先に点数稼ぎしやがって。俺だって蒼樹が淹れてくれたってだけで嬉しいんだからな」
「とっきー、そんなツンデレみたいな言い方しなくっても分かってるって。ありがとな」
二人に褒められるのは普通に嬉しい。
人間は単純だし、幼なじみの二人から褒められると自信が持てるよな。
俺はこの店のマスターなのに、コーヒー淹れるのが下手じゃ恰好付かない。
「これを飲んだら、作業の続きだな。あー……緊張してきた」
「蒼樹が緊張する理由なんて欠片もないだろ。朝から行列ができるほど客が来るわけないし、むしろ客が誰も来ない可能性すらある」
「ゆっくりとした時間を過ごしてもらう喫茶店にしたいのなら、無理をする必要はない。じっくりいこう」
言い方は違うけど、とっきーとげんちゃんも俺のことを励ましてくれてるんだよな。
いい意味の緊張感だと思って、ここまで来たらやるしかない。
「二人とも、ホントに感謝してる。まだ始まってないのに感謝は早いかもしれないけど……一人だったら俺、くじけてたかもしれないから」
「心配するなって。蒼樹にはいつも俺が……俺たちがついてるから」
「ああ。蒼樹のためだったらなんでもする」
「俺も二人にいっぱい給料を払えるように働かないとな。よし、準備しよう」
コーヒーを飲み終えた順に席を立って、コーヒーカップや器具を一旦片づける。
とっきーはレジ開け、げんちゃんは料理の下ごしらえの続きで俺は二人の仕事の最終チェックと自分の担当部分のカウンター内のチェックだ。
全員初めてだったけど、俺たちのチームワークで各自のポジションを確実にこなしていく。
こういうのがワンチームってやつなのかもしれないな。
+++
「さ、オープンするぞ」
「了解!」
「ああ」
ロールスクリーンを開けた店内は、陽の光も入ってきて明るい。
一階は古くて傷んでしまったもの以外はじいちゃんの店そのままだから、常連さんも安心して過ごしてもらえるはずだ。
今日はじいちゃんの好きだったジャズを店内BGMで流しながら、レトロな雰囲気を楽しんでもらう。
俺は店を開けるために出入口の扉のカギを開けて押し開く。
外に繋がる扉にはベルがついていて、押す度にカランカランと音が鳴る。
扉に備え付けのフックに鎖でぶら下げてあった札を、クローズからオープンへとひっくり返す。
オープンを待ってる人なんていないかと思ったけど、じいちゃんの友だちの自治会長さんが笑顔で入り口の前に立って待っていてくれた。
「会長さん! いらっしゃいませ。どうぞ」
「張り切って朝から来たよ。一番のりできたから、ただっちゃんも喜んでくれてるだろ」
「そうですね。じいちゃんも喜んでると思います」
ただっちゃんはじいちゃんのあだ名だ。
じいちゃんは正だから、みんなにただっちゃんって呼ばれてたんだよな。
コロンビアだから、誰でも比較的飲みやすい苦さだ。
でも、俺なら砂糖とミルクを入れて甘めにして飲む方が好きだ。
俺はブラックじゃないコーヒーを飲むなとか言わないし、むしろ好きなように飲んでもらいたいって思ってるから飲み方は人それぞれなんじゃないかと思う。
「さすが蒼樹、完璧だ」
「げんちゃん、それは褒め過ぎだって」
「先に点数稼ぎしやがって。俺だって蒼樹が淹れてくれたってだけで嬉しいんだからな」
「とっきー、そんなツンデレみたいな言い方しなくっても分かってるって。ありがとな」
二人に褒められるのは普通に嬉しい。
人間は単純だし、幼なじみの二人から褒められると自信が持てるよな。
俺はこの店のマスターなのに、コーヒー淹れるのが下手じゃ恰好付かない。
「これを飲んだら、作業の続きだな。あー……緊張してきた」
「蒼樹が緊張する理由なんて欠片もないだろ。朝から行列ができるほど客が来るわけないし、むしろ客が誰も来ない可能性すらある」
「ゆっくりとした時間を過ごしてもらう喫茶店にしたいのなら、無理をする必要はない。じっくりいこう」
言い方は違うけど、とっきーとげんちゃんも俺のことを励ましてくれてるんだよな。
いい意味の緊張感だと思って、ここまで来たらやるしかない。
「二人とも、ホントに感謝してる。まだ始まってないのに感謝は早いかもしれないけど……一人だったら俺、くじけてたかもしれないから」
「心配するなって。蒼樹にはいつも俺が……俺たちがついてるから」
「ああ。蒼樹のためだったらなんでもする」
「俺も二人にいっぱい給料を払えるように働かないとな。よし、準備しよう」
コーヒーを飲み終えた順に席を立って、コーヒーカップや器具を一旦片づける。
とっきーはレジ開け、げんちゃんは料理の下ごしらえの続きで俺は二人の仕事の最終チェックと自分の担当部分のカウンター内のチェックだ。
全員初めてだったけど、俺たちのチームワークで各自のポジションを確実にこなしていく。
こういうのがワンチームってやつなのかもしれないな。
+++
「さ、オープンするぞ」
「了解!」
「ああ」
ロールスクリーンを開けた店内は、陽の光も入ってきて明るい。
一階は古くて傷んでしまったもの以外はじいちゃんの店そのままだから、常連さんも安心して過ごしてもらえるはずだ。
今日はじいちゃんの好きだったジャズを店内BGMで流しながら、レトロな雰囲気を楽しんでもらう。
俺は店を開けるために出入口の扉のカギを開けて押し開く。
外に繋がる扉にはベルがついていて、押す度にカランカランと音が鳴る。
扉に備え付けのフックに鎖でぶら下げてあった札を、クローズからオープンへとひっくり返す。
オープンを待ってる人なんていないかと思ったけど、じいちゃんの友だちの自治会長さんが笑顔で入り口の前に立って待っていてくれた。
「会長さん! いらっしゃいませ。どうぞ」
「張り切って朝から来たよ。一番のりできたから、ただっちゃんも喜んでくれてるだろ」
「そうですね。じいちゃんも喜んでると思います」
ただっちゃんはじいちゃんのあだ名だ。
じいちゃんは正だから、みんなにただっちゃんって呼ばれてたんだよな。
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