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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第98話 清めの儀式2
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アロイスとラルフに対面するのはクリソプ男爵領以来、3ヵ月ぶりだった。
アロイスは背丈が更に高くなり、銀色に輝く長い髪、深い緑色の瞳が氷の貴公子の呼称そのものを感じさせた。
椅子から立ち上がり、その場で跪く4人にアロイスはゆっくりと近づく。
セルジオとエリオスの前で膝を折るとフワリと優しく抱き寄せた。
「お二人に会うのは3ヵ月ぶりですね。少しの間に随分と逞しくなりました。背も伸びたのではありませんか?」
2人の頬に己の頬を寄せる。
氷の貴公子の二つ名とはおよそ似つかわしくない姿で柔らかな温もりを感じさせる抱擁だった。
「はい、私もエリオスも背が随分と伸びたのですよ。もうすぐバルドの腰の高さにとどきます」
セルジオは嬉しそうにアロイスの背中に手を回した。
「そうですか。頼もしい限りです。エリオス殿は肉付きもよくなりましたね」
アロイスはエリオスの背中をさすった。
「はい、騎士団巡回から西の屋敷に戻るまでに双剣の扱いができる様に訓練しております」
騎士叙任式を迎えるまで剣は木製のものしか扱えないがエリオスはバルドから双剣術の訓練を受け初めていた。
双剣を扱うには腕力よりも腹筋と背筋の可動範囲を広げる事が肝となる。
バルドとオスカーはエリオスに筋力を上げる
訓練を付け加えていた。
「そうですか!双剣術の訓練を始められたのですね。是非とも手合わせをお願いしたいものです」
アロイスは成長目覚ましい2人をギュッと抱きしめるとすっくと立ち上がった。
「失礼をしました。お2人があまりにも頼もしく成長されたので、嬉しくお話の腰を折りました。クロード殿、清めの儀式の説明は済みましたか?」
アロイスは居合わせた皆に椅子に座る様、促す。
「これからにございます。丁度、そのお話に入る所でした」
クロードは軽く頭を下げてから椅子に座った。
「そうですか。では、我らも同席させて頂きます。ラルフ、そなたも席につけ」
アロイスが座った椅子の後ろで控えていたラルフへも隣に座る様に促した。
風を操るラルフは風の魔導士ポルデュラに魔術の手ほどきを受けていた。
セルジオ達の清めの儀式に同席できないポルデュラが大事を取ってアロイスに同行させたのだ。
アロイスは全員が席につくとクロードに話を進める様促した。
「クロード殿の儀式の説明の後に我らの役割をお話します。では、クロード殿、頼みます」
「はい、かしこまりました」
クロードは静かに話を続けた。
まず、清めの儀式は4人揃って行う。神殿の奥にある水汲み場から岩壁に沿って下方へ延びる階段がある。
階段の下に儀式を行う祭場が設えてあった。
聖水が岩壁を伝い、細い滝が何本も落ちている。
白い衣を纏い、その滝の下で身体を清める。
バルドはクロードの話に耳を傾けつつ、朝日が昇る前から儀式が始まる事で冷たい聖水の滝に打たれ、セルジオとエリオスの身体が冷えきってしまわないか不安を覚えた。
オスカーはバルドの不安を察知すると先ほどと同じようにそっとバルドの手をさすった。
「バルド様がご案じされてみえる聖水の冷たさですが、祭場へは温泉も引き入れています。
上部からは冷たい聖水が落ちてはきますが、足元は温泉で温かいのです」
クロードはバルドの不安そうな仕草に説明を付け加えた。
上部から落ちる細い滝で身体を清めた後、そのままの姿勢で岩壁の天井を見上げる様に顎を上げる。
身体の内側を清めるため、聖水を口から取り入れる。
この動作を7回繰り返すと心身が清められ、清めの儀式の終了となる。
「皆様には心身が清められていく想像をしていただきたいのです。金色の光に満ちた聖水が頭から足へ向けて流れ落ちると身体の外側が清められる。口から聖水を取り入れ、身体の内側を巡り足元から抜けていく。そんな想像をして下さればよろしいかと存じます」
「ポルデュラ様のお話ではセルジオ様は精霊の言の葉を耳にされたそうですね。初代セルジオ様のお姿に至っては水の城塞でアロイス様もご一緒に言葉を交わされたとか。常人が目にできぬモノやコトを目にされた皆様でしたら聖水からあふれ出る金色の光もご覧いただける事でしょう。なれば儀式の効果も上がるというもの。心身ともに最上の清めとなりましょう」
クロードはセルジオ達4人に微笑みを向けた。
「アロイス様、儀式の説明はこの辺りにて。後は明朝、祭場にてお伝え致します」
クロードは清めの儀式の説明を終えた。
