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2巻
2-3
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侍女たちが音一つ立てずにお茶を用意していく。その間に、王太子殿下がパーシヴァルに声をかける。
「ベリサリオ君、ヴァンダーウォール卿はお元気かな?」
「はい、相変わらず兵たちの先頭で指揮を執っております」
「うん、そうか。ベリサリオは我が国の剣であり盾だ。その忠義に感謝していると、卿には伝えてほしい」
「身に余るお言葉、誠に光栄にございます。」
パーシヴァルは王太子殿下と面識があったんだな。
何しろヴァンダーウォール辺境伯領は、この国の要の一つと言っても過言じゃない場所だ。その地を護り続けているベリサリオ家を王家は蔑ろにはしない。
パーシヴァルはその辺境伯家子息だし、大きな行事では顔を合わすこともあったんだろう。
はぁ、それにしても、キラキラ王子様同士の対面だな。
こうして改めて見ると王太子殿下もなかなかのTHE・王子様だ。王冠のように輝く金の髪に、この国の象徴である太陽の瞳。
その上優秀なんだから、そりゃぁ殿下の妃にと思うご令嬢や、娘をぜひお側にと思う家は多いだろう。
スペンサー侯爵夫人の無念も、理解したくはないがわからないでもない。
「今日はね、特別な菓子を手土産に持ってきたのだ。果物や花で色をつけたマコロというものだ。小麦の粉ではなく、木の実を挽いた粉を使ったお菓子なのだよ」
王太子が説明している間、俺は目の前に置かれたお菓子に釘付けになった。
掌に乗るくらいの丸くて小さいお菓子は、焼き菓子のようだけれど、実に鮮やかで美しい色をしている。間にはクリームが挟まっているみたい。こんなお菓子初めて見た。
「……さて、サフィラス君。先日の夜会では、我が愚弟が随分と迷惑をかけてしまったね」
「いえ、それほどでは」
俺がそう答えると、王太子殿下は声を上げて笑った。
えーっと、今のは笑うところだったか?
「あの騒動を、それほどの一言で片付けてしまうとは……実はね、愚弟にはほとほと手を焼いていたのだよ。あのブルームフィールド公爵が、折角懐の短剣を王家に託してくれたというのに、その意味を全く理解できない愚鈍な男だった。私は価値のわからない者に、その短剣が託されていることを実にもどかしく思っていたのだ。だが、君たちのおかげで我が王国は聖女を得ることができたばかりか、伝説の錫杖をも見つけ出すことができて、神官長が泣いて喜んでいたよ。その働きには大変感謝している……」
王太子殿下はお茶を一口飲むと、お菓子に手をつけた。
「君たちも遠慮せず食べなさい」
王太子殿下の手前、俺がお菓子に手をつけようとしないことに気がついたんだろう。自らお菓子を食べて、俺たちに勧めてくれた。
王太子殿下はとてもできた人だ。この人が次代の王なら、この国の未来は明るい。
それなのに、第二王子はなんであんな不出来に育ったんだろう。
そんなことを考えながら、早速、紅い色をしたマコロに手を伸ばす。
「!」
なんだこれ! うまっ!
一口食べて、その美味しさに俺は衝撃を受けた。
マコロはサクッとしてフワッとして口の中ですっと溶けるようで、果実の仄かな酸味とクリームの甘さが、控えめに言って最高だった。
あまりの美味しさに、続けて手を伸ばす。次は薄紫色のマコロだ。こっちはほんのりと菫の香りがする。
世の中には俺の知らない食べ物がまだまだあるんだな。俺は世間を知らなすぎる。
美しく魅力的なお菓子に目を爛々と輝かせていたら、隣に座っていたパーシヴァルが自分の前に置かれたお菓子の皿を、スッと俺の方に寄せた。パーシヴァルに視線を向ければ、彼が小さく頷く。
こ、こんな貴重なお菓子を俺に譲ってくれるなんて、やっぱりパーシヴァルはいい奴だ!
そんな様子を王太子殿下とアウローラに生温い視線で見られていたことに気がついた俺は、居住まいを正す。
魔力なしと判じられてから、監禁生活およそ九年。俺は漸く食の楽しさを満喫しているんだから、これくらい許してください。
「気に入ってくれたようだね」
「はい、とても」
ええ、大変気に入りましたとも。ぜひ籠いっぱい食べたいです。
「帰りに手土産として用意させよう」
「!」
これをお土産に持たせてくれるって!?
夢かな?
