上 下
23 / 83
第二章 社長のための期間限定パートナー

22.次に備えて

しおりを挟む
 パーティーのことは次の日出社した時に社長にも物凄く心配された。
 初めてだったから粗相はしたくなかったんだけど、まさか相手方からくるとは予想外だったし、あんな子どもじみたことをされるだなんて、それこそ思ってなかった。

「今日も休んでも良かったのに」
「そういう訳には行きません。身体に何かあった訳でもありませんし本来はもう少しご挨拶回りをしなきゃいけなかったのに……」

 私が思わずため息を吐いてしまうと、氷室さんも緩く首を振る。

「不可抗力だったと判断できるし、あの状態で留まることは不可能だった。社長がその代わりにいつもの倍は仕事をしたから安心してもらっていい」
「その言い方だといつも仕事をしてないみたいなんですけど」
「しているとでも?」
「はいはい。ホント手厳しいというか、妥協を許さないというか。だから氷とか言われるんだって言ってるのに」

 ぶつくさ言っている社長だけど、社長も怒ってくれていたし。
 これからもこういう目に合うのかもと思うとちょっと憂鬱な気持ちもあるけど、ただバカにされるのはちょっと悔しいし。

「逆にやる気が出たって感じ? なら良かったけど」
「やる気というか、何だか小馬鹿にされたままっていうのは嫌なので、地味で平凡でもやればできるんだぞってところを見せたいんです」
「その意気はとてもいいことだが、まずは社長のご家族への顔見せの日取りまでにまたどう動くかを見当する必要がある」

 ゆくゆくは婚約者という設定だけれど、勿論本当になるわけじゃない。
 社長は何かやりたいことがあって、後継者として身を固めろという親戚一同を大人しくさせるために私を隠れ蓑にする、ということみたい。

 ただ、納得させるには色々と根回しも必要で社長が今までふらふらとしてきたせいで親戚一同もきちんとした理由がないと納得させられないみたい。

 ……社長の自業自得な部分もかなりあると思うけど。
 でも、やりたいことがあるのなら頑張ろうって人は応援したい。
 私でいいのかは未だに疑問だけど、応援はしたいなって今は思ってるし。

「そうですね。私も勉強不足な部分をお仕事しながら埋めていかないと、ですね!」
「君は物覚えが悪いからな」
「ちょっと、ストレートに悪口ですよ? それ」
「小鳥ちゃんも今回のことで成長してるし。 覚える作業なら秦弥が教えられるでしょ」

 社長のご指名のせいで、副社長がつきっきりで教えてくれることになってしまった。

 社長……おもしろがってないよね?
 応援してくれているのならいいんだけど……若干怪しいんだよね。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜

玖羽 望月
恋愛
 親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。  なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。  そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。  が、それがすでに間違いの始まりだった。 鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才  何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。 皆上 龍【みなかみ りょう】 33才 自分で一から始めた会社の社長。  作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。 初出はエブリスタにて。 2023.4.24〜2023.8.9

俺に着いてこい〜俺様御曹司は生涯の愛を誓う

ラヴ KAZU
恋愛
静香はウブなアラフォー女子。過去のトラウマから恋愛が出来ない、そんな静香の目の前に真壁不動産御曹司真壁翔が現れ、猛烈なアタックが始まる。徐々に惹かれていく静香、そして静香のアパートにやって来た翔と結ばれる。ところがその直後翔はアメリカ支社勤務を命じられる事となった。三年で戻る、結婚しようと言葉を残したが戻って来ない、静香は妊娠が発覚し、産む決心を固める。五年後翔は日本に戻って来た。二人の子供翔太が電話したのである。 二人は入籍し、三人家族の生活が始まった。その矢先静香は体調を崩し入院する事になった。 実は一年前静香は病気が発覚しており、薬で治療していた。 翔は手術を勧めるが静香は首を縦に振ろうとはしない、後遺症で記憶障害を告知されていた。 二人の記憶が無くなるなんて死ぬより辛いと、涙ながらに訴える静香。 しかし、翔の説得で静香は手術を受けるのだが、果たして静香の記憶はどうなるのだろうか。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

処理中です...