異世界転移物語

月夜

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料子さんの懸念

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「最近、転移する頻度が急に高くなったような気がする。和也君と理科さんも急だったし。二人ともこの村に来てから何日も経ってないのに……。今の感じだと、私たちもいつどこで再転移してもおかしくないような状態だと感じるわ」

 言われてもみればそうかもしれない。善蔵さん夫婦が消えたり、林さんたちが消えたり、金田さんや和也たちも消えたかと思えば、林さんや栗原さんが帰ってきたりと、めまぐるしく人の転移が繰り返されている。そういう意味ではかなりの不安定さである。料子さんがこの状況に危うさを感じてもけっして不思議ではない。

 そんなことを僕が考えていると、林さんが口を開いた。

「そうだな。俺も転移してから間がないからはっきりとしたことは言えんが、最近来たやつは別にして、この村で一度も再転移してないのは安食さんぐらいだろ。やっぱ異常事態だよな。健太たちが来る前は、俺と金田と安食さんの三人で割と安定してたんだがな。あ、別に健太たちが災いの元凶だと言ってるわけじゃないぞ」

 僕は苦笑しながら「分かってますよ」と返事したものの、客観的に見て、僕と桂坂さんがこの村に来てから色々と動き出したのは事実だ。そこに何らかの関連性があるかどうかは、判断する根拠がまだ乏しいように思うが。

「宝泉さんは向こうの村にすぐに帰りたいですか?」

「いや、そんなことはないが。健太と出会ったのも何かの縁だ。しばらくこのままここに滞在させてもらってもいいかな、と思ってる」

 宝泉さんはそこで一旦区切るように息を止めると、再び口を開いた。

「ただな……俺は仲間とはぐれちまったから、もしかしたらあいつら俺を探し続けてるんじゃないかってちょっと心配してるんだ」

「それはそうですね。でもあれからもう三日も経ってるし、ここにもたどり着けないでしょうから諦めて帰るんじゃないでしょうかね?」

「ああ。俺もそう思う。あいつらも俺一人のことで、いつまでもかかずらってるわけにもいかないだろう」

 宝泉さんの気持ちを確かめたことで、僕の意思も固まった。

「それじゃ、今は調査継続は保留にしておきましょうか。今はこっちの生活基盤をしっかり作ることを優先しましょう。食料に関しても盤石とは言えませんし」

 僕は先日の食料消失事件を念頭に置きながら、そう言った。

「そう言えば、僕らがいない間、新しい人の迎えには誰が行ってたんですか? 前は僕と和也と海原君、それに桂坂さんで行ってたけど」

 僕の問いには、安食さんが答えた。
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