異世界転移物語

月夜

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位置関係

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「健太たちが転移したあとも、ずっと新しい村を探していたんだが、結局、一つを除いて新しい集落は見つからなかった。もうこの世界には集落は存在しないんじゃないか、と思い始めてたぐらいだ」

 宝泉さんはそう言ってため息をついた。僕は午前中に描きあげた地図を広げ、みんなに見せた。

「理科さんがいなくなったので、あまり詳しくは描けませんでしたが、村の位置関係はざっとこんな風になります」

 僕は簡略な地図を指差す。この村のはるか東方に存在すると思われる謎の村、それが僕が元いた村だ。

「宝泉さんは迷ってはいたものの、進路から極端に離れていたとは思えません」

「うん。俺たちは最初は村から西へと進んできたから、多少のコース変更はあったとしても基本、この村の東にあるのは間違いないと思うな」

「ちょっといい?」と桂坂さんが手を挙げた。

「健太君たちが可能性があるとして調査に出かけた東の目的地と、私たちが以前いた村は同じ村なのかな?」

 僕はちょっと考えた。

「方向は正しいとして、距離の問題か……。宝泉さんのルートと僕のたどったルートがもし直線上にあるとしたら、トータル片道一週間の行程ということになりますね。ということはギリギリ想定内といえますが、それが一致しているかどうかはなんとも判断しづらいところです」

「でも宝泉さんたちも特に何も発見してないわけでしょ」

「まあ、そうだな」と宝泉さん。

 腕組みしていた陽子さんが口を開く。

「ということは、そのルート上には何もなかったということになる。それならやはりその村が最初に描いた目的地と考えるのが一番理に適っていると思うわ」

 僕は陽子さんの意見を受け、一つ宝泉さんに質問することにした。

「宝泉さんたちはなんで西を目指して歩いていたんですか? その前に何か手掛かりみたいなものを発見したんですか?」

「いや、特にきっかけがあったわけじゃない。ほら、スカウトさんたちが行った村って、俺たちの村から見て東北東にあっただろ? 覚えてるか? だから反対方向中心に調査を続けてたのさ。北北西に進路をとれじゃないけどさ」

 宝泉さんは懐かしい映画の名前を出した。それはそれとして、向こうからはこちらの村をまったく認識してなかったということになる。前の凧による調査でも、確か何も写ってなかったように記憶しているから、それはあり得る。

 原因として考えられるのは集落の規模の違いというのが一つある。こっちは五軒が連なる小規模集落だが、向こうは倍の十軒が点在している。総面積もあちらのほうがかなり大きい。
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