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第三章 自分のこと、これからのこと

54.ありのままの私で

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 次の日、私は出した答えを社長に伝えた。
 私はやっぱり、私らしく。
 何も縛られないで生きていきたい。

 社長は残念そうにしていたけど、伝えることができてホッとした。

「そっか。でも、ことりちゃんらしい。後は俺の家族を納得させれば問題ないんだけど」
「複雑だからな。書面を交わしておく方が無難だろう」
「そうですね。私は今後、一切関わりません、みたいな文面で構いません。家族を否定する訳ではなくて、いわゆるお金の問題は避けたいと思っているので」

 いつもの社長室で、三人で意見を言い合う。
 橘コーポレーションに関係がある人間だということは、社長のご家族と前回の食事会で会った方たちのみで、おじい様にも知られてはいないみたい。

 一番知られてはいけないのは、おじい様な気がするし。
 知られる前に手を打っておく必要があるはずだ。

「限りなく親子に近いですが、親子関係は証明せずにでいいと思うんですけど……」
「俺としては知りたい気持ちもあるけどね。うまく話しておくよ。ことりちゃんの気持ちをきちんと伝えておく」
「ありがとうございます、社長」

 寂しそうだけど、社長は笑顔で納得してくれたし。
 私も氷室さんと目線を交わして、ニッコリと微笑む。

「そういえば……もしかして、二人はついに付き合い始めたとか? なーんか、二人の間に漂う空気がさ、あまーい感じがするんだよね」

 いきなり話の矛先が、私と氷室さんに向く。
 悪戯っぽく笑う社長を見て、氷室さんが真下に冷ややかな目線を向けた。

「お前のそういうところが余計なお世話だと言っている。祝福したいのなら素直にそう言え。揶揄は受け付けない」

 キッパリと言い放っているけど、それ、ほぼ正解を言っているようなものなんですけど!
 氷室さんに、ちょっと! と、言ったところで、もう遅い。
 社長が目を丸くして、椅子に座ったまま身を乗り出してきた。

「マジで? へぇー! 何か、きっかけ作りも、背中を押したのも俺っぽくない? 感謝して欲しいくらいだね」
「何が感謝だ。お前の言い方だと、文句しか言われないと何度も注意しているのだが」
「氷室さん、社長のキャラクターですから。そんなに目くじら立てていると疲れちゃいますよ?」

 私が苦笑していると、社長が不満そうに口を尖らせる。

「何か、俺だけ仲間外れっぽくない? 最初にことりちゃんのことを可愛がってたのは俺なのに……って。秦弥、目がマジだって! 怖い怖い! 暴力反対!」

 慌てた社長が、冷ややかすぎる目線と雰囲気に耐えられなくなって、椅子に座ったまま後ずさりしていく。

 氷室さんは基本的に真面目なんだから、やめておけばいいのに。
 まあ、二人とも信頼関係の上でのやり取りだろうから、逆に微笑ましい感じ。
 少し、羨ましいかも。
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