「……それで、愚弟のことなのだが、彼は王国の宝を勝手に持ち出した上に、私が主催した夜会を台無しにしてくれた。ブルームフィールド公爵令嬢を散々侮辱したこともあって、彼女との婚約は当然白紙になった。そして現在は、パルウム山の麓の砦に彼を送って反省を促しているところだ」
マコロの美味しさにすっかり忘れていたが、第二王子の話だったね。
そうか、パルウム山の麓に送られたか。思ったよりもきついお仕置きだな。
パルウム山の麓には、魔境とも言われる深い樹海が広がっている。
迷い込むと出られないし、しかも普通に大きな獣や魔獣も出るし、環境も厳しい。当然華やかな生活とは無縁で、毎日毎日危険と隣り合わせだ。
微温湯に浸る生活を送っていた第二王子には、さぞ辛い日々になるだろう。
「……それで、サフィラス君。君は王家の錫杖のことをいつ知ったのかな?」
王太子殿下の剣呑な眼差しが、俺を真っ直ぐに捉える。今までの穏やかな雰囲気が嘘のように、警戒に満ちたものに変わった。
「それに、伝説と言われていたカエレスエィスの錫杖を、確かに存在するものだと知っていた……しかも、錫杖の秘めたる力すらもわかっていたようだが?」
なるほど。まぁ、王家の宝がとんだポンコツだってことを知られていては、都合が悪いだろう。
そんなことを一介の学院生がなんで知っている? って思うのも当然。
俺だって前世で見てなければ、まさか国宝の錫杖がそんな使えないもんだって信じられないと思う。
俺はマコロを飲み込むと、お茶で口を潤す。
「本で読んで知りました」
「本だと?」
王太子殿下が怪訝そうな表情を浮かべる。
「王太子殿下。書物を侮ってはなりません。この世で起きていることのほとんどは、どこかの誰かがなんらかの形で残している。それがたとえ、王家が秘しておきたいと思うような事実でも」
困った時の書物頼み。なんでも本で読んだと言って解決さ。
「君は書物から、それらを知ったとでも?」
「王太子殿下は、私がどのような生い立ちであったかご存じでしょうか?」
「ああ。大体のことは知っているつもりだが」
まあ、当然調べるよね。
アウローラが同席しているし、ブルームフィールド公爵閣下からも、伯爵家での俺の扱いはある程度聞いているだろう。
「魔力鑑定を受けた五歳から学院に入学してあの屋敷を出るまで、私は離れでの生活を余儀なくされました。幸いだったのは、その離れには多くの書物が眠っていたことです。私は時間にだけは恵まれていましたので、それらの書物をひたすら読み耽っておりました」
何よりも本を読んでいれば、空腹を忘れられたし。
「……だが、いくら魔法伯爵家の蔵書とはいえ、禁書に値するような内容の書物があるとは思えないが?」
「殿下、庶民の間で読まれている本にはあながち馬鹿にできないことも書いてあるのです。特に秘密を抱える者たちがそれらを書き残そうとする時に、起きたことをそのまま表現したりはしません。時代によっては、せっかく書いた書物を焼かれてしまう可能性がありますからね。ですから、非常にわかりにくい形で残しておくのです。さながら、宝の地図のように。謎解きのような不可解な例えや、意味深げな物語に鍵は潜ませてある。錫杖のこともそんな書物から得た知識で辿り着いたに過ぎません」
どう? 納得してくれた?
俺はもうフォルティスじゃなくてサフィラスだから。前世の知識は遠慮なく使うけど、フォルティスとして生きるつもりはない。
ましてや、その前世の記憶を利用されたらたまったもんじゃないし。だってそんなの、めんどくさいじゃないか。
だから前世の記憶です、とは言いません。
そもそも、サフィラスは幼少の頃からずっと閉じ込められて育ってきた。だから、いくらサフィラスの周辺を調べたところで、何も出てきやしない。
きっと何も出てこなかったからこそ、こうやって直接本人に聞いているんだろうけどね。
「……なるほど」
ふっと、王太子殿下の纏う空気が緩む。
どうやら、とりあえずは納得してくれたみたいだ。
「しかし、オルドリッジ伯爵はこれほど優秀な子息を手放すなんて、人材を見抜く目がないのかな? そんな人物が王国魔法師団の相談役だとは……どう思う? アウローラ」
「さぁ、どうでしょうか? わたくしにはわかりかねますが、お陰で我が公爵家は優秀な魔法使い育成の後押しをすることができますわ」
ふーん。どうやら公爵閣下の懐の短剣は、王太子殿下が受け取ることになったようだ。
まぁ、当然といえば当然だろう。王家としては聖女となったアウローラをそう簡単に手放したくはないだろうし。
多少の歳の差なんて、大した問題じゃない。それに、第二王子よりもずっと相性が良さそうだ。
「さて、ここからは私の世間話だ。気楽に聞いてくれ。間も無く我が国は獣王国ワーズティターズと同盟を結ぶ運びとなっているのだが、いよいよというこの時になって彼の国がいささか不穏な状況でね……その発端となっているのが、ベネディクト陛下の兄であるヘイスティング殿下と言われている。彼はいまだに人族への嫌悪を根強く持っているようで、頑なに同盟に反対しているのだ」
王太子殿下はやれやれといった様子でため息を吐く。
「同じように人族との同盟に不満を抱く武系の貴族は、彼に蜂起を唆しているという話も聞く。ヘイスティング殿下は、穏やかで柔軟な考えができるベネディクト陛下とはほぼ真逆な考えのお方だな。先代の国王陛下がベネディクト陛下を王太子に指名した時もそれなりに一悶着あったそうだが、昔と違い今は大陸も安定している。極端な考えを持つヘイスティング殿下よりも、公平で広い視野を持つベネディクト陛下の方が、為政者として相応しいと先代国王は判断されたのだろう。私もその考えに賛成だ。時に力も必要ではあるが、それだけでは解決できないこともある」
え? これって世間話なの?
気楽に聞いてくれって言ったけど、王族の世間話ってのは随分と重たい内容なんだな。こんな話をしながらじゃ、お茶もお菓子も楽しめない。俺は庶民でよかった。
「とはいえ、我が国にも獣人族に対して差別的な考え方を持つ貴族は多いがね。それだけにここまで舞台を整えるのは、それはそれは並大抵の苦労ではなかった。国内の反対派に説得を重ね、彼の国に幾度も使節を送り、獣王国の王太子を留学生としてクレアーレに招いたのだが……ああ! そういえば、君たちはクラウィス殿とは仲がいいそうだね?」
「ええ、まぁ、そうですが」
残念そうに俯いた王太子殿下が、ぱっと顔を上げて俺の方を見る。
いやいや、随分と話の振り方が、強引だな。嫌な予感しかしないんだが……
「彼はなかなか気持ちの良い人物でね。私も彼のことは気に入っているのだ。私自身、ワーズティターズに赴いたことがあるのだが、その際には彼の父君であるベネディクト陛下にはとても良くしていただいた。だから、今回の事態は私も非常に胸を痛めている」
王太子殿下は眉根を寄せ、残念そうに頭を振った。
なんだかわざとらしく見えるのは気のせいかな?
