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学園編 16歳
56 強制イベントを解決しましょう
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甲高い笛の音が地下牢に響く。おもちゃの笛と馬鹿にできない音量で、確実に外まで聞こえているだろう。酸欠にならない程度に繰り返し吹くと、すぐにドアが音を立てて蹴破られた。
「エリー!」
聞きなれた声とともに、紅い髪が目に飛び込んできた。
「クリス!」
クリスは剣を片手にこちらに駆け寄ると、剣を投げ捨てて鍵を開けた。二人はクリスが鍵を持っていたことに驚くが、おそらく黒装束から奪ったのだろう。
「無事でよかった!」
ほどなく鍵は開き、エリーナは気づけばクリスの腕の中にいた。クリスの顔を見てその体温に触れた途端、一気に安心して力が抜ける。
(助けに来てくれた……)
その存在がイレギュラーでも、心配して駆けつけてくれるクリスは本物だ。そしてクリスはエリーナの存在を確かめるように強く腕に力を入れる。それはエリーナが息苦しいほどで……。
「く、クリス……苦しいわ」
安心よりさきに苦しみを味わわないといけないとは何事か。エリーナはクリスの背を叩いて、降参をアピールする。クリスは慌てて体を離し、エリーナの顔を覗き込んだ。クリスの顔には汗が浮かび、今にも泣き出しそうだ。その表情を見た途端、心が苦しくなった。
「怖かっただろ? ドレスもこんなに汚れて!」
「大丈夫……それは床に擦れたからよ。それに、ベロニカ様がいてくれたから怖くなかったわ」
そこでやっとクリスはベロニカに顔を向け、表情を険しくした。クリスからすれば、可愛いエリーナを巻き込んだご令嬢だ。その思考回路が読めたエリーナは、慌ててベロニカの前に立ってかばう。
「ベロニカ様がいたから縄も切れたし、安心できたの。すごく頼もしかったのよ」
「……そうだね。諸悪の根源は殿下だからね」
そう怒りが滲む笑顔を向けられ、エリーナは乾いた笑いを浮かべてしまった。もともとクリスのジークに対する評価は高くなかったが、これでますます地に落ちただろう。感動の再会シーンが一通り終わったところで、ベロニカがクリスに声をかける。
「それにしてもすばらしい手腕ね。もっとかかると思ってたわ」
上ではまだ制圧が進んでいるようだが、じきに終わるだろう。戸口には見張りのために公爵家の護衛が二人立っていた。
「リズが血相を変えて家に飛び込んできたんだよ。なんでも、たまたま二人が攫われるところを目撃したらしい。そして馬車が走っていった方向から、元公爵家に縁がありそうなところに目星をつけ、オランドール公爵家と一緒に乗り込んできたんだ」
複数の候補があったため、戦力を分散して攻め入ったらしい。クリスは最も有力だと思われるところに随行したのだ。
「リズが……?」
「うん。地理に詳しくて助かったよ。一緒に来ようとしてたけど危ないから、家で待ってもらってる」
リズが力になってくれたと聞いて嬉しかった。あとでたっぷりお礼を言わなければいけない。
「それと同時に、殿下率いる王宮の部隊が元公爵家の残党が潜んでいるところを制圧しに行ったよ」
「へぇ……案外やるじゃない」
目の前で二人が攫われるという失態を犯した王子だったが、しっかりと挽回したようだ。ベロニカは満足そうに笑みを浮かべていた。
ほどなくして護衛の一人が制圧を完了したと報告し、エリーナはクリスに連れられて外に出る。捕縛された男たちが一か所に集められ、縛り上げられていた。ご丁寧に口まで塞がれているので、何かを叫んでいるが不明瞭な叫び声にしかならない。だが、その瞳には明確な恨みと殺意が籠っており、エリーナはぞっとする。クリスがエリーナを隠すように隣に立ち、そちらを見せないようにした。
こちらに気づいた一人の兵士が近づき、ベロニカの前で膝をつく。
