とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第43話:青き血の暴走

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「揃ったな。はじめるか」

火焔の城塞、円卓の間に集結した面々を見回すとウルリヒは会談開始を告げた。

蒼玉の共鳴が起こってから3日が過ぎていた。

円卓にはウルリヒをはじめ、ラドフォール騎士団現団長水の城塞アロイス、火焔の城塞カルラ、そして、エリオスとオスカーが着席していた。

トンットンットンッ

円卓の間の扉が叩かれる。

「バルドにございます。遅くなりました」


「入られよ」

ウルリヒが入室を促す。

ガコッ
ギイィィ

扉が開かれるとセルジオを左腕に抱えたバルドが姿を現した。

「遅くなり、失礼を致しました。
ポルデュラ様、ベアトレス殿も同道しております」

バルドの後ろからポルデュラとベアトレスが顔を覗かせる。

「兄上、待たせ悪かった。
セルジオ様の回復術に時間がかかっての。
お許し下され」

ポルデュラは円卓の間に入るとウルリヒの正面になる入口近くに腰を下した。
ベアトレスがポルデュラの左隣に腰を下す。

バルドはポルデュラとベアトレスが入室すると扉を閉め、ウルリヒの左隣に座るアロイスの隣にセルジオをそっと座らせた。

バルドはセルジオの隣に腰を下す。

セルジオは隣に座ったバルドを深みの増した深く青い瞳で言葉なくぼんやりと見上げた。


蒼玉の共鳴が起こった翌日、バルドとオスカーはカルラにつき随い、新たな蒼玉の採掘場を探り至った。
大地の城塞から駆け付けたウルリヒと新たな採掘場で出会い、そのまま火焔の城塞まで戻ったのだ。



バルドとオスカーが戻ると火焔の城塞第一隊長アンカが慌てて駆け寄ってきた。

「バルド殿!お戻りなさいませ!」

あまりの慌てた様子にバルドは違和感を覚える。しかも第一声がカルラへではなく、自身に向けられた言葉だったため尚更だった。

バルドとオスカーは駆け寄る火焔の城塞第一隊長アンカにかしづく。

「アンカ様、ただ今戻りました。
大地の城塞ウルリヒ様、第一隊長ベアテ様がお越しにございます」

アンカは鍛冶師の装いのウルリヒとベアテが目に入らない程、慌てふためいていた。

「えっ!ああっ!これは!
失礼を致しました。
ウルリヒ様、ベアテ殿、お久しゅうございます」

挨拶もそこそこに慌てた様子のアンカにカルラは怪訝けげんな顔を向ける。

アンカはカルラの教育係でもあった。立ち居振る舞いがいささか乱暴なカルラに礼節とラドフォールの騎士の心得をくどくどと諭していた。そのアンカらしくない行いをカルラは不審に思う。

「アンカ、いかがしたのだ。
そなたがその様に礼節もわきまえず
慌て取り乱した様子はいままでに見たことがないぞ。
何かあったのか?」

カルラの問いかけにアンカは自分が取り乱していた事を認識する。
一呼吸置いたアンカはカルラへ叫ぶ様に報告した。

「はっ!カルラ様、
バルド殿、オスカー殿が出られて間もなく、
セルジオ様がっ!青き血が流れるコマンドールがっ!
血を吐かれてっ!血を吐かれてっ!気を失いましたっ!」

ギクリッ!!

バルドとオスカーはかしづいたまま目を見開いた。
カルラが怒鳴り声を上げる。

「なにっ!!!そなた!
なぜ我らに使いをよこさなかったっ!!
うっ!よいわっ!セルジオ様はっ!
回復術は施したのかっ!
バルド殿っ!すぐにセルジオ様のお傍にっ!」

