地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる

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第一章 太陽の王子様と氷の王子様

3.勢いのままに

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「待ってください! 私は元々事務職を希望していて、秘書と言われましても資格も持っていませんし、何をするのかも見当がつきません。急なことだとは伺っていましたが、私に務まるとは……」

 こんなことを言ってしまったら解雇されてしまうかも。
 でも、嘘を言っても仕方ないし急すぎてどうしていいかも分からない。

 私が戸惑っていると、岬さんが優しく手を取ってくれる。

「私が元々受け持っていて、別の子に引き継ぐ予定だったのだけれど……その子も急に辞めてしまって。そんな時に貴方が入社することが分かって。社長が貴方がいいと言って引っ張ってきたの。驚かせてごめんなさいね」
「社長が?」

 恐る恐る社長と言っていた橘さんを見る。
 苗字から言っても一族の御曹司みたいな人なんだろうけど……。
 笑顔は確かに愛らしくて、女性ならみんなぽーっとなるかもしれない。
 でも、私に今そんな余裕は全くない。

「これは会社の決定事項だ。君に拒否権はない。拒否をするということはそれなりの覚悟があると言うことになるが」

 隣にいた氷室さんがキッパリとした口調で言い切る。
 今どきその言い方って、パワハラじゃない?

 しかも高身長で威圧的だからちょっと怖いし。
 目つきだって鋭いし、名前通りに氷みたい。

「まあまあ。彼女だっていきなり言われたら心の準備だってできてない訳だし。岬さんが産休に入るまでまだ少し期間があるから基本的なことは教えてもらって。それから改めて考えてもらうってことで。どうかな?」
「はあ……」
「本当にこの子でいいのか? とても仕事ができるようには見えないが」

 ……言わせておけばめちゃくちゃ失礼な人!
 初対面でそこまで言うだなんて、どういう神経してるんだろう?

「あの、失礼ですが。人を見た目で判断するのはどうかと思います。それに、先程からの発言。パワハラだって言われても仕方ありませんよね? 氷室さん、でしたっけ。上司だからって言っていいことと悪いことってありますよね?」

 思わず勢いのまま啖呵を切ってしまうと、隣の岬さんも社長の橘さんもポカンとする。

 あ、私。
 やっちゃったかもしれない。

「ハハ……ハハハ! コイツにビビらないで逆に言い返す女の子、初めて見た! 大抵おどおどしちゃう子が多いのに」
「ふふ……小鳥さんはしっかりしているみたい。社長の見る目は確かだったみたいですね。氷室さん、折角の美形がまた台無しですよ?」

 黙っていた氷室さんが、はぁ、とうんざり顔でため息を吐いた。

「全く、言葉遣いだってなってない。やっぱり私は反対だが……社長が言うならば私は逆らえないし。好きにしてくれ。ただ、会社に取ってマイナスであると判断したら、ハッキリと言わせてもらう」
「まだ始まってもいないのに……。分かりました、私、やってみます!」
「うん。よろしくね、小鳥さん。でも折角仲良くするんだから、ことりちゃんって呼んでもいい?」

 ……それ、いっつも言われる腹立つあだ名。
 でも、それすら社長命令になるなら文句も言えないってこと?

 楽しそうな社長と、不機嫌な副社長。
 この二人に挟まれるの、大変そうだなぁ……。

 今は隣にいてくれる岬さんだけが、頼りかも。
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