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芽生え
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「せっかくだし朝ごはん食べるか?」
俺はソファから立ち上がってキッチン脇の袋を持ってきた。
昨日、スーパーで買ったパンの詰め合わせだ。食パンと菓子パンが適当に入ってるやつ。
ピトがベッドに座ったまま「ありがとうございます」とちょっと元気なさげに受け取った。
昨夜の酔いと寝落ちが恥ずかしいのか、少し縮こまってるみたいだ。
俺は「まあ、座って食えよ」と、ローテーブルに袋を置いて座椅子に座った。
2人でパンを食べ始めた。俺は食パンをちぎって口に放り込んで、コーヒーを淹れ直した。
ピトは菓子パンを小さく千切って、チラチラと上目遣いで俺の顔色を伺ってる。うつむき加減で目は泳いでる。いつもニコニコしてるのに、なんか落ち着かない様子だ。
「どうしたんだろう」と、俺は内心で首を傾げた。プリンで酔った事、まだ気にしてるのか?
それとも、隠してた正体がバレたのか心配なのか? ピトのあの慌てっぷり見てると、気づかれたくないって気持ちが伝わってくる。
ピトが「……あの……先輩? 何か……その……見ませんでしたか……?」
と、消え入りそうな声で聞いてきた。菓子パンを握り潰しそうなくらい手が震えてて、目を伏せてる。
怖がってる感じがビンビンだ。
「何かって何? ……あ」と、俺は一瞬言葉に詰まった。
やっぱり正体がバレたか気にしてるのか、と気づいた。
翼と尻尾とツノ、全部体に隠したけど、寝たら全部飛び出す事分かってるんだろうな。俺がピトより後に寝たなら見てないはずがない。
俺は「いや、何かって言われても、疲れてて俺もすぐ寝ちゃったからなぁ」と、すっとぼけた。
コーヒーを啜って、平静を装う。ピトがチラッと俺を見るけど、まだ不安そうな顔だ。
「でもさ」と、俺はカップを置いて続けた。
「人はさ、誰にだって言えない事の一つや二つある。隠したい事だってあるだろうさ。それが誰かを害そうという事じゃなければ、俺は暴こうだなんて思わないし、言いたくなるまで待つよ。お前は……大事な後輩だからな」
ピトが「え……?」と目を丸くして、菓子パンを口に運ぶ手が止まる。
ピト視点
「え……?」と、私は目を丸くして、菓子パンを口に運ぶ手が止まった。
先輩の言葉が頭に響いて、何の事か一瞬分からなかった。隠したい事? 言いたくなるまで待つ? 何!? 頭の中がぐるぐるする。
先輩、やっぱり私の正体を見たの? 昨夜、酔って寝ちゃって、尻尾とか翼とか出てたの見られたんじゃないの!?
でも、先輩の顔見ると、コーヒー飲んで普通にしてる。私が慌てて隠したの、気づいてないっぽいよね?
でも「隠したい事だってあるだろうさ」って……それ、私の事言ってるのかな?
もし、正体を見たのにそれを見て見ぬふりしてくれてるなら、なんて優しい人なんだろう。
私は先輩をチラッと見て、菓子パンを口に入れた。確かめる事はできない。
だって、正体バレたら、人間界から去らなきゃいけないルールがあるんだから。
私、サキュバスだし、200年以上生きてるし、人間から見たらバケモノだよ...……こんな姿バレたら大変だよ……。
でも、先輩が「暴こうなんて思わない」って言ってくれたなら、私、安心していいのかな?
「先輩……」と、私は小さく呟いて、先輩を見た。
先輩が「何だよ」と肩をすくめて、パンをちぎる。
「まあ、ゆっくり食えよ。冷める前に」と、コーヒーをまた啜る。
私は「うん……ありがとうございます」と、ようやく笑顔に戻った。
でも、胸の中が変だよ。いつもなら、みんなに好かれるのが嬉しいだけで満足だった。先輩が私を好きになってくれないって怒った時も、ただ悔しかっただけなのに、今、なんか違う。
先輩の優しい言葉聞いてたら、胸がじんわり熱くなって、ドキドキしてる。
何!? この気持ち、今まで感じた事ないよ。
小さな熱が胸の中に生まれたみたい。
知らない感情だよ。
先輩の優しさに触れたら、初めての何かが出てきた。戸惑うよ。
嬉しいけど、怖いよ……。
私、どうしちゃったんだろう?
