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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第52話 魔力と願いの融合

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バルドとセルジオの身体が円卓に横たわるとポルデュラは左手二本指を唇にあてた。

「ふぅぅぅぅ・・・・」

細く長い銀色の糸の様なものが口から静かに伸びてくる。

サッ!!!

ポルデュラは銀色の糸を右手でさっと絡み取ると袖口から六角形の月の雫を取り出した。

ベアトレスに蝋燭ろうそくの灯る燭台しょくだいを持ってくる様に言う。

「ベアトレス、ロウを円卓の私の前に垂らしてくれ」

ベアトレスはポルデュラに言われた通り、燭台しょくだいを斜めに倒すとロウを垂らした。

ポタリッ・・・・
ポタリッ・・・・

ロウが銀貨の大きさ程になるとポルデュラはそこでやめる様にベアトレスに指示する。

「ベアトレス、もうよいぞ。暫くそのまま燭台を手にしていてくれるか」

「はい、承知しました」

ベアトレスは燭台を手にしたままポルデュラの後ろへ一歩下がった。

ポルデュラは円卓に垂らされたロウの上に六角形の月の雫を乗せると固定する。

グッグッ!

右手に絡めていた銀色の糸を六角形の月の雫の頂点にそっと乗せた。

ワンッ!!

六角形の月の雫があたかも蝋燭の様に銀色の光を灯している。

スッ・・・・

ポルデュラは六芒星の西に位置していた風の頂点から移動すると南の頂点にいる火のカルラの左横に立った。

「ふぅぅぅぅ・・・・」

先程と同じ様に左手二本指を唇にあてると銀色の糸を出す。右手で絡めとり、ベアトレスに円卓にロウを垂らさせた。

六角形の月の雫を垂らされたロウの上に置くとカルラに椅子に腰かける様に言う。

「カルラ、月の雫の頂点に魔力を込めるのじゃ。魔力を込めたら腰かけてもよいぞ」

「はっ!」

カルラは左掌を上に向けると真紅の炎を乗せる。

フワッ・・・・

真紅の炎を月の雫の頂点に乗せた。

ワンッ!

ポルデュラは真紅の炎に絡める様に銀色の糸を巻き付ける。

続いて北東にいる正義のオスカーへ歩み寄った。

同じ様に六角形の月の雫を固定する。

「オスカー、そなたは左掌を月の雫の頂点に乗せてるのじゃ」

「はっ!」

オスカーはポルデュラに言われた通り、左掌を月の雫の頂点に乗せた。

ポルデュラがオスカーの左手甲の上に両手をかざす。

「青き血が流れるコマンドール、正義の力を宿す守護の騎士。
4つの元素エレメントの助けとなりてその力、陣に移す」

ウワンッ!!

オスカーの左手が銀色の光で包まれた。
ポルデュラは銀色の糸を銀色の光に絡める。

「オスカー、手を下してもよいぞ。そなたも腰かけろ」

「はっ!」

オスカーは熱く感じた左掌をぐっと握ると椅子に腰かけた。

ポルデュラは北に位置する水のアロイス、東に位置する土のウルリヒに同じ様に月の雫に魔力を込めさせた。

最後に西南に位置する愛のエリオスの左横に立つ。

エリオスがポルデュラの顔を見上げた。

ポルデュラは優しく微笑みを向ける。

「エリオス様、最後はエリオス様の愛じゃ。
宿世の結びが叶ったものにしか六芒星の愛の位置は務まらぬのじゃよ。
セルジオ様が無事に戻られる事だけを願えばよい。
その願いを月の雫の頂点へ向けられよ」

ポルデュラはそっとエリオスの小さな左手を掴むと六角形の月の雫の頂点に乗せた。

「はっ!」

エリオスは呼応すると左手を乗せられた月の雫をじっと見つめる。

その先の円卓中央にバルドと共に横たわるセルジオの小さな背中へ目を向けた。

「セルジオ様、どうか、どうか、我らの元へお戻り下さいっ!
我らセルジオ様のご帰還を心から願っていますっ!セルジオ様っ!」

エリオスは腹の底から湧き出てくる熱を帯びた声を六角形の月の雫に注いた。

ウワンッ!!!

金色の光がエリオスの左手を包んだ。

「エリオス様、上々じゃ!
まさか、金色の珠がでるとはっ!
セルジオ様と同じじゃ!流石、宿世の結びのお二人じゃっ!」

ポルデュラが珍しく驚いた表情を見せる。

スッ・・・・

エリオスの月の雫の配置まで終わるとポルデュラは西の頂点である風の位置に戻った。

左手二本指を唇にあてる。

「ふぅぅぅぅふっ!
火、風、正義、水、地、愛、六つの頂点に光を灯すっ!」

ブワンッ!ブワンッ!
ブワンッ!ブワンッ!
ブワンッ!ブワンッ!

六芒星の頂点に置かれた月の雫に銀色の光の線で繋がった。天と地の三角形が重なり六芒星が完成する。

六芒星の魔法陣は銀色に発光していた。バルドとセルジオが横たわる中央に向け、銀色の波紋が吸い込まれている。

「これで、腰かけることはできる。
魔力はそのまま注いでくれ。ここからが持久戦じゃ。
皆、頼むぞ。バルドがセルジオ様を連れ帰るまで、頼むぞ」

「はっ!!」

ポルデュラの懇願とも取れる言葉にベアトレス含む6人は呼応するのであった。








【春華のひとり言】

今日もお読み頂きありがとうございます。

六芒星の魔法陣の自動操縦の設定をするかと思っていましたが、魔力と願いを融合させて、より強固にするための魔法陣強化でした。

内と外とでセルジオの深淵からの帰還に全身全霊をかける者たち。

セルジオのことを皆がこんなにも想っていることを解って欲しいなと思います。

次回はいよいよ、セルジオの帰還です。

よろしくお願い致します。

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