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お兄さんと猫
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クボキリツさん(@kbk_Ritsu)の描かれたフリーイラストをお借りしてイメージしたお話を書かせていただきました。
リツさん、ありがとうございます!
素敵なイラストはこちら↓
+++
お兄さんは傘を差したまま、しゃがんでボクを見ていた。
見た目は少し怖いけれど、眼差しは優しいお兄さんだ。
「お前、腹空いてないか? 買ってきたんだけど……食える?」
差し出されたのはボクの好きなおやつだ。
差し出されるまま、パクリとかぶりついた。
「良かった。飯は食えるみたいだな。しっかし、この雨の中にこんなところにいたら風邪引くよな? どうしよ……俺んち来るか?」
お兄さんは優しく手を差し出してくれる。
どうしようか? この手を掴めばきっと暖かいところへ連れて行ってもらえそうだ。
だけど……甘えていいのだろうか。
お兄さんはボクを連れて行って、怒られたりしないだろうか?
「お、怖がられなかった。俺、大体怖がられちまうんだけど……良かった。じゃあ、帰ろう」
お兄さんに抱っこされて、お兄さんの家まで連れていかれる。
お兄さんのお家は広くはないけど、キレイに片づけてあった。
部屋の端っこにはギターが置いてあるから、もしかしたらバンドマンなのかもしれない。
お兄さんと一緒にお風呂に入って、身体も洗ってもらった。
ボクはキレイにしてもらえて、一緒のベッドへ寝かされる。
「お前……名前なんていうの? なかったら俺が付けてもいいかな。じゃあ……テン」
名前まで付けてくれた。カッコイイ名前だ。
お兄さんに撫でてもらっていたら、だんだん眠くなってきた。
「お前、大人しくていいこだな。俺も眠くなってきた。おやすみ、テン」
お兄さんにすり寄る。お兄さんに出会えたのは幸せだ。
ボクも何か恩返しできたらいいのに……。
+++
次の日、目覚めたらお兄さんがビックリしてた。
ボクは首を傾げたんだけど……なんだか不思議な感じ。
「テン……だよな? 待って、俺まだ寝ぼけてる?」
お兄さんは思い切りほっぺたをつねったけど、すごく痛そうだ。
ボクは心配になってお兄さんに近づく。
「お兄さん、そんなにつねったら痛いよ……」
ぺろぺろとほっぺたを舐めると、お兄さんはみるみるうちに顔が真っ赤になってくる。
あれ? ボクの声がお兄さんにも聞こえるのかな?
「テン……お前、猫じゃなくって人間? いや、でも耳は猫か? じゃなくって! えぇぇー!」
「ん、ボクは猫だよ……って、あれれ?」
そう、ボクは猫だったのになぜかお兄さんと同じ人間になっていたのだ!
でもお兄さんに恩返ししたかったし……これでいいのかもしれない。
「よく分かんないけど、お兄さんこれからよろしくね」
「いや……でも、人間になっても可愛いとか反則……」
お兄さんは驚いていたけど、結局ボクをなでなでしてくれた。
これから一緒に暮らせるだなんて、すごく楽しみだなぁー。
おしまい♡
リツさん、ありがとうございます!
素敵なイラストはこちら↓
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お兄さんは傘を差したまま、しゃがんでボクを見ていた。
見た目は少し怖いけれど、眼差しは優しいお兄さんだ。
「お前、腹空いてないか? 買ってきたんだけど……食える?」
差し出されたのはボクの好きなおやつだ。
差し出されるまま、パクリとかぶりついた。
「良かった。飯は食えるみたいだな。しっかし、この雨の中にこんなところにいたら風邪引くよな? どうしよ……俺んち来るか?」
お兄さんは優しく手を差し出してくれる。
どうしようか? この手を掴めばきっと暖かいところへ連れて行ってもらえそうだ。
だけど……甘えていいのだろうか。
お兄さんはボクを連れて行って、怒られたりしないだろうか?
「お、怖がられなかった。俺、大体怖がられちまうんだけど……良かった。じゃあ、帰ろう」
お兄さんに抱っこされて、お兄さんの家まで連れていかれる。
お兄さんのお家は広くはないけど、キレイに片づけてあった。
部屋の端っこにはギターが置いてあるから、もしかしたらバンドマンなのかもしれない。
お兄さんと一緒にお風呂に入って、身体も洗ってもらった。
ボクはキレイにしてもらえて、一緒のベッドへ寝かされる。
「お前……名前なんていうの? なかったら俺が付けてもいいかな。じゃあ……テン」
名前まで付けてくれた。カッコイイ名前だ。
お兄さんに撫でてもらっていたら、だんだん眠くなってきた。
「お前、大人しくていいこだな。俺も眠くなってきた。おやすみ、テン」
お兄さんにすり寄る。お兄さんに出会えたのは幸せだ。
ボクも何か恩返しできたらいいのに……。
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次の日、目覚めたらお兄さんがビックリしてた。
ボクは首を傾げたんだけど……なんだか不思議な感じ。
「テン……だよな? 待って、俺まだ寝ぼけてる?」
お兄さんは思い切りほっぺたをつねったけど、すごく痛そうだ。
ボクは心配になってお兄さんに近づく。
「お兄さん、そんなにつねったら痛いよ……」
ぺろぺろとほっぺたを舐めると、お兄さんはみるみるうちに顔が真っ赤になってくる。
あれ? ボクの声がお兄さんにも聞こえるのかな?
「テン……お前、猫じゃなくって人間? いや、でも耳は猫か? じゃなくって! えぇぇー!」
「ん、ボクは猫だよ……って、あれれ?」
そう、ボクは猫だったのになぜかお兄さんと同じ人間になっていたのだ!
でもお兄さんに恩返ししたかったし……これでいいのかもしれない。
「よく分かんないけど、お兄さんこれからよろしくね」
「いや……でも、人間になっても可愛いとか反則……」
お兄さんは驚いていたけど、結局ボクをなでなでしてくれた。
これから一緒に暮らせるだなんて、すごく楽しみだなぁー。
おしまい♡
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