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3.心音が蜘蛛の糸を垂らすなら、お前はどうすればいいか、分かるよな?
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天上下心音は焦っていた。
(清人君は何か企んでる。)
心音は確信めいたものがあった。そして、その企みで多くの生徒が犠牲になるであろうことも。だからこそ、絶対に阻止しなければならない。外道院の陰謀を、壊さなければならない。
(今は私の、できることを……!)
この広い天上下学園。バトルロワイアルが始まった今、たった10数人の参加者がすぐにエンカウントする確率は低いものの、用心に越したことはない。天上下心音は数々のすれ違う生徒の思考を読み取り、参加者を探していった。
心音が考えていることは、停戦協定だ。
参加者に停戦を持ちかけ、バトルロワイアル自体を成り立たなくさせる。誰も戦わなければ、死人も出ないし、被害も出ない。
この協定が結ばれる確率は極めて低いことなど、心音とて承知の上だ。
しかし、参加者が皆外道院に捕られている人質のために仕方なく参加しているのだとしたら、本音で言えば外道院の言いなりになって他者を殺すことに積極的ではないはずだ。
だから、皆がそれを望んでいなければ、戦闘が発生しないことがあるかもしれない。
戦局が進まなければ、外道院は人質を使って脅してくるだろうが、それはあくまで脅しだ。貴重な参加者、そして参加者の人質を殺して(壊して)しまえばバトルロワイアルが成り立たなくなる。
参加者がその脅しに屈せず、戦闘が起こらなかったら。
………バトルロワイアルは終了するかもしれない。
(……あまりにも、楽観的な考えだよね)
けれど、他に方法があるだろうか。外道院の言いなりになって、外道院だけが得をするバトルロワイアルを行って、皆が殺し合いをするくらいなら。停戦協定という一縷の望みに賭けた方がまだ、いいのではないか。希望が、あるのではないか。
外道院の高笑いが聞こえる。
幻聴だ。
だが、今頃生徒会室で1人、楽しくバトルロワイアル中継を観ているのは、想像に難くない。殺し合いが始まり、大爆笑している姿も。
(そんなのは、だめだ)
バトルロワイアル初の戦闘が始まってしまう前に、少しでも多くの参加者に強力を求めなくては。
天上下心音はその後、二人の参加者を見つけ、停戦協定を提言した。
本音のところは知らないが、二人は特に否定する様子もなく、その提案をのんだ。
その様子を狐面の少女、赤蜘蛛百合は見ていた。
(やはり。外道院の言った通りですね)
本日付けで天上下学園の生徒となった赤蜘蛛は、先日の生徒会室のことを思い出す。
外道院はこのことを予想していた。だから自分にあんなことを言ったのだろう。
「俺はたのしーいバトロワを観たいんだ。だーれもなんにもしない、物語が動かない映画なんて、誰も観たかねぇだろ? けど心音は違う。どうせあいつはアラソウノハヤメテーって言ってくる。停戦協定とかを持ちかけてくるかもしれない。参加者共はな、馬鹿で考えなしだから。もしかしたらそれに応じちまうかもしれねぇ。天から湧いてきた蜘蛛の糸だとでも思って、縋りついちゃうかもしれねぇ。でもな、そんなもんは意味がないんだ。殺し合いってのは、誰か1人でもヤっちまえば、自ずと起こっちゃうもんなんだよ。そうなったら止められない。誰だって自分が死ぬのは嫌だろ? そのために戦うんだ。……戦争だよ」
――心音が蜘蛛の糸を垂らすなら、お前はどうすればいいか、分かるよな? 赤蜘蛛。
(殺したい相手は、決まっているんですけどね)
そのために、天上下学園に入学し、外道院と契約したのだ。
因縁の相手――。
しかしずっと探しているものの、見当たらない。
赤蜘蛛は溜息をついた。
(まぁ、今はいいでしょう。とりあえず外道院に言われた通りに動くとしましょう。……あら、あれは?)