「……ヘイスティング殿下は獣人らしい強さを誇るお方で、それゆえに兵士たちは皆彼に心酔していると聞く。万が一、彼が国王に反旗を翻すようなことがあれば、軍は間違いなくヘイスティング殿下に従うだろう。剛の者の集まりである獣人兵団だ。事が起これば、おそらく城の陥落は早い。力になれるものなら力になりたいのだが、私の立場では非常に難しくてね……私が一国の王太子という立場ではなく、彼らにとってただの友人であったならと、心から思うよ」
まるで芝居の台詞のように語りきった王太子殿下は、憂いの表情を浮かべながら太陽の瞳でじっと俺たちを見つめる。
随分と回りくどい言い方だな。
要するに、もしも万が一のことが起きたら、個人としてワーズティターズに向かってくれたらいいなぁ。君たち友人だろ? ってことなんだろう。
上手く事態を抑え込むことができればそれでよし。よしんばしくじったとしても、俺個人がやったこと。
王太子殿下の依頼でワーズティターズに向かったのではなく、あくまでも、俺の意思で向かったってところが重要なんだ。
それなら、ソルモンターナにはなんの影響もないからね。
たかだか一学院生に他国の内乱をなんとかさせようだなんて、随分無茶なことを言ってくれるよなぁ。
しかも断らないことを見越して言っているんだから、王太子殿下はなかなか食えない男だ。
もちろん彼らを助けることに否はない。むしろ王太子殿下の方からその話を振ってくれるなんて、願ったり叶ったりだけど。
それに、そんな世間話にしては重たい他国の内情を話すと言うことは、俺にならヘイスティング殿下の暴走を抑えられるかもしれないって考えているのだろう。
俺も魔法使いとしての意地がある。
そこまで期待されたら、もう応えるしかないってもんでしょ。
もしかしたら、王太子殿下は俺のそういう性格まで見越して、この話をしたのかもしれない。だとしたら人を使うのが随分と上手いお人だ。
「まぁ、ただの世間話だ。私の話に付き合わせてしまって悪かったね」
「いいえ……」
「このまま、何事も起こらないのが一番だがね……」
王太子殿下はそう呟くと、遠くを見るように窓の外に視線を向けた。
確かに何事もないのが一番だ。
クラウィスの話を聞いて、ヘイスティング殿下が考えを改めてくれるといいんだけど。
話を聞く限りでは、力でなんでも解決したい御仁のようだし、難しいかな。
「そういえば、もうすぐ長期休暇だが、サフィラス君はどう過ごすのかな?」
おっと、急に話が変わったぞ。
どう過ごすのかと尋ねられても、長期休暇とはなんぞや? である。
「ええっと? 長期休暇とは?」
「一週間後には、学院は長いお休みに入りますの。皆様は領地にお戻りになったり、避暑地に行ったりされますのよ」
「へぇ、そうなんだ」
なるほど。だからみんなどことなくそわそわしていたのか。
試験が終わって、解放感に浸っているだけではなかったんだな。
パーシヴァルはきっと領地に帰るだろうし。これまでやたらと騒がしかったから、一人でのんびりと過ごすのも悪くない。
俺は寮でだらだらと過ごしながら、その辺を小旅行するのもいいかもしれない。
ついでだから、もう少し転移できる範囲を広げておくか。
「サフィラス。もしサフィラスさえよければ、俺と一緒にヴァンダーウォールに行かないか?」
「え?」
「寮に残っていても、休みの間はカフェテリアも閉まってしまうから、食事に困るだろう?」
「ええ⁉ カフェテリア閉まっちゃうの?」
「ああ。寮に残る学院生もいるにはいるが、休暇中はカフェテリアも休みになる」
まぁ、よく考えればそうだよな。
わずかな学院生のために料理人を働かせるわけにはいかないだろう。
「ヴァンダーウォールは何もないところだが、美味い肉があるぞ」
「え? 肉?」
「土地柄、傭兵や兵士が多いからな。スタミナの付く食事は名物のようなものだ」
ヴァンダーウォール領は魔獣と国境の土地だと思っていたけれど、名物に肉料理があるのか。それはぜひとも食してみたい。
「……俺が行っても迷惑にならない?」
「迷惑であるものか。遠慮のない騒がしい家族だが、我が家はサフィラスを歓迎する」
「まぁ、サフィラス様は我が家の避暑地へご招待しようと思っていたのですけれど……」
アウローラは頬に指を当て、少し残念そうな顔をした。
「湖の辺の別荘では小船に乗ったり、鱒を釣ったりもできますの。それに農場や果樹園も近くにありますから、新鮮な牛乳や乾酪、果物が楽しめますわ。ですが避暑中とはいえ、お客様が参加するお茶会や夜会もしばしば開かれるので、パーシヴァル様とご一緒にヴァンダーウォールに行かれた方が、サフィラス様はお休みを楽しめるかもしれませんわね」
うん。俺は社交的なことは苦手だからな。
援助を受けている学院生としてお邪魔したならば、そういう場にちょっとは顔を出さなきゃならないだろうし。それはできればご遠慮させていただきたい。
「せっかくのお休みですから、思い切り羽を伸ばしてきてくださいませ」
「お世話になってもいいかな、パーシヴァル」
「もちろんだとも。休みに入ったらすぐに領地に向かう予定だ。特に準備するようなことは何もない。気楽にしていてくれ」
「ありがとう、パーシヴァル!」
☆ ☆ ☆
かくして俺は、長期休暇をヴァンダーウォール領で過ごすことになった。
肉料理が楽しみすぎて、休暇までまだ先だというのにその日の夜に早速荷造りを始めた。
まずは普段着を数着、古い布袋に詰めた。後は……と考えたけど、他に持って行けるような物はなかった。
本当だったら、ナイフとか寝袋とか保存食とかあればいいけど、そんな便利道具を今の俺が持っているわけがない。
まだ休みまでに時間があるし、それまでに準備すればいいか。明日にでも買いにいこう。
みんながそわそわしている理由が理解できたよ。きっとこんな気持ちなんだな。これはじっとしてなんかいられないよ。
ああ、ヴァンダーウォールに行くのが楽しみだ!
早く旅に出たいなぁ!
