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謎の道標
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しばらく歩いたあと、木陰で休憩していると、理科さんが「ちょっとこれ見て」と僕らにささやいた。
「何か見つけたんですか?」
僕と和也に対して、理科さんは一本の樹木の幹を指し示した。
「ほら、ここに文字みたいなものが彫ってあるわ」
見ると、樹木の皮が一部分剥がされており、地肌が見えるようになった樹に、鋭利なものでキズが彫られてあった。崩れてはいるが間違いなくひらがなと数字とカタカナだ。
「ひがし3キロにいえあり」
和也がゆっくり読み上げた。
「すごい!ここに来た誰かが家の在り処を残したんだ」
和也は興奮を隠さなかった。
「そうみたいね。その家に住んでいた誰かが、通りがかりの人に伝えようと考えたのかもしれないわね」
「でも何も筆記用具はなかったんでしょうかね? わざわざ彫るなんて時間のかかることをしなくても、と思うんですが」
「マジック類を持ってなかったか、紙とかだと長く残らないと考えたか、何か理由があるんでしょうね」
「いたずらって可能性は?」
「何のために?」
「うーん。わざわざいたずらする理由もないですね。やっぱり信用していいのかなあ」
僕と理科さんが彫られた文字の真偽を論じている間に、和也はスマホでさっと撮影すると、
「とりあえず東へ3キロ歩いて行きませんか?」と言った。
元々東へと向かう行程だったので異論はなかったが、疑問点はあった。歩きながら確認する。
「3キロってちょっと近過ぎないですか?」
「そうね。あたしたちが目指していた場所とは違うような気がするわね。少なくともあと半日ぐらいはかかると踏んでいたんだけど」
「まだ二日目の午前中ですからね。流石に近過ぎると思います」
理科さんも僕と同じところを不審に思ったようで、二人でしばらく検討してみたが、やはり最初の目標とは違うのではないか、ということで一致した。
小一時間ほどで目的の場所に着いた。確かにそこに建物があった。だが……。
「こりゃ、家というより小屋だな」
和也が呆れたように言う。
「狭い上に、内側も地面の上に木の板がのせてあるだけで、床と呼ぶのもおこがましいぐらいだ」
小屋を外側から見たときに既に無人の雰囲気を感じとったが、やはり中には誰もいなかった。生活したという確固たる痕跡も見当たらない。
「あれを彫った人はここに住んでいたわけじゃないのかな?」
「そうね。推測を改める必要があるかもね。おれを彫った人は、私たちと同じように調査に来てこの小屋を発見しただけかもしれない」
「何か見つけたんですか?」
僕と和也に対して、理科さんは一本の樹木の幹を指し示した。
「ほら、ここに文字みたいなものが彫ってあるわ」
見ると、樹木の皮が一部分剥がされており、地肌が見えるようになった樹に、鋭利なものでキズが彫られてあった。崩れてはいるが間違いなくひらがなと数字とカタカナだ。
「ひがし3キロにいえあり」
和也がゆっくり読み上げた。
「すごい!ここに来た誰かが家の在り処を残したんだ」
和也は興奮を隠さなかった。
「そうみたいね。その家に住んでいた誰かが、通りがかりの人に伝えようと考えたのかもしれないわね」
「でも何も筆記用具はなかったんでしょうかね? わざわざ彫るなんて時間のかかることをしなくても、と思うんですが」
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「いたずらって可能性は?」
「何のために?」
「うーん。わざわざいたずらする理由もないですね。やっぱり信用していいのかなあ」
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「3キロってちょっと近過ぎないですか?」
「そうね。あたしたちが目指していた場所とは違うような気がするわね。少なくともあと半日ぐらいはかかると踏んでいたんだけど」
「まだ二日目の午前中ですからね。流石に近過ぎると思います」
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小一時間ほどで目的の場所に着いた。確かにそこに建物があった。だが……。
「こりゃ、家というより小屋だな」
和也が呆れたように言う。
「狭い上に、内側も地面の上に木の板がのせてあるだけで、床と呼ぶのもおこがましいぐらいだ」
小屋を外側から見たときに既に無人の雰囲気を感じとったが、やはり中には誰もいなかった。生活したという確固たる痕跡も見当たらない。
「あれを彫った人はここに住んでいたわけじゃないのかな?」
「そうね。推測を改める必要があるかもね。おれを彫った人は、私たちと同じように調査に来てこの小屋を発見しただけかもしれない」
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