カルラはかしづくバルドへ勢いよく顔を向ける。

「はっ!」

バルドは呼応するのと同時に立ちあがり、セルジオの所在をアンカに確認した。

「アンカ様、セルジオ様の元へお連れ下さいっ!」

オスカーはカルラとウルリヒ、ベアテにバルドの代わりに挨拶をする。

「ウルリヒ様、カルラ様、ベアテ様、大変失礼を致しました。
これより我ら主セルジオの様子を確認してまいります。
後ほど、ご報告に伺います」

セルジオが吐血し倒れた話しを耳にしても落ちついた行動をとるオスカーにウルリヒは感心する。

「オスカー、
そなたとバルドは守護の騎士としてよい組合せだな。
冷静さを保ち、後始末の裁量を心得る、
流石にセルジオ騎士団第一隊長ジグラン殿の配下、
あの戦いで殿しんがりを担った弓隊隊長だな」

「バルドは謀略と先鋒の切り崩しだからな。
どちらが欠けても戦は勝てぬ。
セルジオ騎士団団長も目が高い。
そなたとバルドをセルジオ殿とエリオス殿の
守護の騎士としたのもうなずける。
おっ、すまぬ。話しが長くなった」

「いやなに、感心していたのだ。
蒼玉の共鳴を導き、新たな採掘場を探り至り、
我らラドフォールの中にあっても物おじ一つしないその姿にな。
これからのことも・・・・おっ、すまぬ。
早々にエリオス殿の元へ行ってやれ。
他家でセルジオ殿が倒れられ
独りさぞや心細い思いをしていることだろう」

ウルリヒは少し哀し気な眼をオスカーへ向けた。

「はっ!ウルリヒ様、感謝申します。
では、失礼を致します」

タタッ・・・・

オスカーは小走りでバルドの後を追った。

バルドとオスカーの後ろ姿を見送るとカルラがウルリヒへ顔を向ける。

「叔父上はバルド殿とオスカー殿のことを
よくご存知でいらっしゃる。戦場でですか?」

ウルリヒはバルドとオスカーの後ろ姿を眺めカルラの問いに答えた。

「・・・・うむ。酷い戦いであったからな・・・・
カルラが入団する少し前だな。
あの戦いの折、セルジオ騎士団が
シュタイン王国の貴族騎士団を救ったのだ・・・・」

ウルリヒは少し遠い目をした。

「カルラ、アロイスが到着するまで2日はかかろう?
それまでに新たな蒼玉の採掘場を確認したい。
蒼玉の響きが少し違う様に感じたのだ。
近くに目覚めを起こした蒼玉の短剣があったからなのか?
それとも元々の響きの違いなのかを確認する。
明日、今一度、採掘場へ同道してくれるか?」

元々、鉱石には魔力が宿っている。土の魔導士のウルリヒは鉱石の声を響きとして聴き取ることができる。
響きの大小、音色、熱の有無等から鉱石自体の持つ力を引き出し、武具にその力を移す事がウルリヒの役目の一つだった。

「はっ!承知しました」

カルラはウルリヒの申出に呼応するとウルリヒを伴い、ウルリヒが滞在する客間へ向かった。

アンカはバルドを滞在部屋ではなく、魔導士が治癒術を施す医療棟へ案内する。
アンカは道々、セルジオが吐血した時点の状況を伝えた。

「バルド殿とオスカー殿が出掛けられた後、
セルジオ様とエリオス様は火焔の城塞と蒼玉の事が知りたいと申されました。
それならば古より伝わる書物等をご覧頂くのが一番かと思い、
いくつか書物をみつくろいお部屋へお持ち致しました。
しばらくお二人で寄り添い書物をご覧になっておられたのですが、
突然に血を吐かれまして・・・・」

「どんな書物を読んでいましたか?」

バルドはセルジオが何に反応したのかを確認する。

蒼玉の共鳴が起きた時、耳と胸に激痛を訴えたことと書物に書かれている内容が関係しているのではないかと考えたからだ。

「ご覧になられていた書物ですか?・・・・
ああ、八芒星ベツレヘムの事をお知りになりたいと
おっしゃるので占星術の書物をお渡ししました・・・・
そう言えば・・・・
倒れられた時に開いていたページに
八芒星の魔法陣が描かれていました」