「クロード殿、感謝する。後は実際に祭場を目にしてからの方がよいかもしれぬな。承知した。では、ここからは私が話をさせて頂きましょう」
アロイスはクロードから話し手の役目を引き継いだ。
アロイスは背丈が更に高くなり、銀色に輝く長い髪、深い緑色の瞳が氷の貴公子の呼称そのものを感じさせた。
椅子から立ち上がり、その場で跪く4人にアロイスはゆっくりと近づく。
セルジオとエリオスの前で膝を折るとフワリと優しく抱き寄せた。
「お二人に会うのは3ヵ月ぶりですね。少しの間に随分と逞しくなりました。背も伸びたのではありませんか?」
2人の頬に己の頬を寄せる。
氷の貴公子の二つ名とはおよそ似つかわしくない姿で柔らかな温もりを感じさせる抱擁だった。
「はい、私もエリオスも背が随分と伸びたのですよ。もうすぐバルドの腰の高さにとどきます」
セルジオは嬉しそうにアロイスの背中に手を回した。
「そうですか。頼もしい限りです。エリオス殿は肉付きもよくなりましたね」
アロイスはエリオスの背中をさすった。
「はい、騎士団巡回から西の屋敷に戻るまでに双剣の扱いができる様に訓練しております」
騎士叙任式を迎えるまで剣は木製のものしか扱えないがエリオスはバルドから双剣術の訓練を受け初めていた。
双剣を扱うには腕力よりも腹筋と背筋の可動範囲を広げる事が肝となる。
バルドとオスカーはエリオスに筋力を上げる
訓練を付け加えていた。
「そうですか!双剣術の訓練を始められたのですね。是非とも手合わせをお願いしたいものです」
アロイスは成長目覚ましい2人をギュッと抱きしめるとすっくと立ち上がった。
「失礼をしました。お2人があまりにも頼もしく成長されたので、嬉しくお話の腰を折りました。クロード殿、清めの儀式の説明は済みましたか?」
アロイスは居合わせた皆に椅子に座る様、促す。
「これからにございます。丁度、そのお話に入る所でした」
クロードは軽く頭を下げてから椅子に座った。
「そうですか。では、我らも同席させて頂きます。ラルフ、そなたも席につけ」
アロイスが座った椅子の後ろで控えていたラルフへも隣に座る様に促した。
風を操るラルフは風の魔導士ポルデュラに魔術の手ほどきを受けていた。
セルジオ達の清めの儀式に同席できないポルデュラが大事を取ってアロイスに同行させたのだ。
アロイスは全員が席につくとクロードに話を進める様促した。
「クロード殿の儀式の説明の後に我らの役割をお話します。では、クロード殿、頼みます」
「はい、かしこまりました」
クロードは静かに話を続けた。
まず、清めの儀式は4人揃って行う。神殿の奥にある水汲み場から岩壁に沿って下方へ延びる階段がある。
階段の下に儀式を行う祭場が設えてあった。
聖水が岩壁を伝い、細い滝が何本も落ちている。
白い衣を纏い、その滝の下で身体を清める。
バルドはクロードの話に耳を傾けつつ、朝日が昇る前から儀式が始まる事で冷たい聖水の滝に打たれ、セルジオとエリオスの身体が冷えきってしまわないか不安を覚えた。
オスカーはバルドの不安を察知すると先ほどと同じようにそっとバルドの手をさすった。
「バルド様がご案じされてみえる聖水の冷たさですが、祭場へは温泉も引き入れています。
上部からは冷たい聖水が落ちてはきますが、足元は温泉で温かいのです」
クロードはバルドの不安そうな仕草に説明を付け加えた。
上部から落ちる細い滝で身体を清めた後、そのままの姿勢で岩壁の天井を見上げる様に顎を上げる。
身体の内側を清めるため、聖水を口から取り入れる。
この動作を7回繰り返すと心身が清められ、清めの儀式の終了となる。
「皆様には心身が清められていく想像をしていただきたいのです。金色の光に満ちた聖水が頭から足へ向けて流れ落ちると身体の外側が清められる。口から聖水を取り入れ、身体の内側を巡り足元から抜けていく。そんな想像をして下さればよろしいかと存じます」
「ポルデュラ様のお話ではセルジオ様は精霊の言の葉を耳にされたそうですね。初代セルジオ様のお姿に至っては水の城塞でアロイス様もご一緒に言葉を交わされたとか。常人が目にできぬモノやコトを目にされた皆様でしたら聖水からあふれ出る金色の光もご覧いただける事でしょう。なれば儀式の効果も上がるというもの。心身ともに最上の清めとなりましょう」
クロードはセルジオ達4人に微笑みを向けた。
「アロイス様、儀式の説明はこの辺りにて。後は明朝、祭場にてお伝え致します」
クロードは清めの儀式の説明を終えた。
「クロード殿、感謝する。後は実際に祭場を目にしてからの方がよいかもしれぬな。承知した。では、ここからは私が話をさせて頂きましょう」
アロイスはクロードから話し手の役目を引き継いだ。
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