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☆らぶらぶ戦隊・稼ぐんジャー
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僕は新米冒険者! 冒険者になったばかりで不安だと相談したら、ギルドからおススメのパーティーを紹介された。
その名も「らぶらぶ戦隊・稼ぐんジャー」
名前だけ聞くと不安しかないけど、攻守もしっかりとしているパーティーらしい。
ただ一つだけ注意を受けたのが、そのパーティーと夜まで一緒にいるのはやめた方がいいと釘を刺された。
昼の間だけ一緒に連れて行ってもらい、夜までには街へ帰ってくるようにと。
ギルドの人が言っている意味はよく分からなかったけど、早速稼ぐんジャーの人たちとの待ち合わせ場所へ移動した。
+++
「やあやあ! 待っていたよ、新人くん! 私はレッドだ。よろしくね」
満面の笑みで迎えてくれたのは、明るいパーティーリーダーのレッドさんだ。
握手を交わしたけど、筋肉が凄くて手が握りつぶされそうだった。
「俺はブルーだ。で、コッチの暗い奴はブラック。そこでむしゃむしゃ食ってるのがイエローだ」
「……よろしく」
「もごもごー(よろしくー)」
背の高いブルーさんの隣には、分厚い本を片手に真っ黒なフード付きローブを被ったブラックさん。
レッドさんとは違って、大きいけどふくよかなイエローさん。
見た感じは別に不審な感じもないし、個性豊かなパーティーに見える。
「初めまして、駆け出し初心者です。よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をすると、僕のことはピンクと呼ぶと言われた。
なんでもこのパーティーは色の名前を名乗ることによって、各自バフ(能力アップ)が入るらしい。
「さて、今日は採取へ行くとしよう」
「了解。そうと決まれば、さっさとキノコでも狩りに行こうか。あの森の中に生えてたよな」
レッドさんの指示とブルーさんの促しで、ブラックさんが何やら呪文のようなものを唱えはじめた。
レッドさん曰く、美味しいキノコがたくさん生えている場所を探しているらしい。
「見つけた。今いる場所より西へ。ここから近いが、途中に魔物が十匹以上いるな」
「分かった。まず俺が様子を見てくる」
ブルーさんはそう言うと、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
僕たちはゆっくりとついて行けばいいと言われたので、大人しくレッドさんたちについていく。
しばらく歩くと、ブルーさんが華麗な蹴りでコボルトを一匹蹴り飛ばしていたところだった。
「おお、やっと来たか。お前らも手伝え。キノコはすぐ近くにあるが、こいつらが邪魔だ」
「まかせておけ! 行くぞ、みんな! まずは……レッドスーパーミラクルウルトラパァーンチッッ!」
「……稲妻よ、邪悪なるものへ降り注げ! 天雷!」
よく分からないけど、僕があわあわしているうちに敵は次々と減っていく。
一応剣は構えて見たけど、目まぐるしく動くブルーさんと元気よく謎の技名を叫びながら敵を吹き飛ばすレッドさんを見ているだけで目が回る。
ブラックさんはブツブツと呪文らしきものを唱えながら、雷をガンガン落としているみたいだ。
「おぉっと。危ないど」
横から襲い掛かってきたコボルトに反応できないでいると、のっそりと動いたイエローさんが背中に背負っていた大きな斧を振って吹き飛ばしてくれた。
しかも、一緒に何匹ものコボルトが吹き飛んでいく。
「あ、ありがとうございます……」
「うん。もうちょっと待っててな」
イエローさんも戦闘に加わると、コボルトの群れは数分で倒されていた。
コボルトはみんな魔石へと変わっていき、僕はその魔石を集めていく。
パーティーに混ぜてもらったおかげで、僕のレベルまで何もしていないのに上がっているのが分かり嬉しくなる。
「良かった良かった。レベルアップしたみたいだね? では引き続きキノコを採取しようか」
「はい! ありがとうございます、みなさん。よろしくお願いします」
僕は促されるままにキノコも採取し、夜も更けてきたからとキノコ鍋までごちそうになったのだけど……これがいけなかったみたいだ。
嬉しくなってしまって、ギルドで言われたことを忘れて夜まで過ごしてしまったんだ。
このパーティーに『ピンク』がいない理由。それは――
+++
「久しぶりのピンクを堪能できて嬉しいよ。ピンクは私たちのやる気の源だからね。みんな何でか遠慮してすぐに帰ってしまうから、夜まで一緒にいてくれたのは久しぶりだ」
「そうだな。っと、おいおい。そんなに力押ししたら、ピンクが壊れるだろう?」
「……ブルー、あなたは早すぎるんですよ。もっとじっくりねっとりいただかないと」
「んー、んー!(そうだどー)」
キノコ鍋を食べ終わると、急にふわふわしてきて身体がポカポカになってきたのだ。
ポカポカになったあとにぼんやりしてからは、何が起きたのかよく分からない。
気付いた時には一糸まとわぬ姿で、稼ぐんジャーの人たちに囲まれていた。
レッドさんから絶え間なく攻撃されて、ブルーさんに身体中素早く撫でまわされ……ブラックさんにじっと見つめられたまま、イエローさんに食べられている。
「僕たちがピンクを堪能したあとは、一緒に夜の街に繰り出そう! 僕らは稼ぐんジャーだからね! 僕らの他にもみんなピンクを待ってるよ!」
