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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第131話 歓迎の宴
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エンジェラ河を眼下に見下ろす城塞回廊にマデュラ騎士団騎士と従士が一堂に会しセルジオ達一行を出迎えた。
胸壁にランプが灯され、その明るさから空中に浮かんでいる様に感じられる。
両脇に控える騎士と従士の中央を進むコーエンの後に続いた。
落とし格子が上がり、屋敷の門が開かれる。
門を潜ると駆け寄ってきた厩舎番に馬を預ける様に促される。
コーエンに倣い、バルドとオスカーはセルジオとエリオス、荷物を下ろした。
「お荷物は従士にお任せ下さい。滞在頂くお部屋まで運んでおきます」
コーエンのあまりににこやかな対応にバルドとオスカーは違和感を覚えた。
「お心使い感謝申します。されど荷物運びは訓練の一つと考えております。その旨ご承知下さい」
丁寧な口調でバルドは荷物を預ける事を断った。
予備の武具が入っていることもあるが、セルジオとエリオスの身を守るために準備された様々な品が収められている。
己の身を守る為に身の回りの物はできるだけ己の手元から離さぬ様にとセルジオとエリオスに教え込んでいた。
「・・・そう・・・ですか・・・・」
コーエンは残念そうに荷物を受け取ろうと控えていた従士に退く様、目配せをする。
「お心使い感謝申します」
バルドとオスカーは左手を胸にあて、コーエンに礼を述べた。
屋敷の通路は天井が低く、アーチ形の出入口が縦横無尽に張り巡らされたアリの巣の様で、一度迷えば入り口に戻る事すら困難な造りになっていた。
さっさっと進むコーエンに遅れを取らない様についていく。
ひと際大きな出入口の前でコーエンは足を止めた。
「ここは礼拝堂です。城下の街とは別に設えられた騎士団専用の礼拝堂です。役目で命を落とした者達の弔いの場でもあります」
中を覗くと壁一面に髑髏が埋め込まれていた。
地下を墓地としている居城や城塞は珍しくない。しかし、日々行き交う者が絶えない場所に礼拝堂を設き、髑髏を敷き詰める等シュタイン王国ではあり得ない事だった。
「ここは日々忙しなく皆が行き交います。皆の姿が見え、死した事すら忘れてしまう程に賑やかな中で眠りにつくのです」
コーエンは胸の前で両手を結んだ。
「我らは死して尚、マデュラ騎士団の騎士であり続ける。これ程の誉れはございません」
そうある事が当たり前の正義や押し付けられた忠誠では、到底たどり着くことができない騎士団への思い入れだろう。
バルドとオスカーは顔を見合わせ、マデュラ騎士団の狂信とも思える思い入れの深さに空恐ろしさを感じた。
『行く先の行いを一つ間違えば・・・・王国が滅びかねない』
バルドは王都騎士団総長がマデュラ騎士団を快く思わない訳が解った様に思った。
その後、部屋なのか通路なのか入り組んだアーチ形の出入口を右へ左へコーエンの後に続き進み扉の前でコーエン後ろを振り返った。
「食堂になります。今宵は皆さまの歓迎の宴を準備しました。さっ、どうぞ、お入り下さい」
ガコンッ!!
ギィィィィーーー
コーエンが扉を開けると
「うおぉぉぉぉぉ」
振動を伴う雄叫びがセルジオ達を出迎えた。
「ようこそ、マデュラ騎士団へっ!今宵の宴は喜びの宴っ!食べつくそう、飲み明かそう、笑い転げよう、我らマデュラの家族と共にっ!」
回廊の両脇で出迎えた騎士と従士が勢ぞろいし、声高に声を上げた。
中央から団長ブレンが歩み寄る。
「改めまして、マデュラ騎士団城塞へ、よくぞお越し下さいました。今宵は大いに楽しんで頂きたく準備致しました。旅のお疲れもあろうかと存じますが、どうぞお付き合い下さい」
ブレンが跪くと食堂に集う騎士と従士も一斉に跪いた。
訓練場の丘の上から見た光景と同じく、その統制の取れた動きは度肝を抜かれる。
バルドはセルジオへ目を向けた。
セルジオは臆することなく団長ブレンの前に進み出た。
「マデュラ騎士団団長ブレン様、そして、マディラ騎士団の皆さま、我らへの多大なるお心使い感謝もうします。改めてご挨拶致します。王都騎士団総長の命により各貴族騎士団の友好を深める為馳せ参じましたセルジオ騎士団団長名代、セルジオにございます。我が守護の騎士エリオス、並びに我らが師バルドとオスカーにございます。滞在の間、どうぞよろしくお頼み申します」
セルジオが左手を胸にあて騎士の挨拶で返礼をした。同時にエリオス、バルド、オスカーも倣う。
「ほう・・・・」
4人の姿に溜息が漏れた。
「ご丁寧なご挨拶痛み入ります。さっ、どうぞこちらへ」
ブレンがセルジオ達を誘った。
ザッ!!!