「ベロニカ様。救出が遅くなり申し訳ありません」
「十分早かったわ。ご苦労だったわね」
彼は公爵家護衛隊の隊長であり、今回の陣頭指揮を執っていた。そして立ち上がるとクリスに向かいなおり、
「クリス殿、この度はご助力いただきありがとうございます」
と礼を述べた。がっしりとした体躯の男性であり、クリスとは正反対のタイプだ。
「こちらこそ、エリーの救出を助けてくれて礼を言う」
今回の事件で黒装束のアジトは全滅。後で聞けば、クリスは先陣を切って突入し、鬼神の如く敵を斬り伏せていったらしい。双方の働きで公爵家側の被害もなく、一件落着となったのだった。
そしてそこでベロニカとは別れ、エリーナはクリスと共にローゼンディアナ家に帰る。馬車でクリスは隣から離れず、ずっと手を握られていた。相当心配をかけたようなので、エリーナは何も言わずに軽く手を添える。
「エリー」
馬車が家に近づいたころ、クリスが小さな声でエリーナを呼んだ。顔をそちらに向ければ、真剣な表情で見つめるクリスがいた。
「……守れなくて、ごめん。もう、こんなことは起こさせないから」
「クリスのせいじゃないわ。助けに来てくれてありがとう」
それでも悔しそうにしているクリスに笑いかけ、気にしないでと小さく首を横に振る。エリーナはクリスがあの場所に来てくれただけで十分だった。
そして屋敷に帰ると、サリーを筆頭に使用人たちに囲まれ口々に無事を祝われる。サリーを含む数人は涙ぐんでいた。それを遠巻きに見ていたリズは唇をぐっと強く噛みしめており、エリーナが近づくとわっと泣き出した。飛びつくように抱き着いて、声をあげて泣く。
屋敷で待つ間、ずっと不安で仕方がなかったのだ。それを理解したエリーナはやさしくその背を撫でてあげる。
「エリーナ様ぁぁ! ごめんなさい! わ、私、止められなかった!」
しゃくりをあげて、リズは必死に懺悔の思いを口にする。事件が起こると知っていたから、念のためと思って休みの日は王都のそれっぽいところを見て回っていた。だが、ジークとエリーナが会う予定がないことを知っていたから、おそらくイベントは起きないだろうと高をくくっていたのだ。
しかし、書店通りでエリーナとベロニカを見つけ、続けてジークの姿も目に入りリズは混乱した。シナリオと違う展開に、どうするべきかわからなくなったのだ。そして迷っている間に事件が起こり、二人は攫われてしまった。
その後は急いでローゼンディアナ家に飛び込み、クリスに事の顛末をまくし立てたのだ。気が動転していたため、支離滅裂な話し方になっていた。最初は信じようとしなかったクリスだったが、すぐに公爵家から使者が来て状況を聞くと態度を一変させたらしい。リズから詳しい話を聞き、潜伏先の目星をつけて乗り込んだのだ。
それが、湯あみや身支度を終わらせたエリーナがリズから聞いた話だった。
「リズ、ありがとう。ベロニカ様と私が早く助かったのは、リズのおかげよ」
人払いをしたエリーナの自室で、お茶を飲みながら微笑む。
「いいえ。私は止められたんです。それなのに、エリーナ様を危険な目に遭わせてしまいました。それが、どうしても許せないんです」
エリーナがどう声をかけても、リズは自分を責めていた。膝の上で、拳を強く握っている。それに対し、エリーナはそっとリズの拳を包むように握り笑顔を見せた。
「いいの。わたくしは無事だもの。それでいいのよ」
「でも……」
「あまりぐだぐだ言っていると、悪役令嬢になってシナリオを壊すわよ」
後ろ向きでうじうじとしているリズを、エリーナは一喝する。
「そ、それだけはやめてください!」
ひぃと顔を引きつらせて激しく首を横に振るリズを見て、エリーナは声をあげて笑う。その反応にからかわれたのだと気づいたリズはむくれてそっぽを向いた。
「エリーナ様のいじわる」
「あら、悪役令嬢にとっては誉め言葉だわ」
