とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第45話 初代の奮闘

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グワンッ!!!
バアァァァァ!!!

ザアァァンッ!!!
ザアァァンッ!!!

「青き血よ!月の雫よ!
我が手にある剣に宿り、青白き光をたたえよ!
青白き光、閃光せんこうとなりて
我が手にある剣に力を与えよ!
一団を切り裂く青白き閃光よっ!
我が剣に宿どれっ!」

キィィィン!!!
キィィィン!!!

青白く三日月の形をした閃光が青く深い泉から次々と勢いよく波立ち、青白く輝く月へ向けて放たれていく。

ザアァァンッ!!!
ザアァァンッ!!!

青白く輝く月が次第に赤い血の色に染まり始めていた。

「これはっ!独りで抑えられるか?!」

初代セルジオは波立つ青く深い泉の中央でサファイヤの剣を青白く輝く月へ向けて垂直に掲げる。

サファイヤのヒルトに埋め込まれているユリの紋章を額にあてた。

グワンッ!!!
グワンッ!!!
バアァァァァ!!!

頭上から大きく8の字を描き、サファイヤの剣を振り下ろす。

キィィィン!!!
キィィィン!!!

青白い三日月の閃光が、同じ様に泉の水面から波立つ青白い三日月を打ち落としている。

カシャンッ!
カシャンッ!

グラスが割れる様な軽やかな響きが水面に広がる。

グワンッ!
グワンッ!
グワンッ!


螺旋状に回転する風の珠が上空から3つの層になり下降してくるのが見えた。

水面から湧き立つ波が3つの層になった風の珠に覆われ行き場をなくす。

風の珠と水面の間で騒めく青白い三日月の閃光へ向けて初代セルジオは勢いよく8の字にサファイヤの剣を振るった。

カシャンッ!
カシャンッ!

グラスが割れる様な音と共に青白い三日月の閃光が水面に砕け落ちていく。

「風の回復術か・・・・
しかし、これではらちが明かぬなっ!」

カシャンッ!
カシャンッ!

初代セルジオはブツブツと呟きながらも風の珠と水面の間で波立つ青白い三日月の閃光を砕きつづけていた。

上空の月へ目をやる。
赤い血の色に染まりつつあった月は青白さを取り戻していた。

「このままでは、セルジオの身体が持つまいっ!
蒼玉の力が強すぎたのだなっ!
我しかおらぬなっ!
今、この場でセルジオを守り切れるのはっ!」

初代セルジオは再びサファイヤの剣を額にあて垂直に立てる。8の字に振り下ろし三日月の閃光を打ち落とすを繰り返していた。

グラスが割れる様な音と何かが大きく回転する様な音が耳につきセルジオは目を開けた。

「・・・・うっ・・・・」

目を開けるとうつ伏せの状態で草の上に横たわっていた。

「・・・・うっ・・・・ここは?・・・・」

身体を起こし音の方へ目を向ける。
初代セルジオと青き血の制御の訓練をしている青く深い泉の水面に初代セルジオが青白い三日月の閃光を8の字に放っている姿が見えた。

「・・・・初代様?・・・・
お独りで訓練をされてみえるのですか?」

状況がつかめずセルジオは呟く。

「セルジオっ!
目覚めたかっ!訓練ではないっ!
蒼玉の共鳴でそなたの泉、青き血が暴走をしているのだっ!」

カシャンッ!
カシャンッ!

初代セルジオは振り向きもせずにサファイヤの剣を8の字に振り下ろしながらセルジオに状況を伝えた。

「そなたっ!このままではっ!
そなたの身体が砕ける。
このまま身体が砕ければ、そなたの魂は行き場をなくす」

「我の悔恨の感情とそなたの心を封印したまま魂が行き場をなくすっ!
内から砕かれた者の魂は闇に落ちる。
そうなれば二度と転生はせぬ。
来世がなくなると言う事だっ!」

「そなたはそこで留まっていろっ!
我がそなたの傍近くにいくまでその場を動くなっ!
よいなっ!何があってもその場を動くなっ!」

初代セルジオはサファイヤの剣を8の字に振り下ろす動作は止めずに大声でセルジオに叫んだ。

「・・・・」

ぐっ!

セルジオはまたも己のことが己で対処できずにいることに何ともいえない虚無感にとらわれていた。
初代セルジオの背中に向かい、小さな声で訴える。

「初代様、私は内でも外でも己の事が己で制御ができないのです。
バルドにもエリオスにもオスカーにもアロイス様にも・・・・
何一つ満足にできない・・・・
胸が・・・・苦しい・・・・」

トサッ!

