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決断と迷い
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午後になり小屋を出発して、再び予定の進路で進んだ。小屋に何かメモでも残しておこうかとも思ったのだが、おそらく誰も来ないだろうということで、それは止めることにした。結局のところ、二日目もこの彫られた文字と小屋の発見以外には特段変わった事はなかった。ともあれ、さしたる障害もなく、順調に移動しているのは喜んでいいだろう。
三日目の朝もいつもと変わらぬ朝だったが、天気はややどんよりした曇り空だった。
「今日は雨が降るかもしれないわね」
理科さんが天を見上げながら恨めしそうに言う。僕たちは一応雨具の用意もあるが簡易的なものだ。出来れば大降りにはなって欲しくない。
「健太、予定だと今日の午前中まで歩いても何も見つからなければ、折り返すんだよな?」
和也の問いに僕はうなずく。
「でも何か新しい展開があれば、計画を変更して一日延長するってこともあり得るよね」と理科さんが付け足す。
「うん。食料はギリギリ保つと思うし、ある程度の滞在時間も確保しないといけないでしょうからね。その時は臨機応変に」
「いよいよだと思うと、なんだか楽しみになってきたな」
和也がウキウキした表情になった。僕もいつもより少々気持ちが昂ぶってるかもしれない。鬼が出るか蛇が出るかではないが、進んでみれば何らかの結果は得られる。何も収穫なしで帰ることになっても、それはそれで次へのステップになるだろうし、無駄なことは一つもない。
それにもう一つ、こうやって一緒に旅をすることで、和也や理科さんと、より交流を深められたことは実は大きなことではないかと思っている。これからも一緒にやってゆく仲間との絆は何より大切だと最近よく思うようになってきた。先日の食料消失事件があったせいかもしれない。
こうして三日目も順調に歩を進めた。いつ雨が降り始めてもおかしくない空具合であったけれど、幸いにも雨が降り始めることはなかった。
「なんにもないな~」
午前中も終わろうかという頃、歩きながら和也が落胆の声を上げる。
「ああ。この分だとどうやら空振りに終わりそうだな」
和也を慰めつつ、僕は冷静に状況を見定める。
「もう少し行けば何かありそうって気はしてるんだけどね。でもどこかで決断しないといけないわね」
理科さんが言っている決断とはもちろん『帰る』という決断だ。
「そうですね。そろそろ」
僕自身も最初はいつでも帰れるさと気楽に考えていたのだが、こうして決断の期限が迫ってくると、そのタイミングは非常に難しいことが分かってきた。どうしても迷いが生じてくるのだ。
三日目の朝もいつもと変わらぬ朝だったが、天気はややどんよりした曇り空だった。
「今日は雨が降るかもしれないわね」
理科さんが天を見上げながら恨めしそうに言う。僕たちは一応雨具の用意もあるが簡易的なものだ。出来れば大降りにはなって欲しくない。
「健太、予定だと今日の午前中まで歩いても何も見つからなければ、折り返すんだよな?」
和也の問いに僕はうなずく。
「でも何か新しい展開があれば、計画を変更して一日延長するってこともあり得るよね」と理科さんが付け足す。
「うん。食料はギリギリ保つと思うし、ある程度の滞在時間も確保しないといけないでしょうからね。その時は臨機応変に」
「いよいよだと思うと、なんだか楽しみになってきたな」
和也がウキウキした表情になった。僕もいつもより少々気持ちが昂ぶってるかもしれない。鬼が出るか蛇が出るかではないが、進んでみれば何らかの結果は得られる。何も収穫なしで帰ることになっても、それはそれで次へのステップになるだろうし、無駄なことは一つもない。
それにもう一つ、こうやって一緒に旅をすることで、和也や理科さんと、より交流を深められたことは実は大きなことではないかと思っている。これからも一緒にやってゆく仲間との絆は何より大切だと最近よく思うようになってきた。先日の食料消失事件があったせいかもしれない。
こうして三日目も順調に歩を進めた。いつ雨が降り始めてもおかしくない空具合であったけれど、幸いにも雨が降り始めることはなかった。
「なんにもないな~」
午前中も終わろうかという頃、歩きながら和也が落胆の声を上げる。
「ああ。この分だとどうやら空振りに終わりそうだな」
和也を慰めつつ、僕は冷静に状況を見定める。
「もう少し行けば何かありそうって気はしてるんだけどね。でもどこかで決断しないといけないわね」
理科さんが言っている決断とはもちろん『帰る』という決断だ。
「そうですね。そろそろ」
僕自身も最初はいつでも帰れるさと気楽に考えていたのだが、こうして決断の期限が迫ってくると、そのタイミングは非常に難しいことが分かってきた。どうしても迷いが生じてくるのだ。
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