異世界転移物語

月夜

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迎えの面々

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「やっぱり金田さんが帰ってくるかもってことで、海原君と栗原君、林さん、陽子さんに行ってもらってたわ」

「なるほど。今日の午後はどうしますか?」

 僕は全体を見回しながら、特に誰に対してというわけでもなく、問いかけた。しかし、自分から行きたいと希望する人はいなかったので、僕のほうで指名することにした。

「まず僕は行こうと思います。それから陽子さん。もし戻ってきた金田さんの具合が悪ければ診てもらいたいので。海原君も力持ちなので。あと誰か一人……」

「じゃあ、あたし行きます!」

 それは意表をつかれた。それまで意見表明をほとんどしたことなかったいのりが手を挙げたからだ。

「いいけど……どんな風の吹き回しだい?」

「悪い? たまには外の空気も吸いたいし」

「遊びに行くんじゃないんだよ」

「分かってるって」

 特に反対意見も出なかったので最後の一人はいのりに決まった。

「それじゃ、そういうことで」

 昼飯が終わると、僕ら四人、僕と海原君と陽子さんといのりは迎えに出発した。安食さんの話だと、僕らが調査に出掛けている間には新しい人は誰も来なくて、また帰ってきた人も誰もいなかったということだ。鈴木楓さんの消息は今も不明ってことになる。

「外の空気を吸いたいって、家を出ればいつでも吸えるじゃん」

 僕は歩きながらいのりをおちょくった。

「たとえよ。た・と・え。私だって森の中を少し歩きたいときはあるわよ。ただ一人だと迷子になったら困るし……」

 所詮は中学生だ。やはり心細いのだろう。それでも最初の頃に比べれば元気になって良かったと思う。あの暗い感じでずっと過ごされたら僕としても困るところだった。

「陽子さんは学生時代、女性で理系って珍しくなかったんですか?」

 前を歩く海原君と陽子さんの会話が聞こえてきた。

「そうね。私は情報学科だったけど、女性は珍しいっちゃ珍しかったわね。ただコンピュータの仕事に男女の適性の違いはないと思うんだけど。高校ではやっぱり理系女子は少なかったな」

「プログラミングとか難しそうですもんね」

「いや、スキル的にはそうでもないのよ。でもどうしても不規則な時間の仕事になったりすることが多いから、女性が働く環境としてはどうかな? ってのはあるわね。君が通う農業高校には女の子いるの?」

「少ないですけどいますよ。畜産科もあるから獣医になりたい子とか結構います」

「農家にはなかなかお嫁に行かないなんて言われてるご時世だから君も苦労するわね。でも海原君、モテそうだから心配要らないか」
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