25 / 35
お題系ポスノベ
恋がはじまる日
しおりを挟む
※こちらは続き物の話になります。
一話分だけでもお読みいただけますが、プロポーズの話が続きになります。
+++
「好きです! 付き合ってください!」
「いや、だから……」
「一目見た時から好きでした!」
「えぇ……?」
僕は混乱していた。何故か僕の前には片膝を立ててバラの花束を差し出してくる美形の男がいるのだ。
見たところ高級そうなスーツを着込んだ彼は、道行く人たちも振り返るくらい人の目を惹きつけている。
ちなみに僕の記憶が正しければ、全く知らない人物だ。
一目見たという情報だけで、彼がどこで僕のことを知ったのかも説明されていない。
ただ、街中で突然告白されている状況についていけない。
「どなたか知りませんが……とりあえず移動しませんか?」
「それはOKということですか?」
「それとこれとは話は別です」
僕は辟易しながら、彼を無理やり立たせて人気のないところへ移動した。
+++
適当なカフェへ入って、落ち着くためにコーヒーを頼む。
花が可愛そうなので花束は受け取ることにしたけれど、花瓶は家にあっただろうか?
僕はしがない会社員で、普段は社畜のように働いている中間管理職だ。
確かに僕は恋愛対象に男性も含められるけれども、この展開は困る。
「常識をどこに置いてきたか知りませんが、こういうのは困ります」
「でも、一刻も早く伝えなくてはと思いまして。おかしいな……こういうのが良いと本で読んだのですが」
「どの本を読まれたのかは知りませんが、もっと別のやり方があると思いますよ」
「そう、でしょうか? でも、貴方を誰にも取られたくなくて……」
よく見れば瞳も黒ではなく濃いめの青に見える。どこかの外国の人なのだろうか?
会った覚えが本当にない。というか、これだけ整った顔ならば一度見たら分かりそうなものだけれど……。
僕が彼の顔を見ていると、彼のスマホが震え出したことに気付く。
「ああ……呼び出されてしまいました。でも、大丈夫。またきっと会えますから」
「え、それってどういう……」
僕が唖然としている間に、彼は笑顔で手を振って行ってしまった。
一体何だったのだろう……どっと疲れてしまった。
+++
それから数日後、彼の言っていたことがようやく理解できた。
最近ウチの会社は外国資本の会社と資本提携をしたという話が出ていたのだが、彼は提携先のCEOだったのだ。
いや、だからといって全くもって納得はできないのだけれど。
「だとしても、なんで僕に声をかけてきたんだ?」
「聞きたいですか?」
「へ……? うわぁ!」
気付くと噂の人物が背後に立っていて、ニコニコしながら僕を覗き込んできた。
驚いて数歩離れてから、お疲れ様ですとお辞儀する。
「どうしてここに?」
「うーん……たまたま?」
「いや、ここは従業員用の休憩室の一つで貴方が来るような場所でもないような……もしかして視察ですか?」
「まあ、そんな感じです。この会社で働いている方たちの様子を見るのも仕事ですから」
それについては理解できるが、この人距離感がバグってないか?
女性社員たちがキャーキャー言っているのが目に入らないのだろうか。
僕のような三十代半ばの男に話かけるのではなく、もっと若い女性の元へ行くべきだと思う。
それに、数歩離れたところにいる怖そうな男の人からの視線がものすごく痛い。
「そうだ。この後、空いてますか?」
「は?」
「ちょっとご相談があるのです。後で僕の部屋まで来てください」
「え? いや、待ってくださ……えぇ……?」
相変わらず一方的に話を進めて、ご機嫌な様子で去っていく。
ついていけずにぽかんとしていると、同じ部署の女性社員に囲まれてしまった。
「課長、あのCEOとお知り合いなんですか? すごーい! 今度飲み会のセッティングお願いします」
「いや、僕も正直よく分からなくて……はあ。言っておくけど連絡先だって知らないお偉いさんだからな」
「ええー? でも、課長と話しているとき楽しそうにしてましたよ。課長、楽しみにしてますから!」
とんでもないことに巻き込まれているのは気のせいだろうか?