そして今日は休んだほうがいいとリズは部屋を後にした。さすがにクタクタになっており、夕食の時間まで夢も見ずに眠ったのだった。その日の夕食はエリーナを気遣って、いつもよりプリンの質が上がっていた……。
「エリー!」
聞きなれた声とともに、紅い髪が目に飛び込んできた。
「クリス!」
クリスは剣を片手にこちらに駆け寄ると、剣を投げ捨てて鍵を開けた。二人はクリスが鍵を持っていたことに驚くが、おそらく黒装束から奪ったのだろう。
「無事でよかった!」
ほどなく鍵は開き、エリーナは気づけばクリスの腕の中にいた。クリスの顔を見てその体温に触れた途端、一気に安心して力が抜ける。
(助けに来てくれた……)
その存在がイレギュラーでも、心配して駆けつけてくれるクリスは本物だ。そしてクリスはエリーナの存在を確かめるように強く腕に力を入れる。それはエリーナが息苦しいほどで……。
「く、クリス……苦しいわ」
安心よりさきに苦しみを味わわないといけないとは何事か。エリーナはクリスの背を叩いて、降参をアピールする。クリスは慌てて体を離し、エリーナの顔を覗き込んだ。クリスの顔には汗が浮かび、今にも泣き出しそうだ。その表情を見た途端、心が苦しくなった。
「怖かっただろ? ドレスもこんなに汚れて!」
「大丈夫……それは床に擦れたからよ。それに、ベロニカ様がいてくれたから怖くなかったわ」
そこでやっとクリスはベロニカに顔を向け、表情を険しくした。クリスからすれば、可愛いエリーナを巻き込んだご令嬢だ。その思考回路が読めたエリーナは、慌ててベロニカの前に立ってかばう。
「ベロニカ様がいたから縄も切れたし、安心できたの。すごく頼もしかったのよ」
「……そうだね。諸悪の根源は殿下だからね」
そう怒りが滲む笑顔を向けられ、エリーナは乾いた笑いを浮かべてしまった。もともとクリスのジークに対する評価は高くなかったが、これでますます地に落ちただろう。感動の再会シーンが一通り終わったところで、ベロニカがクリスに声をかける。
「それにしてもすばらしい手腕ね。もっとかかると思ってたわ」
上ではまだ制圧が進んでいるようだが、じきに終わるだろう。戸口には見張りのために公爵家の護衛が二人立っていた。
「リズが血相を変えて家に飛び込んできたんだよ。なんでも、たまたま二人が攫われるところを目撃したらしい。そして馬車が走っていった方向から、元公爵家に縁がありそうなところに目星をつけ、オランドール公爵家と一緒に乗り込んできたんだ」
複数の候補があったため、戦力を分散して攻め入ったらしい。クリスは最も有力だと思われるところに随行したのだ。
「リズが……?」
「うん。地理に詳しくて助かったよ。一緒に来ようとしてたけど危ないから、家で待ってもらってる」
リズが力になってくれたと聞いて嬉しかった。あとでたっぷりお礼を言わなければいけない。
「それと同時に、殿下率いる王宮の部隊が元公爵家の残党が潜んでいるところを制圧しに行ったよ」
「へぇ……案外やるじゃない」
目の前で二人が攫われるという失態を犯した王子だったが、しっかりと挽回したようだ。ベロニカは満足そうに笑みを浮かべていた。
ほどなくして護衛の一人が制圧を完了したと報告し、エリーナはクリスに連れられて外に出る。捕縛された男たちが一か所に集められ、縛り上げられていた。ご丁寧に口まで塞がれているので、何かを叫んでいるが不明瞭な叫び声にしかならない。だが、その瞳には明確な恨みと殺意が籠っており、エリーナはぞっとする。クリスがエリーナを隠すように隣に立ち、そちらを見せないようにした。
こちらに気づいた一人の兵士が近づき、ベロニカの前で膝をつく。
「ベロニカ様。救出が遅くなり申し訳ありません」
「十分早かったわ。ご苦労だったわね」
彼は公爵家護衛隊の隊長であり、今回の陣頭指揮を執っていた。そして立ち上がるとクリスに向かいなおり、
「クリス殿、この度はご助力いただきありがとうございます」
