怪奇短篇書架 〜呟怖〜

第158話 死者に命を。

死者に命を口移す呪法がある。
私は再び彼女に会いたい一心で生贄を用意し、殺しながら吸い出した命を彼女の亡骸へ移した。

命は元の持ち主の人格を有さない。
きっとまた彼女として微笑みかけてくれるはず。

そう期待していると唇に吸い付かれた。
まるで、一人分では足りないというように。