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自作品番外編
神様よりも強い魔塔主さま<風変わりな魔塔主と弟子>
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俺の部屋でテオと夕食を食べている時に、ふと城下町で聞いた話を思い出した。
グラスを傾けてお酒を嗜んでいるテオへ顔を向ける。
「テオは興味なさそうですけど、今日ちょっと切ない良いお話を聞いたんですよ」
「はぁ? アレか。まーた恋愛小説だかの話だろ」
「恋愛と言えばそうですが、少し違います。ここから遠い国に伝えられているお話ですよ」
「よくある言い伝えってヤツだろ。で、どんな話だ?」
珍しくテオが聞く気になってくれたので、聞いた話をかいつまんでテオへ話す。
夜空を流れる星の川の側に、働き者の女性が暮らしていた。
女性は、父である神様も認めるくらい熱心に働く女性だった。
働いてばかりで不憫だと思った神様が、同じく働きものの男性を女性の婿として紹介して引き合わせる。
二人は出会ってすぐに恋に落ちて夫婦として仲良く暮らし始めるが、二人は全く働かなくなってしまった。
「別に暮らしていけるんだったら、サボってたっていいだろ」
「それはテオの考えでしょう? 普通はサボったらダメなんです。神様の注意も聞き入れなかった二人は流れている川の西と東へ引き裂かれてしまいます。二人は悲しむばかりで余計に働くこともできなくなりました」
「それは考えなしに引き裂く神様ってヤツが悪いだろ」
「テオならそう言うと思いました。そこで困った神様は毎日真面目に働くのならば、一年に一度だけ二人を合わせてやろうと約束しました。その言葉を聞いた二人は、心を入れ替えて働くようになったんです」
俺が話している間も、楽しそうにニヤニヤとコッチを見てくるのが気になってしょうがない。
はぁと息を逃して、話を続ける。
「二人は一年に一度だけ会えるその日を楽しみに、頑張って働くんです。異国では二人の出会うその日に願い事を書いた紙を植物に飾るという風習があるそうですよ」
「願い事ねぇ。しっかし一年に一回しか会えねぇってのも、酷い話だよな。しかも合わせてやるから働けって言うんだろ? ただの脅しじゃねぇか」
「どうして捻くれた方に考えるんですか。頑張れば報われるってことでしょう? そのご褒美として大好きな人と会うことができるんですから」
俺が力説すると、テオはぷっと噴きだしてから俺の目をじっと見つめてくる。
口調はいつもふざけているのに、俺を見る瞳は真剣だから目が離せなくなってしまう。
「……なんですか」
「いや。もし俺とレイヴンだったら、神様の力なんて借りる必要もねぇよな」
「どういう意味ですか?」
俺が首を傾げると、テオはニッと笑いながらパチンと指を鳴らす。
気づいた時には、テオの膝の上に座らされしっかりと抱き込まれていた。
「もう! なんでこの距離で魔法を使うんですか」
「まぁだ分かんねぇのかよ。俺だったらこうやってレイヴンの側にいつでも行けるからな。問題ないってことだ」
「俺は別にそういうことを言いたかった訳じゃ……」
「良かったなァ? 俺が偉大な魔法使いで」
得意げにニヤニヤしながら、俺の頭を撫で回してるし。
この人は、いつも自分勝手だ。
我が道を進み、回りの人たちを振り回す。
だけど、俺のことだけは常に最優先で考えてくれてるのは分かる。
分からされてしまった、というのが正しいかもしれないけど。
テオの言う通り神様に引き裂かれたとしても、きっと俺の元へ来てくれるはずだ。
「そうですか。じゃあ、俺が呼んだらいつでも来てくださいね。テオ」
「あぁ。任せとけ」
神様よりも偉そうな魔塔主さまには誰も敵わないんだろうなと、俺もつられて笑ってしまった。
グラスを傾けてお酒を嗜んでいるテオへ顔を向ける。
「テオは興味なさそうですけど、今日ちょっと切ない良いお話を聞いたんですよ」
「はぁ? アレか。まーた恋愛小説だかの話だろ」
「恋愛と言えばそうですが、少し違います。ここから遠い国に伝えられているお話ですよ」
「よくある言い伝えってヤツだろ。で、どんな話だ?」
珍しくテオが聞く気になってくれたので、聞いた話をかいつまんでテオへ話す。
夜空を流れる星の川の側に、働き者の女性が暮らしていた。
女性は、父である神様も認めるくらい熱心に働く女性だった。
働いてばかりで不憫だと思った神様が、同じく働きものの男性を女性の婿として紹介して引き合わせる。
二人は出会ってすぐに恋に落ちて夫婦として仲良く暮らし始めるが、二人は全く働かなくなってしまった。
「別に暮らしていけるんだったら、サボってたっていいだろ」
「それはテオの考えでしょう? 普通はサボったらダメなんです。神様の注意も聞き入れなかった二人は流れている川の西と東へ引き裂かれてしまいます。二人は悲しむばかりで余計に働くこともできなくなりました」
「それは考えなしに引き裂く神様ってヤツが悪いだろ」
「テオならそう言うと思いました。そこで困った神様は毎日真面目に働くのならば、一年に一度だけ二人を合わせてやろうと約束しました。その言葉を聞いた二人は、心を入れ替えて働くようになったんです」
俺が話している間も、楽しそうにニヤニヤとコッチを見てくるのが気になってしょうがない。
はぁと息を逃して、話を続ける。
「二人は一年に一度だけ会えるその日を楽しみに、頑張って働くんです。異国では二人の出会うその日に願い事を書いた紙を植物に飾るという風習があるそうですよ」
「願い事ねぇ。しっかし一年に一回しか会えねぇってのも、酷い話だよな。しかも合わせてやるから働けって言うんだろ? ただの脅しじゃねぇか」
「どうして捻くれた方に考えるんですか。頑張れば報われるってことでしょう? そのご褒美として大好きな人と会うことができるんですから」
俺が力説すると、テオはぷっと噴きだしてから俺の目をじっと見つめてくる。
口調はいつもふざけているのに、俺を見る瞳は真剣だから目が離せなくなってしまう。
「……なんですか」
「いや。もし俺とレイヴンだったら、神様の力なんて借りる必要もねぇよな」
「どういう意味ですか?」
俺が首を傾げると、テオはニッと笑いながらパチンと指を鳴らす。
気づいた時には、テオの膝の上に座らされしっかりと抱き込まれていた。
「もう! なんでこの距離で魔法を使うんですか」
「まぁだ分かんねぇのかよ。俺だったらこうやってレイヴンの側にいつでも行けるからな。問題ないってことだ」
「俺は別にそういうことを言いたかった訳じゃ……」
「良かったなァ? 俺が偉大な魔法使いで」
得意げにニヤニヤしながら、俺の頭を撫で回してるし。
この人は、いつも自分勝手だ。
我が道を進み、回りの人たちを振り回す。
だけど、俺のことだけは常に最優先で考えてくれてるのは分かる。
分からされてしまった、というのが正しいかもしれないけど。
テオの言う通り神様に引き裂かれたとしても、きっと俺の元へ来てくれるはずだ。
「そうですか。じゃあ、俺が呼んだらいつでも来てくださいね。テオ」
「あぁ。任せとけ」
神様よりも偉そうな魔塔主さまには誰も敵わないんだろうなと、俺もつられて笑ってしまった。
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