「八芒星の魔法陣?」

八芒星の魔法陣は新たに探り至った蒼玉の採掘場にカルラが敷いた結界であった。
バルドは蒼玉の新たな採掘場とセルジオが吐血した事が何らかの関係があると確信する。

「アンカ様、感謝申します。
エリオス様もセルジオ様とご一緒におれらますか?」

「はい、セルジオ様にずっと寄り添われて・・・・
我らが慌てふためいておりますのに
エリオス様は冷静でいらっしゃいました。
回復術が施せる風の魔導士を呼ぶ様にお言いつけになり、
訓練施設におられるポルデュラ様へ使い魔を
遣わして欲しいとの事でしたので、
その様に致しました・・・・
あのっ、セルジオ様はこの様な事が以前にもございましたか?」

アンカは毒を盛られたのではないかと考えていたのだ。
バルドはアンカの懸念を払拭する。

「アンカ様、毒ではございません。
恐らく蒼玉の共鳴が関係していると思います。
青き血と蒼玉の力が強すぎるのか・・・・
ポルデュラ様をお呼び下さり、感謝申します」

バルドはアンカに微笑みを向けた。

「そうですかっ!
毒ではないのであれば・・・・
火焔の城塞に間者かんじゃが潜んでいわしまいかと
案じておりました。
以前・・・・カルラ様に・・・・
おっ、これは失礼をしました」

アンカは言いかけた言葉を飲みこんだ。

「・・・・」

バルドは無言でアンカの顔を見る。蒼玉の共鳴ではなく毒を盛られたと考えた時点でカルラが毒を盛られたことがあることを示唆していた。

バルドはアンカが口をつぐんだ事には触れずにおいた。

「バルド殿、こちらです」

火焔の城塞の最奥東側の窓からアウィン山が
望める医療棟の一室の前でアンカは足を止めた。

バルドは扉の取っ手に手を伸ばす。

ピタリッ!

伸ばした手が止まった。

バルドはすぐさま、扉を開けたい思いと中にいるセルジオの状態を見るのが恐い思いに駆られる。

ソッ

「バルド殿、大事ございません。
セルジオ様はこれから役目を果たさねばならぬ御身。
ここでお命を落とされる事はあり得ません」

バルドを追ってきたオスカーがバルドの止まった手にそっと手を添えた。

「・・・・オスカー殿・・・・」

バルドはオスカーの顔を見ると意を決して扉を開けた。

ガチャッ!

扉を開けると3人の風の魔導士がベッドに横たわるセルジオに回復術を施していた。
部屋の中はセルジオが吐血した血の臭いが漂っていた。

エリオスはベッドを挟んだ向かい側の椅子に腰かけセルジオの手を握っていた。

バルドとオスカーの姿を見るとそれまで気丈な振舞をしていたエリオスの顔が一気に崩れる。

ガタンッ!!!

エリオスは椅子から立ち上がるとバルドとオスカーに駆け寄った。

「バルド殿っ!オスカーっ!
セルジオ様がっ!セルジオ様がっ!
大量の血を吐きましたっ!
先程まで、何度も何度もっ!
あああぁぁぁーーーーセルジオ様がぁぁーーーー」

ドンッ!

エリオスは泣き叫びバルドの腰元に顔をうずめる。

バルドは吐き出した血がうっすらと頬についたままベッドで横たわるセルジオへ目をやった。
その姿は初代セルジオの悔恨の念をセルジオの心と共に封印した赤子の頃と同じ光景だった。

『初代様の・・・・封印が解かれたのでは・・・・』

バルドは自身の腰元で泣き叫ぶエリオスの背中にそっと手をおきながらセルジオを凝視する。

『・・・・いや、
封印は解かれる事はないとポルデュラ様は仰っていた!』

オスカーがバルドの腰元で泣き叫ぶエリオスをそっと離し、抱き寄せる。

「エリオス様、こちらへ。
バルド殿をセルジオ様のお傍に行かせて差し上げましょう」

バルドはオスカーの言葉にハッとし我に返った。

回復術を施す魔導士に問いかける。

「感謝申します。どの様な状態でしょうか?」

1人の風の魔導士が手を止め、バルドへ返答をした。

「はい・・・・何が障っているのか、
我らでは計りかねております。
一旦は吐血は止まりましたが、術を止めると・・・・
すぐにまた吐血されます。
3人掛かりでやっと止めている状態です」