第二章
「……サフィラスは、馬には乗れるか?」
「うん。乗れるよ」
普段からユニサスに乗っているから、馬ぐらいは問題なく乗れる。
「そうか、ならよかった。帰郷には馬を使うが、馬は一頭しかいない。俺と一緒に乗ることになるが構わないだろうか?」
「俺は全然構わないよ。だけど、二人も乗せて馬の方は大丈夫?」
「ヴァンダーウォールの馬は普通の馬とは違う。魔獣のいる森を三日三晩飲まず食わずで走れる馬だ。俺とサフィラスを乗せて旅をするくらい、なんてことはない」
飲まず食わずで三日!? 普通の馬じゃちょっと考えられないな。
「ヴァンダーウォールの馬って凄いんだね」
パーシヴァルはその屈強な馬に乗って、王都に来たそうだ。
王都にはベリサリオ家の厩舎があって、お抱えの馬丁がいるんだって。そこでパーシヴァルの馬の面倒を見てもらっているんだとか。
通りを歩く人たちもまばらな早朝。俺たちは、ベリサリオ家の厩舎に向かっていた。
ヴァンダーウォールまでは、天候に恵まれれば六日ほど。馬車だと山越の近道を使えないからもう少しかかるそうだ。
そこそこ距離があるし、転移魔法が使えるんだから転移でサクサク行けばいいって思うかもしれないけど、俺はそれほど無粋な男ではない。
普通に旅を楽しむ心だってあるんです。
「パーシヴァル様、お待ちしておりました」
王都の外れにある厩舎では、すでに馬丁が馬の準備をして待っていてくれた。今日早朝に出発することが伝えられていたんだろう。
「え……これがパーシヴァルの馬?」
思わずポカンと見上げてしまう。
俺は小柄だから大体の馬は見上げる形になるけれど、この馬は見上げるどころか、首を真上に向けても足りないくらいだ。
「ああ、マテオという」
マテオは真っ黒で普通の馬よりずっと大きい。脚も太くてがっしりとしている。
小さな魔獣なら踏み潰してしまえるような逞しさだ。体は艶々と黒光りして、鬣も尾もさらさらしている。
手入れがしっかりとされているんだな。
それにしても、これがヴァンダーウォールの馬かぁ……何もかもが圧倒的だ。
「よろしくね、マテオ」
俺が声をかければ、マテオはぶるると鼻を鳴らす。
手を伸ばして鼻先をわしわしと撫でても、嫌そうな素振りは見せない。神経質な性格ではなさそうだ。
俺がマテオに挨拶をしている間に、パーシヴァルは旅の荷物をマテオの背に括り付ける。彼の荷物も最小限で、旅人二人の一週間分にしては随分と小ぢんまりしていた。パーシヴァルも旅慣れているんだな。
「さあ、出発しよう」
「おう!」
いよいよ旅の始まりだね!
パーシヴァルと俺はマテオの背に跨り、ヴァンダーウォールを目指す。
基本的には宿に泊まるけど、何回かは野営をすることになる。
野営には前世で慣れているし、嫌いじゃない。この時期なら寒くないから、星空を見上げながら眠るのも悪くないもんだ。
マテオはしっかりとした足取りで街道を走る。
このまま最初の宿がある町まで走り続ける予定で、パーシヴァルが俺のために折り畳んだ厚い布を用意してくれていた。その上に座っているお陰で今のところはとても快適。
それに、背後でパーシヴァルが支えてくれているので安定感もある。何より視界が高いので眺めがいい。
ヴァンダーウォールの馬は凄いぞ!
「疲れたら遠慮せずに言ってくれ」
「全然疲れないよ! それにしてもマテオは凄いな!」
王都を出て結構走ったのにマテオの足は少しも鈍らない。体が大きい分歩幅も大きいので、軽快な走りで荷馬車を何台も追い越していく。
「ヴァンダーウォールでは強い馬を生み出すために、長い時間をかけて少しでも大きい馬同士を代々掛け合わせてきたんだ。細く体力のない馬だと魔獣と渡り合えないからな。その甲斐あって、今ではマテオのような大きく逞しい馬が定着した。貴族には不恰好だと嫌われるが、そのかわり何事にも動じない性格と、険しい道でも走り続けることのできる強い脚を持っている」
不恰好だって? とんでもない!
マテオは逞しくて素晴らしい馬じゃないか。
「いや、ヴァンダーウォールの馬は美しいよ! 俺は好きだな! マテオ、お前は素晴らしい馬だぞ」
俺はマテオの首を敬意を込めて撫でる。
こんなに立派な馬が不恰好なものか。戦場でこの馬を見たら、敵の騎馬隊は怯むだろう。
それだけの強さがヴァンダーウォールの馬にはある。
「マテオ、サフィラスに褒めてもらえてよかったな」
後ろから聞こえてきたパーシヴァルの声は、心なしか嬉しそうだ。
確かに貴族が乗るような馬は美しさを求めてか線が細く、マテオとは大違いだ。ご令嬢を乗せるならそれでもいいだろうが、いざ戦や魔獣討伐となれば力不足は否めない。
何をおいても強さを求められる、それがヴァンダーウォールという土地なんだ。
☆ ☆ ☆
最初の宿に着いたのは日が暮れる前だった。
マテオはその健脚で、ほとんど休むことなく走り続けた。
この宿はベリサリオ家の定宿だそうで、大きい宿ではないけれど貴族も泊まる宿だけあって小綺麗で感じがいい。
「マテオを預けてくる。サフィラスはここで待っていてくれ」
「うん、わかった」
俺はエントランス前で下ろした荷物の見張り番だ。
夕飯はこの宿で食べられるらしいけれど、何が出てくるのか楽しみだな。
「おや、おや、これは結構な別嬪さんがいるじゃないか? この辺りじゃ見ない顔だな」
すでに酒が入っていると思われる若者が三人、俺の前で足を止める。
なんだか厄介ごとの匂いがしてきたぞ。
だけどすぐにパーシヴァルも戻ってくるだろうし、無用なトラブル回避のためにこれは相手にしないのが一番だ。
「君、一人なの?」
「今日はこの宿に泊まるつもり? ここよりも、安くてもっといい宿を紹介するから俺たちとおいでよ」
明らかに下心がありますって顔をして何を言っているんだ?
身なりからすると、貴族か金持ちの家の息子たちだろうか。
「おい、何か言ったらどうだ?」
視線を合わさず、返事も返さないでいると、若者の一人が声を荒らげ俺に手を伸ばしてきたので、その手をピシャリと叩き落とす。
「いてっ! 何しやがる!」
何しやがると言いたいのは俺の方だ。
無闇に触ろうとするなよ。
「ベリサリオ君、ヴァンダーウォール卿はお元気かな?」
「はい、相変わらず兵たちの先頭で指揮を執っております」
「うん、そうか。ベリサリオは我が国の剣であり盾だ。その忠義に感謝していると、卿には伝えてほしい」
「身に余るお言葉、誠に光栄にございます。」
パーシヴァルは王太子殿下と面識があったんだな。
何しろヴァンダーウォール辺境伯領は、この国の要の一つと言っても過言じゃない場所だ。その地を護り続けているベリサリオ家を王家は蔑ろにはしない。
パーシヴァルはその辺境伯家子息だし、大きな行事では顔を合わすこともあったんだろう。
はぁ、それにしても、キラキラ王子様同士の対面だな。
こうして改めて見ると王太子殿下もなかなかのTHE・王子様だ。王冠のように輝く金の髪に、この国の象徴である太陽の瞳。
その上優秀なんだから、そりゃぁ殿下の妃にと思うご令嬢や、娘をぜひお側にと思う家は多いだろう。
スペンサー侯爵夫人の無念も、理解したくはないがわからないでもない。
「今日はね、特別な菓子を手土産に持ってきたのだ。果物や花で色をつけたマコロというものだ。小麦の粉ではなく、木の実を挽いた粉を使ったお菓子なのだよ」
王太子が説明している間、俺は目の前に置かれたお菓子に釘付けになった。
掌に乗るくらいの丸くて小さいお菓子は、焼き菓子のようだけれど、実に鮮やかで美しい色をしている。間にはクリームが挟まっているみたい。こんなお菓子初めて見た。
「……さて、サフィラス君。先日の夜会では、我が愚弟が随分と迷惑をかけてしまったね」
「いえ、それほどでは」
俺がそう答えると、王太子殿下は声を上げて笑った。
えーっと、今のは笑うところだったか?
「あの騒動を、それほどの一言で片付けてしまうとは……実はね、愚弟にはほとほと手を焼いていたのだよ。あのブルームフィールド公爵が、折角懐の短剣を王家に託してくれたというのに、その意味を全く理解できない愚鈍な男だった。私は価値のわからない者に、その短剣が託されていることを実にもどかしく思っていたのだ。だが、君たちのおかげで我が王国は聖女を得ることができたばかりか、伝説の錫杖をも見つけ出すことができて、神官長が泣いて喜んでいたよ。その働きには大変感謝している……」
王太子殿下はお茶を一口飲むと、お菓子に手をつけた。
「君たちも遠慮せず食べなさい」
王太子殿下の手前、俺がお菓子に手をつけようとしないことに気がついたんだろう。自らお菓子を食べて、俺たちに勧めてくれた。
王太子殿下はとてもできた人だ。この人が次代の王なら、この国の未来は明るい。
それなのに、第二王子はなんであんな不出来に育ったんだろう。
そんなことを考えながら、早速、紅い色をしたマコロに手を伸ばす。
「!」
なんだこれ! うまっ!
一口食べて、その美味しさに俺は衝撃を受けた。
マコロはサクッとしてフワッとして口の中ですっと溶けるようで、果実の仄かな酸味とクリームの甘さが、控えめに言って最高だった。
あまりの美味しさに、続けて手を伸ばす。次は薄紫色のマコロだ。こっちはほんのりと菫の香りがする。
世の中には俺の知らない食べ物がまだまだあるんだな。俺は世間を知らなすぎる。
美しく魅力的なお菓子に目を爛々と輝かせていたら、隣に座っていたパーシヴァルが自分の前に置かれたお菓子の皿を、スッと俺の方に寄せた。パーシヴァルに視線を向ければ、彼が小さく頷く。
こ、こんな貴重なお菓子を俺に譲ってくれるなんて、やっぱりパーシヴァルはいい奴だ!
そんな様子を王太子殿下とアウローラに生温い視線で見られていたことに気がついた俺は、居住まいを正す。
魔力なしと判じられてから、監禁生活およそ九年。俺は漸く食の楽しさを満喫しているんだから、これくらい許してください。
「気に入ってくれたようだね」
「はい、とても」
ええ、大変気に入りましたとも。ぜひ籠いっぱい食べたいです。
「帰りに手土産として用意させよう」
「!」
これをお土産に持たせてくれるって!?
夢かな?
「……それで、愚弟のことなのだが、彼は王国の宝を勝手に持ち出した上に、私が主催した夜会を台無しにしてくれた。ブルームフィールド公爵令嬢を散々侮辱したこともあって、彼女との婚約は当然白紙になった。そして現在は、パルウム山の麓の砦に彼を送って反省を促しているところだ」
マコロの美味しさにすっかり忘れていたが、第二王子の話だったね。
そうか、パルウム山の麓に送られたか。思ったよりもきついお仕置きだな。
パルウム山の麓には、魔境とも言われる深い樹海が広がっている。
迷い込むと出られないし、しかも普通に大きな獣や魔獣も出るし、環境も厳しい。当然華やかな生活とは無縁で、毎日毎日危険と隣り合わせだ。
微温湯に浸る生活を送っていた第二王子には、さぞ辛い日々になるだろう。
「……それで、サフィラス君。君は王家の錫杖のことをいつ知ったのかな?」
王太子殿下の剣呑な眼差しが、俺を真っ直ぐに捉える。今までの穏やかな雰囲気が嘘のように、警戒に満ちたものに変わった。
「それに、伝説と言われていたカエレスエィスの錫杖を、確かに存在するものだと知っていた……しかも、錫杖の秘めたる力すらもわかっていたようだが?」
なるほど。まぁ、王家の宝がとんだポンコツだってことを知られていては、都合が悪いだろう。
そんなことを一介の学院生がなんで知っている? って思うのも当然。
俺だって前世で見てなければ、まさか国宝の錫杖がそんな使えないもんだって信じられないと思う。
俺はマコロを飲み込むと、お茶で口を潤す。
「本で読んで知りました」
「本だと?」
王太子殿下が怪訝そうな表情を浮かべる。
「王太子殿下。書物を侮ってはなりません。この世で起きていることのほとんどは、どこかの誰かがなんらかの形で残している。それがたとえ、王家が秘しておきたいと思うような事実でも」
困った時の書物頼み。なんでも本で読んだと言って解決さ。
「君は書物から、それらを知ったとでも?」
「王太子殿下は、私がどのような生い立ちであったかご存じでしょうか?」
「ああ。大体のことは知っているつもりだが」
まあ、当然調べるよね。
アウローラが同席しているし、ブルームフィールド公爵閣下からも、伯爵家での俺の扱いはある程度聞いているだろう。
「魔力鑑定を受けた五歳から学院に入学してあの屋敷を出るまで、私は離れでの生活を余儀なくされました。幸いだったのは、その離れには多くの書物が眠っていたことです。私は時間にだけは恵まれていましたので、それらの書物をひたすら読み耽っておりました」
何よりも本を読んでいれば、空腹を忘れられたし。
「……だが、いくら魔法伯爵家の蔵書とはいえ、禁書に値するような内容の書物があるとは思えないが?」
「殿下、庶民の間で読まれている本にはあながち馬鹿にできないことも書いてあるのです。特に秘密を抱える者たちがそれらを書き残そうとする時に、起きたことをそのまま表現したりはしません。時代によっては、せっかく書いた書物を焼かれてしまう可能性がありますからね。ですから、非常にわかりにくい形で残しておくのです。さながら、宝の地図のように。謎解きのような不可解な例えや、意味深げな物語に鍵は潜ませてある。錫杖のこともそんな書物から得た知識で辿り着いたに過ぎません」
どう? 納得してくれた?
俺はもうフォルティスじゃなくてサフィラスだから。前世の知識は遠慮なく使うけど、フォルティスとして生きるつもりはない。
ましてや、その前世の記憶を利用されたらたまったもんじゃないし。だってそんなの、めんどくさいじゃないか。
だから前世の記憶です、とは言いません。
そもそも、サフィラスは幼少の頃からずっと閉じ込められて育ってきた。だから、いくらサフィラスの周辺を調べたところで、何も出てきやしない。
きっと何も出てこなかったからこそ、こうやって直接本人に聞いているんだろうけどね。
「……なるほど」
ふっと、王太子殿下の纏う空気が緩む。
どうやら、とりあえずは納得してくれたみたいだ。
「しかし、オルドリッジ伯爵はこれほど優秀な子息を手放すなんて、人材を見抜く目がないのかな? そんな人物が王国魔法師団の相談役だとは……どう思う? アウローラ」
「さぁ、どうでしょうか? わたくしにはわかりかねますが、お陰で我が公爵家は優秀な魔法使い育成の後押しをすることができますわ」
ふーん。どうやら公爵閣下の懐の短剣は、王太子殿下が受け取ることになったようだ。
まぁ、当然といえば当然だろう。王家としては聖女となったアウローラをそう簡単に手放したくはないだろうし。
多少の歳の差なんて、大した問題じゃない。それに、第二王子よりもずっと相性が良さそうだ。
「さて、ここからは私の世間話だ。気楽に聞いてくれ。間も無く我が国は獣王国ワーズティターズと同盟を結ぶ運びとなっているのだが、いよいよというこの時になって彼の国がいささか不穏な状況でね……その発端となっているのが、ベネディクト陛下の兄であるヘイスティング殿下と言われている。彼はいまだに人族への嫌悪を根強く持っているようで、頑なに同盟に反対しているのだ」
王太子殿下はやれやれといった様子でため息を吐く。
「同じように人族との同盟に不満を抱く武系の貴族は、彼に蜂起を唆しているという話も聞く。ヘイスティング殿下は、穏やかで柔軟な考えができるベネディクト陛下とはほぼ真逆な考えのお方だな。先代の国王陛下がベネディクト陛下を王太子に指名した時もそれなりに一悶着あったそうだが、昔と違い今は大陸も安定している。極端な考えを持つヘイスティング殿下よりも、公平で広い視野を持つベネディクト陛下の方が、為政者として相応しいと先代国王は判断されたのだろう。私もその考えに賛成だ。時に力も必要ではあるが、それだけでは解決できないこともある」
え? これって世間話なの?
気楽に聞いてくれって言ったけど、王族の世間話ってのは随分と重たい内容なんだな。こんな話をしながらじゃ、お茶もお菓子も楽しめない。俺は庶民でよかった。
「とはいえ、我が国にも獣人族に対して差別的な考え方を持つ貴族は多いがね。それだけにここまで舞台を整えるのは、それはそれは並大抵の苦労ではなかった。国内の反対派に説得を重ね、彼の国に幾度も使節を送り、獣王国の王太子を留学生としてクレアーレに招いたのだが……ああ! そういえば、君たちはクラウィス殿とは仲がいいそうだね?」
「ええ、まぁ、そうですが」
残念そうに俯いた王太子殿下が、ぱっと顔を上げて俺の方を見る。
いやいや、随分と話の振り方が、強引だな。嫌な予感しかしないんだが……
「彼はなかなか気持ちの良い人物でね。私も彼のことは気に入っているのだ。私自身、ワーズティターズに赴いたことがあるのだが、その際には彼の父君であるベネディクト陛下にはとても良くしていただいた。だから、今回の事態は私も非常に胸を痛めている」
王太子殿下は眉根を寄せ、残念そうに頭を振った。
なんだかわざとらしく見えるのは気のせいかな?
「……ヘイスティング殿下は獣人らしい強さを誇るお方で、それゆえに兵士たちは皆彼に心酔していると聞く。万が一、彼が国王に反旗を翻すようなことがあれば、軍は間違いなくヘイスティング殿下に従うだろう。剛の者の集まりである獣人兵団だ。事が起これば、おそらく城の陥落は早い。力になれるものなら力になりたいのだが、私の立場では非常に難しくてね……私が一国の王太子という立場ではなく、彼らにとってただの友人であったならと、心から思うよ」
まるで芝居の台詞のように語りきった王太子殿下は、憂いの表情を浮かべながら太陽の瞳でじっと俺たちを見つめる。
随分と回りくどい言い方だな。
要するに、もしも万が一のことが起きたら、個人としてワーズティターズに向かってくれたらいいなぁ。君たち友人だろ? ってことなんだろう。
上手く事態を抑え込むことができればそれでよし。よしんばしくじったとしても、俺個人がやったこと。
王太子殿下の依頼でワーズティターズに向かったのではなく、あくまでも、俺の意思で向かったってところが重要なんだ。
それなら、ソルモンターナにはなんの影響もないからね。
たかだか一学院生に他国の内乱をなんとかさせようだなんて、随分無茶なことを言ってくれるよなぁ。
しかも断らないことを見越して言っているんだから、王太子殿下はなかなか食えない男だ。
もちろん彼らを助けることに否はない。むしろ王太子殿下の方からその話を振ってくれるなんて、願ったり叶ったりだけど。
それに、そんな世間話にしては重たい他国の内情を話すと言うことは、俺にならヘイスティング殿下の暴走を抑えられるかもしれないって考えているのだろう。
俺も魔法使いとしての意地がある。
そこまで期待されたら、もう応えるしかないってもんでしょ。
もしかしたら、王太子殿下は俺のそういう性格まで見越して、この話をしたのかもしれない。だとしたら人を使うのが随分と上手いお人だ。
「まぁ、ただの世間話だ。私の話に付き合わせてしまって悪かったね」
「いいえ……」
「このまま、何事も起こらないのが一番だがね……」
王太子殿下はそう呟くと、遠くを見るように窓の外に視線を向けた。
確かに何事もないのが一番だ。
クラウィスの話を聞いて、ヘイスティング殿下が考えを改めてくれるといいんだけど。
話を聞く限りでは、力でなんでも解決したい御仁のようだし、難しいかな。
「そういえば、もうすぐ長期休暇だが、サフィラス君はどう過ごすのかな?」
おっと、急に話が変わったぞ。
どう過ごすのかと尋ねられても、長期休暇とはなんぞや? である。
「ええっと? 長期休暇とは?」
「一週間後には、学院は長いお休みに入りますの。皆様は領地にお戻りになったり、避暑地に行ったりされますのよ」
「へぇ、そうなんだ」
なるほど。だからみんなどことなくそわそわしていたのか。
試験が終わって、解放感に浸っているだけではなかったんだな。
パーシヴァルはきっと領地に帰るだろうし。これまでやたらと騒がしかったから、一人でのんびりと過ごすのも悪くない。
俺は寮でだらだらと過ごしながら、その辺を小旅行するのもいいかもしれない。
ついでだから、もう少し転移できる範囲を広げておくか。
「サフィラス。もしサフィラスさえよければ、俺と一緒にヴァンダーウォールに行かないか?」
「え?」
「寮に残っていても、休みの間はカフェテリアも閉まってしまうから、食事に困るだろう?」
「ええ⁉ カフェテリア閉まっちゃうの?」
「ああ。寮に残る学院生もいるにはいるが、休暇中はカフェテリアも休みになる」
まぁ、よく考えればそうだよな。
わずかな学院生のために料理人を働かせるわけにはいかないだろう。
「ヴァンダーウォールは何もないところだが、美味い肉があるぞ」
「え? 肉?」
「土地柄、傭兵や兵士が多いからな。スタミナの付く食事は名物のようなものだ」
ヴァンダーウォール領は魔獣と国境の土地だと思っていたけれど、名物に肉料理があるのか。それはぜひとも食してみたい。
「……俺が行っても迷惑にならない?」
「迷惑であるものか。遠慮のない騒がしい家族だが、我が家はサフィラスを歓迎する」
「まぁ、サフィラス様は我が家の避暑地へご招待しようと思っていたのですけれど……」
アウローラは頬に指を当て、少し残念そうな顔をした。
「湖の辺の別荘では小船に乗ったり、鱒を釣ったりもできますの。それに農場や果樹園も近くにありますから、新鮮な牛乳や乾酪、果物が楽しめますわ。ですが避暑中とはいえ、お客様が参加するお茶会や夜会もしばしば開かれるので、パーシヴァル様とご一緒にヴァンダーウォールに行かれた方が、サフィラス様はお休みを楽しめるかもしれませんわね」
うん。俺は社交的なことは苦手だからな。
援助を受けている学院生としてお邪魔したならば、そういう場にちょっとは顔を出さなきゃならないだろうし。それはできればご遠慮させていただきたい。
「せっかくのお休みですから、思い切り羽を伸ばしてきてくださいませ」
「お世話になってもいいかな、パーシヴァル」
「もちろんだとも。休みに入ったらすぐに領地に向かう予定だ。特に準備するようなことは何もない。気楽にしていてくれ」
「ありがとう、パーシヴァル!」
☆ ☆ ☆
かくして俺は、長期休暇をヴァンダーウォール領で過ごすことになった。
肉料理が楽しみすぎて、休暇までまだ先だというのにその日の夜に早速荷造りを始めた。
まずは普段着を数着、古い布袋に詰めた。後は……と考えたけど、他に持って行けるような物はなかった。
本当だったら、ナイフとか寝袋とか保存食とかあればいいけど、そんな便利道具を今の俺が持っているわけがない。
まだ休みまでに時間があるし、それまでに準備すればいいか。明日にでも買いにいこう。
みんながそわそわしている理由が理解できたよ。きっとこんな気持ちなんだな。これはじっとしてなんかいられないよ。
ああ、ヴァンダーウォールに行くのが楽しみだ!
早く旅に出たいなぁ!
第二章
「……サフィラスは、馬には乗れるか?」
「うん。乗れるよ」
普段からユニサスに乗っているから、馬ぐらいは問題なく乗れる。
「そうか、ならよかった。帰郷には馬を使うが、馬は一頭しかいない。俺と一緒に乗ることになるが構わないだろうか?」
「俺は全然構わないよ。だけど、二人も乗せて馬の方は大丈夫?」
「ヴァンダーウォールの馬は普通の馬とは違う。魔獣のいる森を三日三晩飲まず食わずで走れる馬だ。俺とサフィラスを乗せて旅をするくらい、なんてことはない」
飲まず食わずで三日!? 普通の馬じゃちょっと考えられないな。
「ヴァンダーウォールの馬って凄いんだね」
パーシヴァルはその屈強な馬に乗って、王都に来たそうだ。
王都にはベリサリオ家の厩舎があって、お抱えの馬丁がいるんだって。そこでパーシヴァルの馬の面倒を見てもらっているんだとか。
通りを歩く人たちもまばらな早朝。俺たちは、ベリサリオ家の厩舎に向かっていた。
ヴァンダーウォールまでは、天候に恵まれれば六日ほど。馬車だと山越の近道を使えないからもう少しかかるそうだ。
そこそこ距離があるし、転移魔法が使えるんだから転移でサクサク行けばいいって思うかもしれないけど、俺はそれほど無粋な男ではない。
普通に旅を楽しむ心だってあるんです。
「パーシヴァル様、お待ちしておりました」
王都の外れにある厩舎では、すでに馬丁が馬の準備をして待っていてくれた。今日早朝に出発することが伝えられていたんだろう。
「え……これがパーシヴァルの馬?」
思わずポカンと見上げてしまう。
俺は小柄だから大体の馬は見上げる形になるけれど、この馬は見上げるどころか、首を真上に向けても足りないくらいだ。
「ああ、マテオという」
マテオは真っ黒で普通の馬よりずっと大きい。脚も太くてがっしりとしている。
小さな魔獣なら踏み潰してしまえるような逞しさだ。体は艶々と黒光りして、鬣も尾もさらさらしている。
手入れがしっかりとされているんだな。
それにしても、これがヴァンダーウォールの馬かぁ……何もかもが圧倒的だ。
「よろしくね、マテオ」
俺が声をかければ、マテオはぶるると鼻を鳴らす。
手を伸ばして鼻先をわしわしと撫でても、嫌そうな素振りは見せない。神経質な性格ではなさそうだ。
俺がマテオに挨拶をしている間に、パーシヴァルは旅の荷物をマテオの背に括り付ける。彼の荷物も最小限で、旅人二人の一週間分にしては随分と小ぢんまりしていた。パーシヴァルも旅慣れているんだな。
「さあ、出発しよう」
「おう!」
いよいよ旅の始まりだね!
パーシヴァルと俺はマテオの背に跨り、ヴァンダーウォールを目指す。
基本的には宿に泊まるけど、何回かは野営をすることになる。
野営には前世で慣れているし、嫌いじゃない。この時期なら寒くないから、星空を見上げながら眠るのも悪くないもんだ。
マテオはしっかりとした足取りで街道を走る。
このまま最初の宿がある町まで走り続ける予定で、パーシヴァルが俺のために折り畳んだ厚い布を用意してくれていた。その上に座っているお陰で今のところはとても快適。
それに、背後でパーシヴァルが支えてくれているので安定感もある。何より視界が高いので眺めがいい。
ヴァンダーウォールの馬は凄いぞ!
「疲れたら遠慮せずに言ってくれ」
「全然疲れないよ! それにしてもマテオは凄いな!」
王都を出て結構走ったのにマテオの足は少しも鈍らない。体が大きい分歩幅も大きいので、軽快な走りで荷馬車を何台も追い越していく。
「ヴァンダーウォールでは強い馬を生み出すために、長い時間をかけて少しでも大きい馬同士を代々掛け合わせてきたんだ。細く体力のない馬だと魔獣と渡り合えないからな。その甲斐あって、今ではマテオのような大きく逞しい馬が定着した。貴族には不恰好だと嫌われるが、そのかわり何事にも動じない性格と、険しい道でも走り続けることのできる強い脚を持っている」
不恰好だって? とんでもない!
マテオは逞しくて素晴らしい馬じゃないか。
「いや、ヴァンダーウォールの馬は美しいよ! 俺は好きだな! マテオ、お前は素晴らしい馬だぞ」
俺はマテオの首を敬意を込めて撫でる。
こんなに立派な馬が不恰好なものか。戦場でこの馬を見たら、敵の騎馬隊は怯むだろう。
それだけの強さがヴァンダーウォールの馬にはある。
「マテオ、サフィラスに褒めてもらえてよかったな」
後ろから聞こえてきたパーシヴァルの声は、心なしか嬉しそうだ。
確かに貴族が乗るような馬は美しさを求めてか線が細く、マテオとは大違いだ。ご令嬢を乗せるならそれでもいいだろうが、いざ戦や魔獣討伐となれば力不足は否めない。
何をおいても強さを求められる、それがヴァンダーウォールという土地なんだ。
☆ ☆ ☆
最初の宿に着いたのは日が暮れる前だった。
マテオはその健脚で、ほとんど休むことなく走り続けた。
この宿はベリサリオ家の定宿だそうで、大きい宿ではないけれど貴族も泊まる宿だけあって小綺麗で感じがいい。
「マテオを預けてくる。サフィラスはここで待っていてくれ」
「うん、わかった」
俺はエントランス前で下ろした荷物の見張り番だ。
夕飯はこの宿で食べられるらしいけれど、何が出てくるのか楽しみだな。
「おや、おや、これは結構な別嬪さんがいるじゃないか? この辺りじゃ見ない顔だな」
すでに酒が入っていると思われる若者が三人、俺の前で足を止める。
なんだか厄介ごとの匂いがしてきたぞ。
だけどすぐにパーシヴァルも戻ってくるだろうし、無用なトラブル回避のためにこれは相手にしないのが一番だ。
「君、一人なの?」
「今日はこの宿に泊まるつもり? ここよりも、安くてもっといい宿を紹介するから俺たちとおいでよ」
明らかに下心がありますって顔をして何を言っているんだ?
身なりからすると、貴族か金持ちの家の息子たちだろうか。
「おい、何か言ったらどうだ?」
視線を合わさず、返事も返さないでいると、若者の一人が声を荒らげ俺に手を伸ばしてきたので、その手をピシャリと叩き落とす。
「いてっ! 何しやがる!」
何しやがると言いたいのは俺の方だ。
無闇に触ろうとするなよ。
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