と礼を述べた。がっしりとした体躯の男性であり、クリスとは正反対のタイプだ。
「こちらこそ、エリーの救出を助けてくれて礼を言う」
今回の事件で黒装束のアジトは全滅。後で聞けば、クリスは先陣を切って突入し、鬼神の如く敵を斬り伏せていったらしい。双方の働きで公爵家側の被害もなく、一件落着となったのだった。
そしてそこでベロニカとは別れ、エリーナはクリスと共にローゼンディアナ家に帰る。馬車でクリスは隣から離れず、ずっと手を握られていた。相当心配をかけたようなので、エリーナは何も言わずに軽く手を添える。
「エリー」
馬車が家に近づいたころ、クリスが小さな声でエリーナを呼んだ。顔をそちらに向ければ、真剣な表情で見つめるクリスがいた。
「……守れなくて、ごめん。もう、こんなことは起こさせないから」
「クリスのせいじゃないわ。助けに来てくれてありがとう」
それでも悔しそうにしているクリスに笑いかけ、気にしないでと小さく首を横に振る。エリーナはクリスがあの場所に来てくれただけで十分だった。
そして屋敷に帰ると、サリーを筆頭に使用人たちに囲まれ口々に無事を祝われる。サリーを含む数人は涙ぐんでいた。それを遠巻きに見ていたリズは唇をぐっと強く噛みしめており、エリーナが近づくとわっと泣き出した。飛びつくように抱き着いて、声をあげて泣く。
屋敷で待つ間、ずっと不安で仕方がなかったのだ。それを理解したエリーナはやさしくその背を撫でてあげる。
「エリーナ様ぁぁ! ごめんなさい! わ、私、止められなかった!」
しゃくりをあげて、リズは必死に懺悔の思いを口にする。事件が起こると知っていたから、念のためと思って休みの日は王都のそれっぽいところを見て回っていた。だが、ジークとエリーナが会う予定がないことを知っていたから、おそらくイベントは起きないだろうと高をくくっていたのだ。
しかし、書店通りでエリーナとベロニカを見つけ、続けてジークの姿も目に入りリズは混乱した。シナリオと違う展開に、どうするべきかわからなくなったのだ。そして迷っている間に事件が起こり、二人は攫われてしまった。
その後は急いでローゼンディアナ家に飛び込み、クリスに事の顛末をまくし立てたのだ。気が動転していたため、支離滅裂な話し方になっていた。最初は信じようとしなかったクリスだったが、すぐに公爵家から使者が来て状況を聞くと態度を一変させたらしい。リズから詳しい話を聞き、潜伏先の目星をつけて乗り込んだのだ。
それが、湯あみや身支度を終わらせたエリーナがリズから聞いた話だった。
「リズ、ありがとう。ベロニカ様と私が早く助かったのは、リズのおかげよ」
人払いをしたエリーナの自室で、お茶を飲みながら微笑む。
「いいえ。私は止められたんです。それなのに、エリーナ様を危険な目に遭わせてしまいました。それが、どうしても許せないんです」
エリーナがどう声をかけても、リズは自分を責めていた。膝の上で、拳を強く握っている。それに対し、エリーナはそっとリズの拳を包むように握り笑顔を見せた。
「いいの。わたくしは無事だもの。それでいいのよ」
「でも……」
「あまりぐだぐだ言っていると、悪役令嬢になってシナリオを壊すわよ」
後ろ向きでうじうじとしているリズを、エリーナは一喝する。
「そ、それだけはやめてください!」
ひぃと顔を引きつらせて激しく首を横に振るリズを見て、エリーナは声をあげて笑う。その反応にからかわれたのだと気づいたリズはむくれてそっぽを向いた。
「エリーナ様のいじわる」
「あら、悪役令嬢にとっては誉め言葉だわ」
そして今日は休んだほうがいいとリズは部屋を後にした。さすがにクタクタになっており、夕食の時間まで夢も見ずに眠ったのだった。その日の夕食はエリーナを気遣って、いつもよりプリンの質が上がっていた……。
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