レッドさんの明るい声に、ふぁい……と情けない声で返事するのが精一杯だった。
<おしまい>
その名も「らぶらぶ戦隊・稼ぐんジャー」
名前だけ聞くと不安しかないけど、攻守もしっかりとしているパーティーらしい。
ただ一つだけ注意を受けたのが、そのパーティーと夜まで一緒にいるのはやめた方がいいと釘を刺された。
昼の間だけ一緒に連れて行ってもらい、夜までには街へ帰ってくるようにと。
ギルドの人が言っている意味はよく分からなかったけど、早速稼ぐんジャーの人たちとの待ち合わせ場所へ移動した。
+++
「やあやあ! 待っていたよ、新人くん! 私はレッドだ。よろしくね」
満面の笑みで迎えてくれたのは、明るいパーティーリーダーのレッドさんだ。
握手を交わしたけど、筋肉が凄くて手が握りつぶされそうだった。
「俺はブルーだ。で、コッチの暗い奴はブラック。そこでむしゃむしゃ食ってるのがイエローだ」
「……よろしく」
「もごもごー(よろしくー)」
背の高いブルーさんの隣には、分厚い本を片手に真っ黒なフード付きローブを被ったブラックさん。
レッドさんとは違って、大きいけどふくよかなイエローさん。
見た感じは別に不審な感じもないし、個性豊かなパーティーに見える。
「初めまして、駆け出し初心者です。よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をすると、僕のことはピンクと呼ぶと言われた。
なんでもこのパーティーは色の名前を名乗ることによって、各自バフ(能力アップ)が入るらしい。
「さて、今日は採取へ行くとしよう」
「了解。そうと決まれば、さっさとキノコでも狩りに行こうか。あの森の中に生えてたよな」
レッドさんの指示とブルーさんの促しで、ブラックさんが何やら呪文のようなものを唱えはじめた。
レッドさん曰く、美味しいキノコがたくさん生えている場所を探しているらしい。
「見つけた。今いる場所より西へ。ここから近いが、途中に魔物が十匹以上いるな」
「分かった。まず俺が様子を見てくる」
ブルーさんはそう言うと、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
僕たちはゆっくりとついて行けばいいと言われたので、大人しくレッドさんたちについていく。
しばらく歩くと、ブルーさんが華麗な蹴りでコボルトを一匹蹴り飛ばしていたところだった。
「おお、やっと来たか。お前らも手伝え。キノコはすぐ近くにあるが、こいつらが邪魔だ」
「まかせておけ! 行くぞ、みんな! まずは……レッドスーパーミラクルウルトラパァーンチッッ!」
「……稲妻よ、邪悪なるものへ降り注げ! 天雷!」
よく分からないけど、僕があわあわしているうちに敵は次々と減っていく。
一応剣は構えて見たけど、目まぐるしく動くブルーさんと元気よく謎の技名を叫びながら敵を吹き飛ばすレッドさんを見ているだけで目が回る。
ブラックさんはブツブツと呪文らしきものを唱えながら、雷をガンガン落としているみたいだ。
「おぉっと。危ないど」
横から襲い掛かってきたコボルトに反応できないでいると、のっそりと動いたイエローさんが背中に背負っていた大きな斧を振って吹き飛ばしてくれた。
しかも、一緒に何匹ものコボルトが吹き飛んでいく。
「あ、ありがとうございます……」
「うん。もうちょっと待っててな」
イエローさんも戦闘に加わると、コボルトの群れは数分で倒されていた。
コボルトはみんな魔石へと変わっていき、僕はその魔石を集めていく。
パーティーに混ぜてもらったおかげで、僕のレベルまで何もしていないのに上がっているのが分かり嬉しくなる。
「良かった良かった。レベルアップしたみたいだね? では引き続きキノコを採取しようか」
「はい! ありがとうございます、みなさん。よろしくお願いします」
僕は促されるままにキノコも採取し、夜も更けてきたからとキノコ鍋までごちそうになったのだけど……これがいけなかったみたいだ。
嬉しくなってしまって、ギルドで言われたことを忘れて夜まで過ごしてしまったんだ。
このパーティーに『ピンク』がいない理由。それは――
+++
「久しぶりのピンクを堪能できて嬉しいよ。ピンクは私たちのやる気の源だからね。みんな何でか遠慮してすぐに帰ってしまうから、夜まで一緒にいてくれたのは久しぶりだ」
「そうだな。っと、おいおい。そんなに力押ししたら、ピンクが壊れるだろう?」
「……ブルー、あなたは早すぎるんですよ。もっとじっくりねっとりいただかないと」
「んー、んー!(そうだどー)」
キノコ鍋を食べ終わると、急にふわふわしてきて身体がポカポカになってきたのだ。
ポカポカになったあとにぼんやりしてからは、何が起きたのかよく分からない。
気付いた時には一糸まとわぬ姿で、稼ぐんジャーの人たちに囲まれていた。
レッドさんから絶え間なく攻撃されて、ブルーさんに身体中素早く撫でまわされ……ブラックさんにじっと見つめられたまま、イエローさんに食べられている。
「僕たちがピンクを堪能したあとは、一緒に夜の街に繰り出そう! 僕らは稼ぐんジャーだからね! 僕らの他にもみんなピンクを待ってるよ!」
レッドさんの明るい声に、ふぁい……と情けない声で返事するのが精一杯だった。
<おしまい>
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