レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです~ぼんやり無自覚マスターと幼なじみ同士のじれじれ恋愛トライアングル~

めーぷる

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第一章 レトロ喫茶のマスター、はじめます

4.二階をリノベーション

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 二階をリノベするって決めてから数日後、俺たちはホームセンターと百均へ買い出しに行った。
 まずは三人で大掃除をしてから、再利用できるものは再利用して古くなった壁紙は新しく貼り直した。
 レトロ喫茶の風合いは残しながら、だけど受け入れやすい流行りのレトロを取り入れてみた。
 清潔感のあるレトロって言えば分かりやすいのかもしれない。

「よし、これでいいだろ! めっちゃ疲れたわー」
鷺羽ときはは口ばっかりで大して動いてなかった」
「だよなー。重たいものは全部げんちゃんにやらせてた」

 俺とげんちゃんでとっきーを責めると、とっきーはあのなぁ、って何かを言いかける。

「俺だって頑張ってたっつーの。ボランティアで働いてやってるのに酷いマスターだな」
「とっきーだって俺だけ狙ってんじゃん。そうだな、お礼に冷たい飲み物を持ってくるよ」

 俺は二人を残して一階に下りて、飲み物の準備を始める。
 ちょうど冷蔵庫に作り置きの水出しコーヒーがあったはずだ。

「あったあった。作っておいて正解だったな」

 コーヒーを少し細かく挽いておいて、夜のうちに冷蔵庫へ入れておけば朝にできてるから便利だ。
 普段気軽に飲むのにはピッタリだと思う。
 今日のコーヒーは余った豆同士をブレンドしてるから、何を入れていたのかは忘れてしまった。
 後は氷を入れたグラスを三つ、ガムシロとミルクもトレーへ並べておく。

「後はおしぼりも一応持っていくか」

 全てトレーに乗せてから、二階へと続く階段を上っていく。
 階段をあがりきると、待っていたげんちゃんがトレーを受け取ってくれた。
 
「サンキュー。じゃあ一休みしようぜ」

 言いながら、とっきーはさっさと椅子に座る。
 相変わらず行動が早い。
 
「そうだな。二人ともありがとう。リノベも無事に終わったことを祝いまして、乾杯!」
「乾杯」

 グラスを軽く鳴らして乾杯する。
 冷えたアイスコーヒーは、熱い身体に染みわたる。
 俺もたまにはと思ってそのままブラックで飲んでみたけど、やっぱり甘い方が好みだからガムシロとミルクをさっさと足してしまった。
 ストローでぐるりとかき混ぜてから口付ける。

「んー。うまい」
「染みわたるー! これ、お代わりもあんの?」
「……鷺羽は図々しい」

 げんちゃんがぼそっとツッコミを入れたから、おかしくなって吹き出した。
 確かに昔からとっきーは調子の良いことが多かった。
 それもいつも周りを見て観察してるからこそ、なんだけどな。

「それくらいいいだろ? 図々しいのは蒼樹あおいだ」
「俺? 俺はじいちゃんから店を継がせてもらっただけだぞ」

 俺が笑ってると、ストローでくるくるとかき混ぜていたとっきーがグイっとグラスを突き出してきた。
 
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