「治癒術ではなく、回復術と言う事は、
直接傷口があると言う事ではないのですね?」

バルドは吐血の根本原因が何かを確認する。

「はい、お身体のどこかに傷があるわけではない様なのです。
エリオス様が我ら風の魔導士をお呼びくださらなければ
危うく水の魔導士が治癒術を施すところでした。
傷口がなければ治癒術は治療とはなりません。
エリオス様のご判断がセルジオ様のお命を救われました」

バルドはオスカーに抱きかかえられ、泣きじゃくっているエリオスへかしづいた。

「エリオス様、感謝申します。
またもセルジオ様のお命をお救い下さいました。
感謝申します」

「・・・・うううぅぅぅ・・・・
ポ・・・・ポルデュラ様の事が・・・・
ポルデュラ様のお姿が頭に浮かんだのです・・・・
風の魔導士だと・・・・ポルデュラ様が・・・・」

ガチャッ!

扉が開いた。

「失礼をするぞ。
おっ!エリオス様、私の気は届いておりましたなっ!
よくぞ感じ取られたっ!」

「ポルデュラ様っ!」

ポルデュラがベアトレスを伴い、部屋へ足を踏み入れた。

バルドの緊張は一気に緩む。ポルデュラへ救いを求める様な眼差し向けた。

ポルデュラは近づくバルドを制した。

「話は後だ。ふむ・・・・」

ポルデュラは2人の風の魔導士の回復術を観察する。

「バルド、オスカー、
すまぬが蒼玉の短剣をセルジオ様の胸の上に置いてくれるか」

「はっ!」

バルドはエリオスを抱きかかえるオスカーから蒼玉の短剣を受け取ると己の物と揃え、セルジオの胸の上に2口の蒼玉の短剣を置いた。

ポルデュラが2人の風の魔導士へ回復術を止める様に言う。

「・・・・術を止めよ」

「はっ!」

2人の風の魔導士は回復術を止めた。

「・・・・ゴボッゴボッ・・・・ゴッゴゴゴボッ!ガハッ!」

バシャッ!!
パシャッ!!

セルジオの口から大量の鮮血が吹き出した。

「ふうぅぅぅぅふっ!」

ポルデュラが左手二本指で宙を切った。

「この者の中で目覚まし月の雫よ。
この者の泉で目覚めし青き血よ。
月の雫と蒼玉にその力を移し、
青き血の力と身の調和をはかれ。
この者の身に余る青き血の力を月の雫と蒼玉に移し、
蒼玉を手にする者の助けとなれ」

キィィィン!
キィィィン!
グワンッ!

セルジオの胸から三日月の形をした青白い閃光がいくつも湧き出す。

シュンシュン!
シュンシュン!

湧き出した三日月の青白い閃光を胸の上に置かれている蒼玉の短剣が吸い込んでいる。

「ふぅぅぅうぅぅぅ・・・・」

ポルデュラが銀色の風の珠でセルジオの身体を包みこんだ。
螺旋状に広がる銀色の風の珠が三日月の青白い閃光と共に蒼玉の短剣の中に吸い込まれて行く。

セルジオの身体はベッドからこぶし一つ分程浮き上がる。
銀色の風の珠の中でセルジオの金色の髪がサラサラと揺れている。

シュゥゥゥゥ・・・・

暫くするとセルジオの胸から湧き出ていた三日月の青白い閃光は止まった。

ファサッ・・・・

ベッドから拳一つ分浮いていたセルジオの身体が静かに戻る。

青白い閃光が止まるとポルデュラは銀色の風の珠を自身の左掌に乗せた。

ソッ
グググッ!

