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自作品番外編
クキワカメ<月下と陽光の魔法使い>
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最近ミューンは変なものにハマっている。
異国の食べ物らしいが、クキワカメというらしい。
なんでも、集中力を高めるのにいいそうだ。
「シルヴァ、お前も食べてみれば分かる」
「絶対分からないだろ。どうみても旨そうに見えない」
「いいか、シルヴァ。この食材は噛めば噛むほどに味わい深く、それでいて魔法を行使するうえでの活性化にすぐれていてだな」
「あー……分かった。食べてみればいいんだろ?」
俺はミューンが大事そうに抱えている袋から、クキワカメを摘まんで口の中へ放り投げる。
予想通り味が薄い。だが、ほのかな酸味はエールとの相性がよさそうだ。
噛み応えは確かに癖になりそうな気がする。
「どうだ、お前も気に入ったか?」
「気に入るというほどでもないが……悪くはない」
「そうだろう、そうだろう」
ミューンは満足げに何度も頷いて見せる。
コイツの妙なこだわりは俺にとっては不思議以外何者でもないのだが、不快だとは思わない。
俺のようにあまりこだわりがないより、よほどマシだ。
「どうした、シルヴァ」
「いや。お前のことを少しうらやましく思っただけだ」
「そうか? まあ、俺はお前とは違って知的でありかつ、知識の面においても……」
「分かってるよ。だから、長く喋るな。これでも食っておけ」
先ほどより乱暴にクキワカメを掴むと、ミューンの口の中に詰め込んでやった。
むぐぐ! と慌てる様子を見て、おかしくなって笑う。
ミューンは癖があるが、時々見せる仕草を見ていると心が安らぐ。
コイツの隣にいれば、俺はいつでも笑っていられそうだ。
異国の食べ物らしいが、クキワカメというらしい。
なんでも、集中力を高めるのにいいそうだ。
「シルヴァ、お前も食べてみれば分かる」
「絶対分からないだろ。どうみても旨そうに見えない」
「いいか、シルヴァ。この食材は噛めば噛むほどに味わい深く、それでいて魔法を行使するうえでの活性化にすぐれていてだな」
「あー……分かった。食べてみればいいんだろ?」
俺はミューンが大事そうに抱えている袋から、クキワカメを摘まんで口の中へ放り投げる。
予想通り味が薄い。だが、ほのかな酸味はエールとの相性がよさそうだ。
噛み応えは確かに癖になりそうな気がする。
「どうだ、お前も気に入ったか?」
「気に入るというほどでもないが……悪くはない」
「そうだろう、そうだろう」
ミューンは満足げに何度も頷いて見せる。
コイツの妙なこだわりは俺にとっては不思議以外何者でもないのだが、不快だとは思わない。
俺のようにあまりこだわりがないより、よほどマシだ。
「どうした、シルヴァ」
「いや。お前のことを少しうらやましく思っただけだ」
「そうか? まあ、俺はお前とは違って知的でありかつ、知識の面においても……」
「分かってるよ。だから、長く喋るな。これでも食っておけ」
先ほどより乱暴にクキワカメを掴むと、ミューンの口の中に詰め込んでやった。
むぐぐ! と慌てる様子を見て、おかしくなって笑う。
ミューンは癖があるが、時々見せる仕草を見ていると心が安らぐ。
コイツの隣にいれば、俺はいつでも笑っていられそうだ。
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