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第一章 太陽の王子様と氷の王子様

4.出勤二日目の朝もこのやり取り?

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 顔合わせの初日は岬さんからお仕事内容の説明を聞いて、早めの帰宅になった。

「あぁもう……疲れた……」

 帰ってからは荷物も放って、クッションにボフッと沈み込む。
 緊張したし、もう何がなんだかで。

「不安しかないけど、あのまま言われっぱなしなのはもっと嫌」

 私はド素人だけど、それでもきちんとお仕事はしたかったから。
 ここで諦めることは簡単だし、いくらなんでもあの副社長が言うようにはならないかもしれないけど。

「それでも、できるかぎりやってやるんだから」

 くるりと回転して、天井を見つめる。
 両腕をあげて決意の拳を固めると、あの副社長の顔を思い浮かべながらシュッシュッと拳を打ち出す。

 何回か気が済むまでパンチして、ガバっと起き上がる。
 後は美味しいご飯でも食べて、明日に備えないと!

+++

 次の日も社長室にそのまま出勤でいいと言われたので、ノックして室内へと入る。
 中には岬さんがいて、私と目が合うとニコリと笑いかけてくれた。

「おはようございます」
「おはようございます。岬さん、早いんですね」
「今日はたまたま。いつも社長を迎えに行くのだけれど、無理しなくていいって言われているから」
「え、なら私が……」

 言いかけたところで扉が開く。
 副社長が開いた扉の奥から、社長が片手を上げて爽やかに笑んで室内に入ってきた。

「おはよう、岬ちゃん。ことりちゃん」
「おはようございます、社長。おはようございます、氷室さん」
「……おはようございます、社長。と、副社長」

 ペコと頭を下げると、またため息が聞こえてくる。

「私のことは役職名じゃなくて構わない。その役職は社長が適当によこしたものだから、氷室、で構わない」
「……その説明は初めてお聞きしました。すみません、今後は気をつけます」
「呼び方なんて別に適当でいいのに。俺のことだって、海音君でも……」
「良い訳ないだろう。公私の区別はつけろ」

 副社長……氷室さんがピシャリと言い放つと、社長が両肩を竦める。
 二人は話し合うことがあるとのことで、笑顔と仏頂面のまま奥の部屋へと行ってしまった。

「はぁ……毎日こんなやり取りをしているんですか?」
「小鳥さんと早く仲良くなりたいのかもしれないわね。社長は特に可愛らしい女性が好きだから」
「でも私、とても失礼なことを言われた気が……」
「社長は悪い人ではないけれど、思ったことをすぐ口に出すから。地味というのはあまり良い意味には聞こえないものね。清楚とか他にもっと素敵な言い方があるはずなのに。前に働いていた子は悪い子ではなかったのだけれど、少し派手めのファッションの子だったから」

 岬さんの話にますますよく分からなくなる。
 私が悩むような表情していたのが伝わったのか、岬さんが順番に説明するから、と苦笑しながら私に席を勧めた。

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