左掌に乗せた銀色の風の珠をセルジオの胸に押し込む。

「波立ちし、青き血の泉よ。
銀色の風の珠にて鎮まれ。
穏やかな青白き月の光に照らされ、
静かに眠りし者へ慈愛と平穏の光を与える。
この者の中に眠りし古の騎士に
支えしことへの感謝の意を告げる」

シーーーーン

ポルデュラの呪文が終わると部屋は静寂に包まれる。
セルジオの吐血は止まった。

サラッ

ポルデュラはセルジオの額に口づけをする。

「セルジオ様、よく堪えられましたな。
青き血が暴れましたのじゃ。
もう、大事ございません。
初代様がお守り下さいましたぞ」

ポルデュラはベッドで横たわるセルジオへ術を施したことを告げた。

「そなたらは下がってよいぞ。
もはや吐血はないだろう。
大変だったな。
青き血の暴走をよく抑えられたものじゃ。
ゆっくり休め」

「はっ!ポルデュラ様、もったいないお言葉感謝します」

ポルデュラはセルジオへ回復術を施していた3人の風の魔導士を労い退室させた。

「さて、バルド。もう大事ないぞ。安心致せ。
セルジオ様に触れて差し上げろ」

バルドは扉の近くで佇んでいた。まるで足が床に張り付いた様に感じる。

ポルデュラの言葉に足を前に出すとふらついた。

サッ!
ガシッ!

ポルデュラの術が始まりエリオスを床に下していたオスカーがフラつくバルドの斜め前に出て身体を支えた。

「バルド殿、大事ございませんか?」

バルドは支えるオスカーの左腕を掴んだ。

「オスカー殿・・・・」

オスカーの顔を何とも言えない不安そうな目で見つめる。

『このようなバルド殿のお顏を見たことがないっ!』

オスカーはバルドが身体に力が入らなくなる程、感情を露わにしている姿を見たことがなかった。

「バルド殿、大事ございません。
セルジオ様はご無事です。大事ございません。
さっ、このままセルジオ様の元へまいりましょう」

オスカーはバルドの身体を支えながらセルジオが横たわるベッドへ近づいた。

カコンッ

ベアトレスがベッドの横へ椅子を置いた。

オスカーはその椅子にバルドを座られる。

ストンッ!

バルドはただ、呆然とベッドで横たわるセルジオを見つめた。
吐き出し頬についた血が乾燥し固まっている。

「・・・・・」

バルドは身体に全く力が入らない初めての感覚に襲われる。

「頬に血がついたままだな。
ベアトレス、水屋で湯と布を所望してきてくれぬか?」

「はい、承知しました」

ポルデュラはベアトレスを退室させた。
バルドと共に初代セルジオを封印した時を知るベアトレスを退出させる事で当時とは状況が異なる事をバルドへ示すためだった。

ポルデュラはバルドの手を取った。
血がついたままのセルジオの頬を触れさせる。

「バルド、安心いたせ。
初代様がセルジオ様の中で青き血の暴走を抑えておられた。
そうでなければセルジオ様のお身体は粉々に砕けていたことじゃろう」

「蒼玉の共鳴が強すぎたのじゃ。
強すぎる力に反応した青き血が暴走をした。
それだけのことじゃ。
初代様の封印が解かれたわけではないぞ。安心致せ」

ピクリッ!

バルドはポルデュラの言葉に反応するとポルデュラを深い紫色の瞳で見つめる。

ポルデュラは深い緑色の瞳でバルドと瞳を合わせた。

「・・・・バルド、
そなたの魔眼を目覚めさせる時がきたのじゃ・・・・
今は、セルジオ様がお目覚めになるまでは、
お傍でそなたもゆるりとしていろ。
ここから始まるのじゃ・・・・」

ポルデュラはバルドを愛おしそうに見つめていた。






【春華のひとり言】

いつもお読み頂きありがとうございます。

蒼玉の共鳴に異常反応をし暴走をした『青き血』の回でした。

ポルデュラとウルリヒ、ダグマルのラドフォール魔導士兄妹が23年前から準備してきたことが始まりの時を迎えました。

セルジオを想うバルドが感情を抑えられない場面が続出します。

次回もよろしくお願い致します。
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