めーぷる詰め合わせ<SS&短編集>

めーぷる

文字の大きさ
上 下
16 / 35

☆愛してるゲーム

しおりを挟む
 大学一年生の眼鏡くん。黒髪の静かな陰キャくんだ。
 一人でいるのが好きな子だけど、陽キャサークルの集まりに人数合わせで無理やり誘われて居場所がない。
 飲み会でも端の席でちびちびとカクテルを飲みながら気まずそうにしていた。

「なあ、愛してるゲームしようぜ」
「突然? じゃあ笑ったヤツはおごりな。じゃあ、俺から行くぞ。……愛してる」

 盛り上げ役がいきなりゲームを始めると、向かい側の席の彼もノリで言い始める。
 女の子たちがキャッキャ言う中、ますます困って縮こまる眼鏡くん。
 一人で赤くなってくると、彼の番が回ってきてしまう。

「ほら、言えよ。こういうのはノリだろ。折角の雰囲気台無しにするなよ」
「ご、ごめん……でも、言ったことないし……」

 ぼそぼそ言う眼鏡くんに、隣の陽キャが絡むようにグイっと肩を組んだところで上から影が差す。

「お前ら、相変わらずくだらない遊びしてんなあ」
「なんでいるんだよー」

 現れたのはサークルの顧問を務める講師。
 見た目は三十歳後半くらいの、普通のおじさんだ。
 彼は眼鏡くんを無理やり立たせると、ずるずると引っ張りだす。

「悪いけど、コイツ借りてくからな」
「えー? まあいいけどさ……」

 酒も入っているせいか他のメンバーもそこまで気にすることなく、眼鏡くんは講師に連れられて飲み屋のトイレの個室へと連れ込まれてしまう。

「まーた断れずにホイホイ着いてきたのか」
「ごめんなさい……おじさん」
「だから、おじさんって呼ぶな。まだ教育が足りてないな」
「大学ではちゃんと先生って呼んで……」

 眼鏡くんの唇は無理やり塞がれて黙らされる。
 水音が響けば、眼鏡くんはされるがままにふわふわし始める。

「あぅ……」
「兄貴もこんな素直で従順な子をなんでほったらかすんだか」
「お父さんは、忙しい人だから……あっ」

 おじさんは講師でもあり、本当に叔父でもある。
 眼鏡くんの父親は真面目でお堅いサラリーマンで家庭を顧みない。
 叔父は奔放で自由だが、頭は良く大学でも密かに人気がある講師だ。
 眼鏡くんの純粋さにつけこんで、血のつながった甥っ子を可愛がっている。
 彼も愛にすっかり溺れてしまって、叔父の言われるがままに身体を差し出して寂しさを埋めているのだった。

「もしかして、ここで?」
「怖かったら俺の中に入ってもいいんだぞ。そうすれば脱がなくても楽にできる」
「うん……ありがとう、おじさん」

 眼鏡くんは恍惚な表情でおじさんに絡みついて――
 

 end.
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

処理中です...