上 下
122 / 216
第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第60話 勝敗の行方

しおりを挟む
ザッザザッ!!
ザッザザッ!!

主審の号令にセルジオとエリオスは木剣を構えた。

セルジオは左脇へ木剣を据える。エリオスは右脇へ木剣を据えた。

「ふぅぅぅぅ・・・・」
「ふぅぅぅぅ・・・・」

セルジオとエリオスは呼吸を合わせる。

ゴッ!!!
ゴッ!!!

次の瞬間、木剣を構える方向へ地面を蹴った。

ザザザッ!!!
ザザザッ!!!

2人は左右へ離れたかと思うと一気にきびすを返した。

ズザザッ!!!
ズザザッ!!!

対峙するフェルディへ向け左右から突進する。

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!
ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!
ズザザッザッ!!!

左右からフェルディの両手に携えられた木剣へ切り込みを入れるとそのまま対角線上に北へ向けて走った。

「・・・・うっ・・・・」

正面から2人が切り込んでくると考えていたフェルディは左右からの同時の攻撃に戸惑いを見せた。

しかも敢えてフェルディが握る木剣目掛けて切り込んできている。

低さを活かして両足への攻撃がされると踏んでいたフェルディはセルジオとエリオスの動きを掴みかねていた。

北へ向け疾走したセルジオとエリオスの姿を捉えようと身体の正面を北へ向ける。

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!
ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!
ズザザッザッ!!!

既に目の前まで来ていたセルジオとエリオスは北側へ正面を向けたフェルディの木剣を先ほどと同じ様に左右から切り込みを入れた。

グラリッ・・・・

あまりの勢いにフェルディの足元がふらついた。

「・・・・うっ・・・・これはっ・・・・」

瞬く間に視界から外れるセルジオとエリオスの姿を体勢を整えながら探す。

ズザザッザッ!!!
ズザザッザッ!!!

フェルディはセルジオとエリオスが同じ様に左右から突進してくる姿を捉えた。

「そうそう、同じ手は食わぬぞっ!!!」

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!

ブンッブンッブンッ・・・・
カランッ!!!!

ズザザッザッ!!!
ガキンッ!!!

ブンッブンッブンッ・・・・
カランッ!!!!

フェルディは大きく左右に木剣を振るうとセルジオとエリオスが握る木剣を弾き飛ばした。

スタタタタッ!!!!
スタタタタッ!!!!

弾き飛ばされた木剣を見向きもせずにセルジオとエリオスはそのまま対角線上へ走り抜ける。

シャッ!!!
シャッ!!!

走り抜けるのと同時に腰に携えられた木製の短剣を鞘から抜いた。

ズザザッザッ!!!
ズザザッザッ!!!

ブワンッ!!!!

フェルディへ向き直るセルジオの身体から青白い炎が大きく湧き立った。

ズザザッザッ!!!
ズザザッザッ!!!

ワンッワンッ・・・・

エリオスの身体が白銀色の膜に覆われてる。

ザワッザワッ・・・・
ザワッザワッ・・・・

青白い炎を湧き立たせたセルジオと白銀色の膜に覆われたエリオスの姿に場外からどよめきが湧いた。

「・・・・ほう、あれが古から伝わる青白き炎ですか・・・・」

カリソベリル伯爵がポツリと呟いた。

「・・・・」

セルジオの実父、エステール伯爵ハインリヒは無言でその姿を見つめていた。

「・・・・」

カリソベリル騎士団団長フレイヤは2人の当主へチラリと目を向けると戦闘の続きを静かに見守った。

ズザザッザッ!!!
ズザザッザッ!!!

北側から青白い炎を携えたセルジオが、南側から白銀色の膜に覆われたエリオスが木製の短剣を構えフェルディへ突進した。

「短剣では私を討つ事はできぬっ!!!」

フェルディは両手を身体の正面で交差すると突進してくるセルジオとエリオスの頭上目掛けて大きく振り下ろした。

ドカッ!!!!
ドカッ!!!!

フェルディの振り下ろした木剣の剣先が地面に突き刺さる。

「うっ!!!どこに!!!」

ダンッ!!!!
ググッ!!!!

ダンッ!!!!
ググッ!!!!

振り下ろされた木剣を足場にセルジオとエリオスは宙を舞った。

フェルディが身に付ける革製の胸当ての間に片方の木製の短剣を射し込む。

フェルディの腰に足を掛けると首筋に前後から木製の短剣の切っ先を押しあてた。

スチャッ!!!!
スチャッ!!!!

「・・・・うっ・・・・」

フェルディは何が起こったのか暫く把握できずその場で直立していた。

セルジオとエリオスは声を揃えてフェルディへ降参をほのめかす。

「フェルディ様、お命落しました」

「・・・・うっ・・・・こっ・・・・これはっ・・・・うっ・・・・」

降参の言葉が出るまでは戦闘は続いている。

ググッ!!!!
ググッ!!!!

セルジオとエリオスはフェルディの首筋前後から押しあてた木製の短剣の切っ先を離すと首の左右に短剣の刃をあてた。

再び降参をほのめかす。

「フェルディ様、お命落しました」

既に勝敗がついていることは誰の目にも明らかだった。

主審が近づきフェルディへ降参の意向を確認する。

「フェルディ様、既に勝敗は出ているかと思いますが、いかがいたしますか?このまま続けますか?」

主審は敢えて降参の言葉を使わずに戦闘を続けるかの確認としたのだ。

カリソベリル伯爵によって仕組まれ、手合わせが御前試合となった。

カリソベリル騎士団第一隊長であるフェルディもその企みは知っていた。
そして、まさか敗けるとは思ってもみなかったのだ。

それもあっと言う間に応戦らしい応戦をすることなく一方的に敗けた。

いくら青き血が流れるコマンドールの再来と謳われるセルジオとその守護の騎士であるエリオスだと言えども所詮しょせんはまだ子供だ。

子供相手に御前試合などと思っていたし、少し木剣を交えてそれらしく見せればカリソベリル伯爵も気が済むであろうと考えていた。

ググッ!!!!
ググッ!!!!

徐々に強く木製の短剣が首筋の左右から押し込まれてくる。

セルジオとエリオスの表情にもはや子供とは思えずにいた。

タラリッ・・・・
ゴクンッ・・・・

フェルディはこめかみから冷たい汗が流れるのを感じると固唾かたずを飲む。

「・・・・ふぅ・・・・参りました・・・・」

フェルディは降参をした。

主審はコクリと頷くと手にした木剣を掲げた。

「この度の御前試合!勝者はセルジオ騎士団っ!
敗者はカリソベリル騎士団っ!
双方、御前にて礼を尽くされよっ!」


うわぁぁぁぁぁ!!!!
うおぉぉぉぉぉ!!!!

主審の勝敗宣言に場外から歓声が上がった。





【春華のひとり言】

今日もお読み頂きありがとうございます。

あっと言う間に終った御前試合。

セルジオとエリオスの連携は見事なものでした。

相手が誰であろうと全力を出し切るのが騎士道なのでしょうが、今回はフェルディさん、お気の毒でした。

全力を出そうにも躊躇しますよね。

改めて『侮ることなかれ』を肝に銘じたいと思います。

次回はカリソベリル伯爵ベルホルトの企みが明らかになります。

はてさて、彼の思惑とは・・・・

お楽しみにして頂けると嬉しいです。

次回もよろしくお願い致します。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

処理中です...