そして、これが彼との付き合いのはじまりだったなんて。
恋は突然にはじまるとは言うけれど、この時の僕は面倒ごとに巻き込まれたとしか思っていなかった。
<続きます!>
一話分だけでもお読みいただけますが、プロポーズの話が続きになります。
+++
「好きです! 付き合ってください!」
「いや、だから……」
「一目見た時から好きでした!」
「えぇ……?」
僕は混乱していた。何故か僕の前には片膝を立ててバラの花束を差し出してくる美形の男がいるのだ。
見たところ高級そうなスーツを着込んだ彼は、道行く人たちも振り返るくらい人の目を惹きつけている。
ちなみに僕の記憶が正しければ、全く知らない人物だ。
一目見たという情報だけで、彼がどこで僕のことを知ったのかも説明されていない。
ただ、街中で突然告白されている状況についていけない。
「どなたか知りませんが……とりあえず移動しませんか?」
「それはOKということですか?」
「それとこれとは話は別です」
僕は辟易しながら、彼を無理やり立たせて人気のないところへ移動した。
+++
適当なカフェへ入って、落ち着くためにコーヒーを頼む。
花が可愛そうなので花束は受け取ることにしたけれど、花瓶は家にあっただろうか?
僕はしがない会社員で、普段は社畜のように働いている中間管理職だ。
確かに僕は恋愛対象に男性も含められるけれども、この展開は困る。
「常識をどこに置いてきたか知りませんが、こういうのは困ります」
「でも、一刻も早く伝えなくてはと思いまして。おかしいな……こういうのが良いと本で読んだのですが」
「どの本を読まれたのかは知りませんが、もっと別のやり方があると思いますよ」
「そう、でしょうか? でも、貴方を誰にも取られたくなくて……」
よく見れば瞳も黒ではなく濃いめの青に見える。どこかの外国の人なのだろうか?
会った覚えが本当にない。というか、これだけ整った顔ならば一度見たら分かりそうなものだけれど……。
僕が彼の顔を見ていると、彼のスマホが震え出したことに気付く。
「ああ……呼び出されてしまいました。でも、大丈夫。またきっと会えますから」
「え、それってどういう……」
僕が唖然としている間に、彼は笑顔で手を振って行ってしまった。
一体何だったのだろう……どっと疲れてしまった。
+++
それから数日後、彼の言っていたことがようやく理解できた。
最近ウチの会社は外国資本の会社と資本提携をしたという話が出ていたのだが、彼は提携先のCEOだったのだ。
いや、だからといって全くもって納得はできないのだけれど。
「だとしても、なんで僕に声をかけてきたんだ?」
「聞きたいですか?」
「へ……? うわぁ!」
気付くと噂の人物が背後に立っていて、ニコニコしながら僕を覗き込んできた。
驚いて数歩離れてから、お疲れ様ですとお辞儀する。
「どうしてここに?」
「うーん……たまたま?」
「いや、ここは従業員用の休憩室の一つで貴方が来るような場所でもないような……もしかして視察ですか?」
「まあ、そんな感じです。この会社で働いている方たちの様子を見るのも仕事ですから」
それについては理解できるが、この人距離感がバグってないか?
女性社員たちがキャーキャー言っているのが目に入らないのだろうか。
僕のような三十代半ばの男に話かけるのではなく、もっと若い女性の元へ行くべきだと思う。
それに、数歩離れたところにいる怖そうな男の人からの視線がものすごく痛い。
「そうだ。この後、空いてますか?」
「は?」
「ちょっとご相談があるのです。後で僕の部屋まで来てください」
「え? いや、待ってくださ……えぇ……?」
相変わらず一方的に話を進めて、ご機嫌な様子で去っていく。
ついていけずにぽかんとしていると、同じ部署の女性社員に囲まれてしまった。
「課長、あのCEOとお知り合いなんですか? すごーい! 今度飲み会のセッティングお願いします」
「いや、僕も正直よく分からなくて……はあ。言っておくけど連絡先だって知らないお偉いさんだからな」
「ええー? でも、課長と話しているとき楽しそうにしてましたよ。課長、楽しみにしてますから!」
とんでもないことに巻き込まれているのは気のせいだろうか?
そして、これが彼との付き合いのはじまりだったなんて。
恋は突然にはじまるとは言うけれど、この時の僕は面倒ごとに巻き込まれたとしか思っていなかった。
<続きます!>
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。



思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる