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俺がパーシヴァルの伴侶だって?! それってどう言うこと?

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 ……ん、温かい それになんだかふわふわ浮いてる
 オルトロス? それともユニサス? クロウラー、じゃないな クロウラーはもっと柔らかい ちょっと硬いけど この安定感はやっぱりユニサスだな 万が一落ちたら大変だから しっかり掴まっておかないと
 俺はユニサスに回した腕にぎゅっと力を込める
 それにしても、いつユニサスを召喚よんだんだろう?
 ……まぁ、いいか

 _……気分は悪くはないか?_

 ううん、全く むしろゆらゆらしてて気持ちがいいよ

 _そうか。ならば、そのまま寝ているといい_

 うん、そうする……
 なんか色々あった気がするけど、寝ていていいなら今は寝ちゃおう
 ああ、なんだかすごく安らぐなぁ 最高の寝心地だ
 なぁ、ユニサス このまま大陸の果てまで飛んで行ってくれないか……

 

 「……?」

 ぱっちりと目が覚めた俺は、すっかり見慣れた天井を見ながら瞬きを数度繰り返す。ここは俺が使わせてもらっている客間の寝台だな。
 一体いつの間に城に戻ってきたんだろう。
 昨夜はパーシヴァルとヨールのお祭りに行って……それから? 
 確か山賊焼っていうすごく美味しい山鳥を食べて、そのあとは……どうしたっけ? 首を傾げて昨夜のことを思い出しながら起き上がれば、テーブルの上に置いてある柊の冠が目に入った。

 「ヨールの冠……」

 なんとなく色々思い出してきたぞ。あの冠はパーシヴァルが買ってくれたんだ。その後、喧嘩している酔っ払いを杖で殴り倒した。それから広場に行って、キングスリーさん達と乾杯したんだった。それでどうしたんだっけ?
 んんんー? 乾杯後が全く思い出せないんだが……
 
 「まぁ、サフィラス様。お目覚めになっていらしたのですね。ご気分が優れないようなことはございませんか?」

 部屋に入ってきたアンナさんとクララベルさんが、慌てて俺のそばにやってきた。妙に心配されているけど、昨夜は何かあったんだろうか?

 「はい。今日も変わらず絶好調です……だけど、どうも昨夜の記憶が曖昧で。俺、いつ此処に戻ってきました?」

 「覚えていらっしゃらないのですね。昨夜のサフィラス様は意識を無くしていらして、パーシヴァル様が城まで背負って戻ってこられたのですよ」

 「ええぇ?」

 「まずはお水を飲んでくださいませ。レモネが絞ってありますから、気分がスッキリしますわ」

 アンナさんから水の入った洋盃を受け取った俺は、一息に中身を飲み干す。仄かな酸味と爽やかな香りに、シャキッと目が覚めた。
 思い出してきたぞ。昨夜は葡萄酒を一気飲みして、調子に乗って派手な花火を何発か打ち上げた。
 ……お祭りだから、花火は問題ないよな?
 その後の記憶がないのは、急激に酔っ払った所為で意識を失ったからだろう。

 「意識のないサフィラス様をパーシヴァル様が背負って城にお戻りになられた時は、本当に大騒ぎでした。特に奥様が大変心配なされて、パーシヴァル様に詰め寄られておりましたわ」

 「それは……申し訳なかったなぁ」

 前世では葡萄酒なんて食事時の水代わりに飲んでいた。だから平気だと思ったんだけど、今世の体は酒精に耐性がないようだ。今後は気をつけないと、また酒で身を滅ぼしかねない。
 俺はちゃんと学べる魔法使いだから、同じことは繰り返さないぞ。

 「朝食は召し上がれそうですか?」

 「はい!」

 勿論頂きますとも!
 俺が元気に答えれば、クララベルさんが朝食の乗ったワゴンを押してきてくれた。
 カリカリに焼いたベーコン。ふわふわに焼いた卵。クリーミーなじゃがいものスープとまだ温かい麺麭ぱん。どれもとても美味しい。酒の影響は全く残っていない感じ。二日酔いになっていたら、とてもじゃないが朝食なんて食べられなかった。
 それにしても、パーシヴァルは城まで俺を背負って帰って来てくれたのか。起きるまでその辺に放っておいてくれてもよかったんだけどな。責任感の塊のような男だからそんな事はできなかったんだろうけど。いくら鍛えているパーシヴァルでもきっと大変だっただろう。

 朝食を食べ終わった俺は、部屋を出て階下に降りる。この時間ならパーシヴァルも鍛錬を終えているだろうから、謝ってお礼を言わなきゃ。
 もうゲストもいないだろうし、自由に彷徨いても問題ないだろうと呑気に降りていったエントランスで、騎士や兵士、それに商人らしき人たちがわいわいと集まっていた。パーティって昼夜を問わず行われてるのかなって思ったけど、どうやらそうじゃない雰囲気。アデライン夫人とサンドリオンさんが対応しているけれど、なんだか少し困っているようだ。一体どうしたのかな?
 取り込んでいるようなので、声をかけるべきか迷っていれば、集まっていた人たちの1人とばっちり目があった。

 「おお! 盟友殿がいらしたぞ!」

 「精霊様! お目にかかれて光栄です!」

 「盟友殿、おめでとうございます!」

 「本当に目出たいことだ!」 

 「精霊様が盟友ならば、我がヴァンダーウォールも安泰だな!」

 集まっていた人たちが俺に向かって一斉に喋り出す。小っ恥ずかしい呼び名の中に、何故か祝いの言葉まで混じってる。
 えーっと、一体何がめでたいのかな?

 「あの……?」

 何が何やらよくわからず困惑していれば、中年の部隊長と言っても差し支えがない風格の男が、俺の前まで来て胸に手を当てて頭を下げた。

 「私はヴァンダーウォール軍、第四部隊隊長のイアン・ザリバンと申します。主に領都の警護を担当しております。昨夜の魔法も実に素晴らしいものでした。貴殿のような魔法使いがパーシヴァル殿の伴侶となられて、我々は大変心強く思っております」

 はい? 今なんとおっしゃっいました? パーシヴァルの伴侶? 俺が?!

 「テオドール様もカーティス様も、すでに素晴らしい伴侶を得ておられる。パーシヴァル様はどうなさるのかと心配しておりましたが、このように立派な方を迎えられていたとは。いやはや、なんの心配もありませんでしたな!」

 「急なことで驚きましたが、まずはお祝いを申しあげねばと、心ばかりではございますが祝いの品を持って駆けつけた次第です!」

 集まった人たちが、ザリバンさんに被せるように次々と、とんでもない事を口にする。
 ちょ、ちょっとまってくれ! 一体どんな誤解が広がっているんだ?
 いよいよ理解の範疇を超えた俺は、助けを求めてアデライン夫人に視線を向ける。

 「サフィラスさん、ごめんなさいね」

 眉を下げたアデライン夫人が何故か謝罪の言葉を口にした。しかも、まるでいたずらが見つかってしまった子供のような顔をしている。隣のサンドリオンさんも申し訳なさそうな表情を浮かべているじゃないか。
 いやいや? どういうこと? 本当に昨夜は一体何があったんだよ?!



 スザンナさんはお茶を淹れてお菓子を置くと、すぐに部屋を出ていった。扉を閉める前に、何故か俺に向かって深くお辞儀をしたのがとても気になる。
 気になる事は諸々あれど、とりあえず好奇心に負けた俺はパーシヴァルの部屋をくるっと見回す。学園の寮室は何度かお邪魔したことがあるけど、城の部屋は初めてだ。余計なものは一切なくて、広さ以外はほとんど寮の部屋と変わらない。この無駄がない感じ、パーシヴァルらしいよな。
 一通り興味を満たした俺は、改めてテーブルを挟んで正面に座っているパーシヴァルに視線を向ける。いつになく難しい顔をしている彼に、俺もちょっと緊張して背筋を伸ばした。
 どうしてパーシヴァルの部屋で2人向かい合って座っているかというと、あのエントランスでの騒ぎの中、パーシヴァルが慌てた様子でやってきたんだけど、彼が来たことで騒ぎは一層大きくなり収拾がつかなくなったのだ。
 ここでは落ち着いて話が出来ないからと、アデライン夫人にパーシヴァルの部屋に行くようにと言われた。
 パーシヴァルは俺をここまで案内してくれている間ずっと黙り込んでいた。俺もなんとなく黙っていたんだけど、これはもしかして、とんでもないやらかしをしでかした可能性がある。謝って済むことだったらいいけど、取り返しのつかない事だったらどうしよう。さすがの俺もちょっと青ざめる。

 「えーっと、あのさ……昨夜は一体何があったの? もしかして、俺、何かとんでもない事をやらかしちゃった?」

 恐る恐る尋ねてみた。

 「いいや、サフィラスは何も悪くはない。あの騒ぎの原因は俺だ。本当にすまない」

 立ち上がったパーシヴァルが、深々と頭を下げた。

 「え? ちょ、ちょっと! あの程度のことで、そんなに謝る必要はないだろ!」

 「いいや、俺は今までとても大事なことをサフィラスに黙っていた」

 「大事なこと?」

 「そうだ。その……盟友の指輪について、サフィラスに話していない事がある」

 え? この指輪?
 俺は左の中指にはまっている指輪に視線を向けた。

 「盟友の指輪?」

 「ああ。今回の事は、その指輪が大きく関係している」
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