セルジオは両手を胸にあてると草の上に倒れた。

初代セルジオは呼ばれた声に振り向くと後ろでセルジオが倒れ込むのを目にする。

「セルジオっ!!セルジオっ!!
えぇぇぇいっ!!セルジオっ!
目を開けろっ!深淵に落ちるぞっ!
深淵に落ちれば我ではどうにもできぬっ!」

カシャンッ!
カシャンッ!

シャンッ!

初代セルジオはサファイヤの剣を8の字に振り下ろす動作は止めると剣を鞘へ収めた。

タッタタッ・・・・

初代セルジオは倒れたセルジオに駆け寄る。

バサッ!!

金糸で縁取られた蒼いマントを外すと倒れているセルジオをマントで包み込んだ。

トサッ!
キュッ!

マントで包みこんだセルジオを背中にかつぎあげると胸元でマントの端を結んだ。

タッタタッ・・・・

背中にセルジオを担いだまま8の字にサファイヤの剣を振るっていた場所まで戻ると再び鞘から剣を抜いた。

シャンッ!!

カシャンッ!
カシャンッ!

再び青白い三日月の閃光を放ち、三層の風の珠で抑え込まれた青く深い泉から湧き立つ青白い三日月の閃光を打ち落としていく。

「セルジオっ!
我が手助けできるのはここまでだ。
我の背中で留まっていろ」

初代セルジオはいつ止むとも知らない青き血の暴走と戦い続けた。

ピタリッ!

シーーーン!

三層の風の珠の回転が止まった。

ウワンッ!
パシャンッ!

回転が止まると三層の風の珠はたちまち砕け落ちる。

グワンッ!!!
バアァァァァ!!!

ザアァァンッ!!!
ザアァァンッ!!!

風の珠で抑えられていた青白い三日月の閃光が波立ち青く深い泉から上空に浮かぶ青白い月目掛けて勢いよく吹き出した。

初代セルジオの8の字に振り下ろしていたサファイヤの剣を水平方向へ向ける。

キィィィン!!!
キィィィン!!!

サファイヤの剣を横一文字に往復させ、三日月の閃光を放つ。

上空に浮かぶ青白い月が再び赤みを帯びてくる。

「くっ!なぜ止めたっ!
風の回復術をなぜ止めたっ!」

苦々しく呟き上空を睨み付けた。

キィィィン!!!
キィィィン!!!
グワンッ!

上空に浮かぶ青白い月に向かっていた青く深い泉から波立つ三日月の閃光が方向を変えた。

シュンシュンッ!
シュンシュンッ!

上空へそのまま吸い込まれて行く。

グワンッ!
グゴゴゴゴッ・・・・

大きな銀色の風の珠が上空からゆっくりと下降してくる。
初代セルジオは大きな銀色の風の珠を目にするとほっとした表情を浮かべた。

シャンッ!

サファイヤの剣を鞘へ収める。

「ポルデュラ殿のお出ましか!
間に合いよかったぞ。ポルデュラ殿。
我独りでは、そろそろ限界であったぞ。
感謝申す。セルジオはここにいるぞ。
深淵に潜りつつある。後は任せるぞ」

下降してくる大きな銀色の風の珠に向かい、初代セルジオは語りかけた。

グワンッ!!!!
ザバンッ!!!!
シャンッ!!!!


大きな銀色の風の珠は深く青い泉の水面までくると水泡が割れる様に広がった。

ザンッ!!!!
シーーーーン

水面に銀色の風が煌めくと波立っていた深く青い泉の水面は静寂を取り戻した。

シャランッ・・・・

銀色の小さな粒がキラキラと水面で輝いている。

「終わったな・・・・
ポルデュラ殿、感謝申すぞ。
またもセルジオを救って下された。
感謝申すぞ」

初代セルジオは上空を見上げ両手を結んだ。

「では、セルジオ殿、
迎えがくるまではここで我と共に過ごそうぞ。
深淵からそなたを戻すことは我にはできぬことだ。
すまぬな」

パラリッ!
トサッ!

初代セルジオは背中に担いでいたセルジオを下すとマントにくるんだまま草の上に寝かせた。

「バルドがここへ迎えにくるぞ。楽しみだな」

寝かせたセルジオの金色の髪を整えながらどこか嬉しそうにする初代セルジオだった。





【春華のひとり言】

今日もお読み頂きありがとうございます。

思わぬところで初代セルジオの奮闘シーンでした。

自分自身ではどうにもできないことに悩むセルジオ。
まだ4歳の幼児であるのに何とも大人びた発想だなと思います。

この時代は成長せざるを得なかったのですよね。

深淵(現代の潜在意識の設定です)に陥ってしまったセルジオ。

どうやって救い出すのか?

バルドの活躍をお楽しみに。

明日もよろしくお願い致します。
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