一斉に道があけられる。
セルジオ達を席に着かせるとブレンが号令をかけた。
「皆の者っ!祝杯の準備をっ!」
ブレンの号令で調理場から料理人と給仕の者が現れ、テーブルの上は見る見る豪奢な料理で埋め尽くされた。
杯に飲み物が行き渡るとブレンは杯を手に立ち上がった。
「青き血が流れるコマンドールにっ!マデュラ騎士団騎士と従士にっ!マデュラの全ての家族にっ!幸あらんことをっ!!乾杯っ!!!」
「乾杯っ!!!」
マデュラ騎士団城塞の宴が始まった。
【春華のひとり言】
今日もお読み下さり、ありがとうございます。
マデュラ騎士団屋敷から騎士や従士の思い入れの深さが明らかになりました。
狂信的とも思えるその思い入れの深さにバルドは王都騎士団総長がマデュラを遠ざける理由を垣間見ます。
理念や信念が独断場で膨張する恐ろしさは今も昔も変わらない危うさを孕みますね。
柔軟な姿勢、柔軟な考え方を持ちたいと思います。
次回は、大変お待たせを致しました。セルジオとエリオス、ブレン団長の手合わせの模様の回となります。
右足を打撲したセルジオ、肩を脱臼したエリオス、ブレン団長は無傷だったのか・・・・
次回もよろしくお願い致します。
胸壁にランプが灯され、その明るさから空中に浮かんでいる様に感じられる。
両脇に控える騎士と従士の中央を進むコーエンの後に続いた。
落とし格子が上がり、屋敷の門が開かれる。
門を潜ると駆け寄ってきた厩舎番に馬を預ける様に促される。
コーエンに倣い、バルドとオスカーはセルジオとエリオス、荷物を下ろした。
「お荷物は従士にお任せ下さい。滞在頂くお部屋まで運んでおきます」
コーエンのあまりににこやかな対応にバルドとオスカーは違和感を覚えた。
「お心使い感謝申します。されど荷物運びは訓練の一つと考えております。その旨ご承知下さい」
丁寧な口調でバルドは荷物を預ける事を断った。
予備の武具が入っていることもあるが、セルジオとエリオスの身を守るために準備された様々な品が収められている。
己の身を守る為に身の回りの物はできるだけ己の手元から離さぬ様にとセルジオとエリオスに教え込んでいた。
「・・・そう・・・ですか・・・・」
コーエンは残念そうに荷物を受け取ろうと控えていた従士に退く様、目配せをする。
「お心使い感謝申します」
バルドとオスカーは左手を胸にあて、コーエンに礼を述べた。
屋敷の通路は天井が低く、アーチ形の出入口が縦横無尽に張り巡らされたアリの巣の様で、一度迷えば入り口に戻る事すら困難な造りになっていた。
さっさっと進むコーエンに遅れを取らない様についていく。
ひと際大きな出入口の前でコーエンは足を止めた。
「ここは礼拝堂です。城下の街とは別に設えられた騎士団専用の礼拝堂です。役目で命を落とした者達の弔いの場でもあります」
中を覗くと壁一面に髑髏が埋め込まれていた。
地下を墓地としている居城や城塞は珍しくない。しかし、日々行き交う者が絶えない場所に礼拝堂を設き、髑髏を敷き詰める等シュタイン王国ではあり得ない事だった。
「ここは日々忙しなく皆が行き交います。皆の姿が見え、死した事すら忘れてしまう程に賑やかな中で眠りにつくのです」
コーエンは胸の前で両手を結んだ。
「我らは死して尚、マデュラ騎士団の騎士であり続ける。これ程の誉れはございません」
そうある事が当たり前の正義や押し付けられた忠誠では、到底たどり着くことができない騎士団への思い入れだろう。
バルドとオスカーは顔を見合わせ、マデュラ騎士団の狂信とも思える思い入れの深さに空恐ろしさを感じた。
『行く先の行いを一つ間違えば・・・・王国が滅びかねない』
バルドは王都騎士団総長がマデュラ騎士団を快く思わない訳が解った様に思った。
その後、部屋なのか通路なのか入り組んだアーチ形の出入口を右へ左へコーエンの後に続き進み扉の前でコーエン後ろを振り返った。
「食堂になります。今宵は皆さまの歓迎の宴を準備しました。さっ、どうぞ、お入り下さい」
ガコンッ!!