外道院から事前に貰った参加者の一覧。
その中でも目立つとある存在が目に入った。
(えっと、彼の能力は……)
プロフィール資料に目を通す。
そのデータを見て、赤蜘蛛は固まった。
『能力:切れ痔にする』
(清人君は何か企んでる。)
心音は確信めいたものがあった。そして、その企みで多くの生徒が犠牲になるであろうことも。だからこそ、絶対に阻止しなければならない。外道院の陰謀を、壊さなければならない。
(今は私の、できることを……!)
この広い天上下学園。バトルロワイアルが始まった今、たった10数人の参加者がすぐにエンカウントする確率は低いものの、用心に越したことはない。天上下心音は数々のすれ違う生徒の思考を読み取り、参加者を探していった。
心音が考えていることは、停戦協定だ。
参加者に停戦を持ちかけ、バトルロワイアル自体を成り立たなくさせる。誰も戦わなければ、死人も出ないし、被害も出ない。
この協定が結ばれる確率は極めて低いことなど、心音とて承知の上だ。
しかし、参加者が皆外道院に捕られている人質のために仕方なく参加しているのだとしたら、本音で言えば外道院の言いなりになって他者を殺すことに積極的ではないはずだ。
だから、皆がそれを望んでいなければ、戦闘が発生しないことがあるかもしれない。
戦局が進まなければ、外道院は人質を使って脅してくるだろうが、それはあくまで脅しだ。貴重な参加者、そして参加者の人質を殺して(壊して)しまえばバトルロワイアルが成り立たなくなる。
参加者がその脅しに屈せず、戦闘が起こらなかったら。
………バトルロワイアルは終了するかもしれない。
(……あまりにも、楽観的な考えだよね)
けれど、他に方法があるだろうか。外道院の言いなりになって、外道院だけが得をするバトルロワイアルを行って、皆が殺し合いをするくらいなら。停戦協定という一縷の望みに賭けた方がまだ、いいのではないか。希望が、あるのではないか。
外道院の高笑いが聞こえる。
幻聴だ。
だが、今頃生徒会室で1人、楽しくバトルロワイアル中継を観ているのは、想像に難くない。殺し合いが始まり、大爆笑している姿も。
(そんなのは、だめだ)
バトルロワイアル初の戦闘が始まってしまう前に、少しでも多くの参加者に強力を求めなくては。
天上下心音はその後、二人の参加者を見つけ、停戦協定を提言した。
本音のところは知らないが、二人は特に否定する様子もなく、その提案をのんだ。
その様子を狐面の少女、赤蜘蛛百合は見ていた。
(やはり。外道院の言った通りですね)
本日付けで天上下学園の生徒となった赤蜘蛛は、先日の生徒会室のことを思い出す。
外道院はこのことを予想していた。だから自分にあんなことを言ったのだろう。
「俺はたのしーいバトロワを観たいんだ。だーれもなんにもしない、物語が動かない映画なんて、誰も観たかねぇだろ? けど心音は違う。どうせあいつはアラソウノハヤメテーって言ってくる。停戦協定とかを持ちかけてくるかもしれない。参加者共はな、馬鹿で考えなしだから。もしかしたらそれに応じちまうかもしれねぇ。天から湧いてきた蜘蛛の糸だとでも思って、縋りついちゃうかもしれねぇ。でもな、そんなもんは意味がないんだ。殺し合いってのは、誰か1人でもヤっちまえば、自ずと起こっちゃうもんなんだよ。そうなったら止められない。誰だって自分が死ぬのは嫌だろ? そのために戦うんだ。……戦争だよ」
――心音が蜘蛛の糸を垂らすなら、お前はどうすればいいか、分かるよな? 赤蜘蛛。
(殺したい相手は、決まっているんですけどね)
そのために、天上下学園に入学し、外道院と契約したのだ。
因縁の相手――。
しかしずっと探しているものの、見当たらない。
赤蜘蛛は溜息をついた。
(まぁ、今はいいでしょう。とりあえず外道院に言われた通りに動くとしましょう。……あら、あれは?)
外道院から事前に貰った参加者の一覧。
その中でも目立つとある存在が目に入った。
(えっと、彼の能力は……)
プロフィール資料に目を通す。
そのデータを見て、赤蜘蛛は固まった。
『能力:切れ痔にする』
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