俺はソファから立ち上がってキッチン脇の袋を持ってきた。
昨日、スーパーで買ったパンの詰め合わせだ。食パンと菓子パンが適当に入ってるやつ。
ピトがベッドに座ったまま「ありがとうございます」とちょっと元気なさげに受け取った。
昨夜の酔いと寝落ちが恥ずかしいのか、少し縮こまってるみたいだ。
俺は「まあ、座って食えよ」と、ローテーブルに袋を置いて座椅子に座った。
2人でパンを食べ始めた。俺は食パンをちぎって口に放り込んで、コーヒーを淹れ直した。
ピトは菓子パンを小さく千切って、チラチラと上目遣いで俺の顔色を伺ってる。うつむき加減で目は泳いでる。いつもニコニコしてるのに、なんか落ち着かない様子だ。
「どうしたんだろう」と、俺は内心で首を傾げた。プリンで酔った事、まだ気にしてるのか?
それとも、隠してた正体がバレたのか心配なのか? ピトのあの慌てっぷり見てると、気づかれたくないって気持ちが伝わってくる。
ピトが「……あの……先輩? 何か……その……見ませんでしたか……?」
と、消え入りそうな声で聞いてきた。菓子パンを握り潰しそうなくらい手が震えてて、目を伏せてる。
怖がってる感じがビンビンだ。
「何かって何? ……あ」と、俺は一瞬言葉に詰まった。
やっぱり正体がバレたか気にしてるのか、と気づいた。
翼と尻尾とツノ、全部体に隠したけど、寝たら全部飛び出す事分かってるんだろうな。俺がピトより後に寝たなら見てないはずがない。
俺は「いや、何かって言われても、疲れてて俺もすぐ寝ちゃったからなぁ」と、すっとぼけた。
コーヒーを啜って、平静を装う。ピトがチラッと俺を見るけど、まだ不安そうな顔だ。
「でもさ」と、俺はカップを置いて続けた。
「人はさ、誰にだって言えない事の一つや二つある。隠したい事だってあるだろうさ。それが誰かを害そうという事じゃなければ、俺は暴こうだなんて思わないし、言いたくなるまで待つよ。お前は……大事な後輩だからな」
ピトが「え……?」と目を丸くして、菓子パンを口に運ぶ手が止まる。
ピト視点
「え……?」と、私は目を丸くして、菓子パンを口に運ぶ手が止まった。
先輩の言葉が頭に響いて、何の事か一瞬分からなかった。隠したい事? 言いたくなるまで待つ? 何!? 頭の中がぐるぐるする。
先輩、やっぱり私の正体を見たの? 昨夜、酔って寝ちゃって、尻尾とか翼とか出てたの見られたんじゃないの!?
でも、先輩の顔見ると、コーヒー飲んで普通にしてる。私が慌てて隠したの、気づいてないっぽいよね?
でも「隠したい事だってあるだろうさ」って……それ、私の事言ってるのかな?
もし、正体を見たのにそれを見て見ぬふりしてくれてるなら、なんて優しい人なんだろう。
私は先輩をチラッと見て、菓子パンを口に入れた。確かめる事はできない。
だって、正体バレたら、人間界から去らなきゃいけないルールがあるんだから。
私、サキュバスだし、200年以上生きてるし、人間から見たらバケモノだよ...……こんな姿バレたら大変だよ……。
でも、先輩が「暴こうなんて思わない」って言ってくれたなら、私、安心していいのかな?
「先輩……」と、私は小さく呟いて、先輩を見た。
先輩が「何だよ」と肩をすくめて、パンをちぎる。
「まあ、ゆっくり食えよ。冷める前に」と、コーヒーをまた啜る。
私は「うん……ありがとうございます」と、ようやく笑顔に戻った。
でも、胸の中が変だよ。いつもなら、みんなに好かれるのが嬉しいだけで満足だった。先輩が私を好きになってくれないって怒った時も、ただ悔しかっただけなのに、今、なんか違う。
先輩の優しい言葉聞いてたら、胸がじんわり熱くなって、ドキドキしてる。
何!? この気持ち、今まで感じた事ないよ。
小さな熱が胸の中に生まれたみたい。
知らない感情だよ。
先輩の優しさに触れたら、初めての何かが出てきた。戸惑うよ。
嬉しいけど、怖いよ……。
私、どうしちゃったんだろう?
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