ギィィィィーーー
コーエンが扉を開けると
「うおぉぉぉぉぉ」
振動を伴う雄叫びがセルジオ達を出迎えた。
「ようこそ、マデュラ騎士団へっ!今宵の宴は喜びの宴っ!食べつくそう、飲み明かそう、笑い転げよう、我らマデュラの家族と共にっ!」
回廊の両脇で出迎えた騎士と従士が勢ぞろいし、声高に声を上げた。
中央から団長ブレンが歩み寄る。
「改めまして、マデュラ騎士団城塞へ、よくぞお越し下さいました。今宵は大いに楽しんで頂きたく準備致しました。旅のお疲れもあろうかと存じますが、どうぞお付き合い下さい」
ブレンが跪くと食堂に集う騎士と従士も一斉に跪いた。
訓練場の丘の上から見た光景と同じく、その統制の取れた動きは度肝を抜かれる。
バルドはセルジオへ目を向けた。
セルジオは臆することなく団長ブレンの前に進み出た。
「マデュラ騎士団団長ブレン様、そして、マディラ騎士団の皆さま、我らへの多大なるお心使い感謝もうします。改めてご挨拶致します。王都騎士団総長の命により各貴族騎士団の友好を深める為馳せ参じましたセルジオ騎士団団長名代、セルジオにございます。我が守護の騎士エリオス、並びに我らが師バルドとオスカーにございます。滞在の間、どうぞよろしくお頼み申します」
セルジオが左手を胸にあて騎士の挨拶で返礼をした。同時にエリオス、バルド、オスカーも倣う。
「ほう・・・・」
4人の姿に溜息が漏れた。
「ご丁寧なご挨拶痛み入ります。さっ、どうぞこちらへ」
ブレンがセルジオ達を誘った。
ザッ!!!
一斉に道があけられる。
セルジオ達を席に着かせるとブレンが号令をかけた。
「皆の者っ!祝杯の準備をっ!」
ブレンの号令で調理場から料理人と給仕の者が現れ、テーブルの上は見る見る豪奢な料理で埋め尽くされた。
杯に飲み物が行き渡るとブレンは杯を手に立ち上がった。
「青き血が流れるコマンドールにっ!マデュラ騎士団騎士と従士にっ!マデュラの全ての家族にっ!幸あらんことをっ!!乾杯っ!!!」
「乾杯っ!!!」
マデュラ騎士団城塞の宴が始まった。
【春華のひとり言】
今日もお読み下さり、ありがとうございます。
マデュラ騎士団屋敷から騎士や従士の思い入れの深さが明らかになりました。
狂信的とも思えるその思い入れの深さにバルドは王都騎士団総長がマデュラを遠ざける理由を垣間見ます。
理念や信念が独断場で膨張する恐ろしさは今も昔も変わらない危うさを孕みますね。
柔軟な姿勢、柔軟な考え方を持ちたいと思います。
次回は、大変お待たせを致しました。セルジオとエリオス、ブレン団長の手合わせの模様の回となります。
右足を打撲したセルジオ、肩を脱臼したエリオス、ブレン団長は無傷だったのか・・・・
次回もよろしくお願い致します。
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